災害への備えというと「つながる手段を確保すること」に目が向きますが、つながったあとに届く情報が正しいとは限りません。大きな災害のあとは、SNSの偽情報や、被災地支援をうたう詐欺が実際に確認されています。

結論から書くと、身を守るポイントは次の3つです。

  • SNSの情報は「発信元」と「発信時期」を確かめ、確認できないものは拡散しない
  • DM・SMS・メールのリンクは押さない。確認は公式アプリかブックマークした公式サイトから
  • 「○○Payで返金」「公的機関が電話で寄付を依頼」は詐欺を疑う。迷ったら188か#9110に相談する

以下、公的機関が公表している事例とあわせて解説します。

能登半島地震では、偽の救助要請が救助活動の妨げになった#

総務省の「令和6年版 情報通信白書」は、能登半島地震について、SNSが情報収集や安否確認に役立った一方で、迅速な救命・救助活動や円滑な復旧・復興活動を妨げるような偽・誤情報が流通したと記載しています。

白書によると、NICT(情報通信研究機構)の災害状況要約システム「D-SUMM」による分析では、発災後24時間に投稿された救助を求める報告1,091件のうち、254件で矛盾報告が検出され、デマと推定できたのは104件でした。2016年の熊本地震では、救助を求める報告573件のうち偽情報とみられたものは1件だったとされています(分析対象はXの日本語投稿の10%)。

白書は、閲覧数稼ぎを目的としたと考えられる救助要請の複製投稿や、金銭搾取を目的としたと考えられる虚偽の救助要請や振込依頼の投稿も見られたとしています。

善意で「拡散希望」の投稿を広めたつもりが、結果として救助の手を本当に必要な場所から遠ざけてしまうことがある、ということです。

SNSの情報を見るときに確かめる4つのこと#

総務省の「安心・安全なインターネット利用ガイド」は、偽情報・誤情報に惑わされないためのポイントとして次を挙げています。

確認すること内容
他の情報と比べる複数の情報を読み比べる。ネット以外(本や新聞など)で調べるのもよい
発信元を確かめる発信元が明らかでも、信頼できる人・サイトかを確認する
発信時期を確かめる元の情報が古い場合、現在とは状況が異なる可能性がある
一次情報を確かめる引用や伝聞なら、元になったオリジナルの情報源を探す

災害時に特に意識したいのは「発信時期」です。過去の災害の写真や、すでに解決した救助要請が、時間がたってから再び拡散されることがあります。

また、判断がつかない情報は自分のところで止めるのが基本です。「念のため拡散」は、情報が正しいかどうかにかかわらず、確認作業の負担を増やします。

災害時は「公式の経路」を先に決めておく#

SNSを見る前に、正確な情報を受け取る経路を持っておくと、デマに振り回されにくくなります。

白書でも、能登半島地震では放送事業者が「人工地震」説は根拠のない偽情報だと伝えたり、うその救助要請に注意を呼びかけたりしたことが紹介されています。

被災地支援をうたう詐欺:国民生活センターが公表した手口#

国民生活センターは2026年8月17日、令和8年熊本地震に関連して、被災地支援をうたう不審なSNSのDMに注意するよう速報を出しました。

公表された相談事例の流れは次のとおりです。

  1. SNSで、飲食店のアカウントから「指定のWebサイトで商品を購入すると被災地に寄付ができ、さらに購入額より多い金額がコード決済で返金される」というDMが届く
  2. リンク先からLINEに誘導され、グループに参加する
  3. コード決済で支払うと返金が実行され、これが何度か繰り返される
  4. やがて返金がなくなる

最初の数回は本当に返金されるため、信用してしまいやすい手口です。国民生活センターは次のようにアドバイスしています。

  • 「○○Payで返金します」と言われたら詐欺を疑う
  • 支払う前に、事業者の公式ホームページを確認する
  • 不審なDMやメール、やり取りには対応しない
  • 自治体や公的機関が、各家庭に直接電話をかけて寄付や義援金を求めたり、個人情報を聞いたりすることはない。そうした連絡には応じず、いったん電話を切って当該機関に直接確認する
  • 寄付や義援金は、募っている団体等の活動状況や使途を自分で確認し、納得したうえで行う
  • 被害にあった場合は、すぐにコード決済サービス事業者に申し出て、警察に相談する

被災地以外でも起きる#

国民生活センターの「ご用心 災害に便乗した悪質商法」では、義援金詐欺(市役所職員や募金活動を装った電話・訪問)のほか、「屋根の点検をする」と訪問して高額な工事契約を迫る点検商法や、「火災保険を使って自己負担なく住宅修理ができる」と勧誘する手口も紹介されています。契約はその場で決めず、周囲や公的窓口に相談することが大切だとしています。

災害に便乗した詐欺は、被災地域だけでなく、支援したい気持ちを持つ被災地以外の人も狙われます。

不審なSMS:通信会社や宅配業者をかたるもの#

災害時に限った話ではありませんが、スマホで最も身近な詐欺の入り口がSMSです。

警察庁は、携帯電話会社、宅配業者、銀行をかたって本物そっくりの偽サイトに誘導する事例を多数確認しているとしています。総務省の特殊詐欺対策サイトでも、宅配業者の「お荷物のお知らせ」「再配達のご依頼」などを装うSMSが例に挙げられています。

災害のあとは、通信会社からの支援措置のお知らせや、荷物の遅延など、「本物でもおかしくない連絡」が増える時期です。そのぶん、偽物との見分けがつきにくくなると考えておいたほうが安全です。

平常時にできる備え#

警察庁・総務省の案内をもとに、今のうちにできることをまとめます。

備え内容
公式サイトをブックマーク契約している通信会社、銀行、よく使う通販などの公式サイトを「お気に入り」に登録しておく
公式アプリを入れておくお知らせの確認はSMSのリンクではなく公式アプリから行う
迷惑SMSのブロック機能を確認総務省は各事業者が提供している迷惑メール・SMSブロック等サービスの活用を案内している。提供の有無や内容は契約先によって異なるため、自分の契約先で使えるか確認しておく
ワンタイムパスワードなどを設定警察庁はワンタイムパスワード機能の活用を、総務省はパスキー認証の活用を挙げている

通信会社の支援措置は、たとえば災害救助法が適用されると、通信各社は何をしてくれる?で紹介したように、各社の公式サイトで発表されます。SMSで届いた「支援のお知らせ」のリンクを押すのではなく、ブックマークした公式サイトで同じ発表があるかを確かめる、という順番にしておくと安心です。

なお、格安SIMの中にはデータ専用SIMでSMSが使えないプランもあります。サブ回線を選ぶときのSMSの考え方は災害時に「SMS認証コードが届かない」とログインできないにまとめました。

もしリンクを開いて入力してしまったら#

警察庁は、フィッシングサイトにIDやパスワードを入力してしまった場合、そのIDやパスワードを使っているすべてのサービスでパスワード等を速やかに変更し、被害にあったときはサービスを提供している会社に相談するよう案内しています。あわせて、最寄りの警察署やサイバー事案に関する通報等のオンライン受付窓口に通報・相談します。

迷ったときの相談先#

窓口内容
消費者ホットライン 188最寄りの消費生活センター等につながる。悪質商法や寄付をうたう勧誘の相談
警察相談専用電話 #9110詐欺かどうか判断がつかないとき、不審な電話・訪問の相談

国民生活センターは、不審な電話はすぐに切る、希望していない来訪の申し出はきっぱり断ることがトラブルの未然防止につながるとしています。その場で判断しようとせず、いったん切ってから上の窓口に相談しましょう。

家族にも共有しておきたいこと#

偽の救助要請や寄付の勧誘は、スマホに慣れていない家族が受け取ることもあります。家族の安否確認ルールを決めるときに、あわせて次の3点を伝えておくと役立ちます。

  • 「拡散希望」でも、確かめられない情報は広めない
  • お金の話が出たら、払う前に家族に一言相談する
  • SMSやDMのリンクは押さず、公式アプリで確かめる

安否の連絡そのものは、携帯4社の災害用伝言板のような公式の仕組みを使うと決めておくと、SNS上の真偽不明な情報に頼る場面を減らせます。

まとめ#

  • 能登半島地震では、偽の救助要請が救命・救助活動の妨げになったと総務省の白書が指摘している
  • SNSの情報は他の情報と比べる・発信元・発信時期・一次情報の4点を確かめ、判断できなければ拡散しない
  • 被災地支援をうたうDMで「○○Payで返金」と言われたら詐欺を疑う。自治体や公的機関が各家庭に電話で寄付を求めることはない
  • SMSのリンクは押さず、ブックマークした公式サイトや公式アプリで確かめる
  • 迷ったら188(消費者ホットライン)か#9110(警察相談専用電話)

通信手段を複数持つことと同じくらい、届いた情報を確かめる手順を平常時に決めておくことが、災害時の備えになります。