大きな災害が起きたとき、被災地域の携帯電話利用者に対して各社がデータ通信の追加提供や料金支払期限の延長などを実施することがあります。これは「災害救助法が適用された地域」を基準に行われるものです。

知らないと、受け取れるはずのデータをもらいそこねることがあります。とくにpovoのようなサブ回線を持っている人は、支援がプロモコードとして配られるケースがあるため、気づかないまま期限切れになりかねません。

先に結論です。

  • 支援の対象は「被災したかどうか」ではなく、契約住所または請求先住所が適用地域にあるかで判定される
  • 大手キャリアは「データ支援+支払期限延長+端末修理の減免」まで幅広い。格安SIM(MVNO)はデータ付与が中心で、規模も小さい
  • サブブランドやオンライン専用ブランドが対象に入るかは会社によって扱いが違う。契約先の公式お知らせを直接見るしかない

そもそも災害救助法とは

災害救助法は、一定規模以上の災害が起きたときに国と都道府県が救助を行うための法律です。適用されると、どの市町村が対象になったかが内閣府(政策統括官〈防災担当〉)からPDFで公表されます。

適用状況は内閣府の災害救助法の適用状況のページに年度別でまとめられており、災害ごとに「第1報」「第2報」と更新されていきます。2026年8月14日時点では、令和8年度分として次のような災害が掲載されています。

  • 令和8年8月13日からの大雨
  • 令和8年熊本地震
  • 令和8年7月 滋賀県甲賀市の土砂崩れ
  • 令和8年6月24日からの大雨
  • 令和8年 岩手県大槌町の林野火災

通信各社の支援措置は、この「適用市町村リスト」をそのまま使います。 そのため、自分が対象かどうかを知りたいときは、まず内閣府のPDFで市町村名を確認するのが確実です。

なお、適用対象は追加されることがあります。発災直後は対象外だった市町村が、あとから追加されるケースは珍しくありません。一度確認して対象外だった場合も、数日後にもう一度見る価値があります。

「被災したか」ではなく「契約住所」で決まる

ここが最も誤解されやすい点です。

支援措置の対象になるのは、多くの場合契約者住所または請求書送付先住所が適用地域にある人です。KDDIは令和8年熊本地震の支援について、対象を「対象地域に契約者住所または請求書送付先住所が所在するお客さま」(2026年7月28日時点)と明記しています。

これは実務上、次の2つを意味します。

① 引っ越して住所変更していないと、被災していても対象外になりうる

現住所が被災地でも、契約上の住所が前の住所のままなら、システム上は対象と判定されません。IIJmioも支援の案内のなかで、登録住所が現況と異なる場合は住所変更手続きが必要である旨を案内しています。

② 実際には被害がなくても、住所が適用地域なら対象になることがある

同じ市内でも被害の程度には差がありますが、判定は市町村単位です。「うちは無事だったから関係ない」と思い込んで公式のお知らせを見ないと、配られたデータに気づかないことがあります。

契約住所が最新かどうかは、平常時のうちに一度確認しておくといい項目です。

大手キャリアは何をするのか(令和8年熊本地震の例)

2026年7月28日の令和8年熊本地震では、熊本県の21市町村に災害救助法が適用され、各社が支援措置を発表しました。実例として中身を見ていきます。

NTTドコモ

ドコモは2026年7月28日に支援措置を発表し、実施期間を2026年7月28日〜8月28日としています。内容は端末まわりが手厚いのが特徴です。

区分内容
料金請求書払いの支払期限を2026年8月31日まで延長
端末電池パック・ACアダプタ等の付属品を無償提供、購入時の特別割引
手数料契約事務・機種変更・UIM再発行の各手数料を無料化
修理修理代金の減額・無料化、代替機の賠償金を請求しない
手続き本人確認書類が不足している場合の手続き緩和
その他dカード再発行手数料無料、失効したdポイントの返還

固定回線(ドコモ光)についても基本料金の無料化(申出が必要)、移転工事料金・手数料の無料化、解約金の免除が案内されています。

KDDI(au・UQ mobile・povo)

KDDIは2026年7月29日に、データ通信の支援を発表しました。対象ブランドが明示されている点が実務的に重要です。

ブランド内容
auデータ容量超過後も通常速度で使えるよう、通信速度制限を順次解除
UQ mobile100GBを提供
povo2.0「7日間データ使い放題」プロモコード5回分を配布
povo1.0100GBを提供

実施期間は2026年7月30日〜8月31日です。

注目したいのはpovo2.0が対象に入っていることです。povo2.0を災害用のサブ回線として維持している人は少なくありませんが、支援が「プロモコード」の形で届くため、受け取ったことに気づかないと使わないまま終わります。povo2.0の維持のしかたと、こうしたコードを見落とさない運用についてはpovo2.0を災害用のサブ回線にするにまとめています。

ソフトバンク

ソフトバンクも災害救助法適用地域の利用者を対象に支援措置を実施しており、公式ページには次の項目が挙げられています。

  • データ追加購入料金の無償化
  • 料金支払期限の延長
  • 故障・修理費用の減免
  • データ復旧サービスの無償化
  • 代替機の破損時などの賠償金および延滞金の無償化
  • 配送交換サービスの故障機返却期限の延長
  • 失効したソフトバンクポイントの返還
  • 一部手数料の無償化
  • 受け付け手続きの緩和

なお、ワイモバイルやLINEMOについては専用の問い合わせ窓口が案内されていますが、支援措置がどこまで同じ内容で適用されるかはページ上で明示されていません。該当する場合は問い合わせ窓口で確認するのが確実です。

楽天モバイル

楽天モバイルも支援措置を実施していますが、本記事執筆時点で公式のお知らせページを直接確認できていないため、具体的な内容の記載は控えます。楽天モバイル公式サイトのお知らせで最新の内容をご確認ください。

格安SIM(MVNO)だと支援の中身が変わる

ここからが、格安SIMを使っている人にとっての本題です。

MVNOも支援措置を実施しますが、内容は大手キャリアと同じではありません。 中心になるのはデータ量の付与で、端末の修理減免や店頭対応といった項目は基本的に含まれません。自社の店舗網や修理体制を持っていないためです。

IIJmioの例

IIJmioは2026年7月29日付で、令和8年熊本地震にかかる支援を案内しています。

項目内容
対象災害救助法が適用された地域に住み、対象サービスを契約している人
対象サービスIIJmioモバイルサービス ギガプラン、IIJmioモバイルプラスサービス、IIJmio eSIMサービス データプランゼロ など
付与量各契約につき7月分として2GB
付与時期2026年7月29日より順次
利用期限付与月の翌月末日まで(2026年8月末日)
手続き不要(自動付与)

手続き不要で自動付与という点は親切ですが、量はau(速度制限解除)やUQ mobile(100GB)とは桁が違います。MVNOは回線元から帯域を借りて事業を行っているため、大手と同じ規模の提供は構造的に難しい、という事情があります。

「回線元の支援」は自分には届かない

ここは間違えやすいところです。ドコモ回線の格安SIMを使っていても、ドコモが発表した支援措置の対象はドコモとの契約者であって、MVNOの契約者ではありません。支援を出すかどうか、何を出すかは、契約先のMVNOが独自に判断します

自分の契約先がどの回線を借りているかと、契約先そのものを混同しないよう注意してください。回線元の調べ方は格安SIMの「回線元」一覧にまとめています。

まとめると、こう違う

大手キャリア(au・ドコモ・ソフトバンク等)格安SIM(MVNO)
データ支援大容量・速度制限解除など数GB程度の付与が中心
支払期限の延長実施される例が多い会社による
端末修理・代替機減免・無償化の対象になる基本的に対象外
店頭サポート車両型ショップ、充電・Wi-Fi拠点など店舗網がなく限定的
情報の探しやすさ専用の災害情報サイトがある「お知らせ」一覧に埋もれやすい

これは格安SIMをやめる理由にはなりませんが、「被災したときのサポートは薄い」という前提で備えを組む必要はあります。具体的には、端末が壊れたときに自力で復旧できる状態にしておくこと(eSIMと物理SIM、どちらで持つか)と、サブ回線をもう1本持っておくことの2つが効きます。

自分が対象か確認する手順

被災後に慌てて調べるのは大変なので、順番だけ決めておきます。

① 内閣府のページで市町村を確認する

災害救助法の適用状況から該当災害のPDFを開き、自分の契約住所の市町村が入っているか見ます。第1報になくても、後続の報で追加されることがあります。

② 契約先の公式お知らせを見る

大手キャリアは災害専用の情報サイトを持っています(KDDIの災害支援サイトなど)。MVNOの場合は「お知らせ」「障害・メンテナンス情報」に掲載されることが多く、通常のお知らせに紛れがちです。会社名+災害名で検索するより、公式サイトのお知らせ一覧を直接開くほうが確実です。

③ 支援の受け取り方を確認する

ここが抜けやすい部分です。支援の届き方には主に3パターンあります。

届き方注意点
自動適用IIJmioのデータ付与、auの速度制限解除気づかなくても適用される
コード配布povo2.0のプロモコード自分で入力しないと使えない。期限あり
申出が必要料金の減免、固定回線の基本料無料化など申告しないと適用されない

「自動でやってくれるだろう」と思っていると、コード配布型と申出型を取りこぼします。

④ 期限を確認する

支援には必ず期間があります。熊本地震の例ではドコモが2026年7月28日〜8月28日、KDDIが7月30日〜8月31日、IIJmioの付与データが8月末日まででした。おおむね1か月程度と考えておくと目安になります。

平常時にやっておくこと

被災してから調べる前提だと、そもそも調べるための通信がない、という状況になりえます。次の4つは今日できます。

  • 契約住所が現住所と一致しているか確認する(引っ越し後に放置していないか)
  • 契約先のお知らせ/災害情報ページをブックマークする(MVNOなら回線元ではなく契約先)
  • 内閣府の災害救助法の適用状況をブックマークしておく
  • 支援情報を見るための通信手段を1つ確保しておく(サブ回線、家族の端末、自宅Wi-Fi)

4つ目が一番忘れられます。支援のお知らせはWebに出るので、回線が死んでいると読めません。サブ回線の考え方はpovo2.0を災害用のサブ回線にするに、回線が全部だめなときの手段は災害時の連絡手段まとめにまとめています。

支援措置とセットで使えるもの

災害救助法の適用とは別枠ですが、大きな災害時には次のものも動きます。

  • 公衆無線LAN「00000JAPAN」の開放 — 契約先を問わず誰でも使えるようになります。ただしパスワードなしで暗号化されないため、使い方に注意が必要です。詳しくは00000JAPANの安全な使い方を参照してください
  • 災害用伝言板・災害用伝言ダイヤル(171) — 提供開始の告知が各社から出ます。格安SIMだと自分の安否を登録できない場合がある点に注意してください(携帯4社の災害用伝言板の使い方災害用伝言ダイヤル171の使い方
  • 避難所での充電・Wi-Fi拠点の設置 — 各社が車両型ショップや充電設備を出すことがあります。ただし到着までには時間がかかるため、モバイルバッテリー停電時の充電手段は自前で用意しておくのが前提です

また、データ支援が届くまでのあいだは手持ちの容量でしのぐことになります。使い切ったあとの速度と、容量を長持ちさせる設定は災害時にデータ容量が尽きたら?にまとめました。

まとめ

  • 災害救助法が適用されると、通信各社はデータ支援・支払期限延長・端末修理の減免などを実施する
  • 対象は契約住所または請求先住所で判定される。引っ越し後に住所変更していないと対象外になりうる
  • 大手キャリアとMVNOでは支援の中身と規模が違う。MVNOはデータ付与が中心で、端末修理などは基本的に対象外
  • 回線元(ドコモ・au等)の支援は、その回線を借りているMVNOの契約者には適用されない
  • 支援には自動適用・コード配布・申出が必要の3パターンがあり、後ろ2つは自分で動かないと受け取れない
  • 期間はおおむね1か月程度。内閣府の適用状況ページ契約先のお知らせの2つを見れば確認できる

つながらない状態そのものへの対処は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。支援措置は「つながる手段を確保したあと」に効いてくる話なので、まずは回線を1本余分に持っておくところから考えるのが現実的です。


この記事の情報について:本記事は、内閣府(防災担当)「災害救助法の適用状況」、NTTドコモ「令和8年熊本地震に伴う支援措置」(2026年7月28日発表)、KDDI「令和8年熊本地震に伴う支援について」および「令和8年熊本地震に伴うデータ通信に関する支援について」(2026年7月29日発表)、ソフトバンク「令和8年熊本地震の影響に伴う支援について」、IIJmio「IIJmioモバイルサービスにおける”令和8年熊本地震”にかかる災害救助法の適用について」(2026年7月29日掲載)の各公式情報をもとに、2026年8月14日時点で確認した内容です。記事内の具体的な支援内容・期間・数値は令和8年熊本地震における実例であり、他の災害で同じ内容が実施されることを保証するものではありません。支援措置の内容・対象地域・期間は災害ごと、会社ごとに異なり、期間中も変更・延長されることがあります。実際に支援を受ける際は、必ず契約先の最新の公式発表をご確認ください。