IIJmioは、ドコモ網とau網の両方を扱っている格安SIM(MVNO)です。料金の安さで選ばれることが多い一方、「災害のときにキャリアと比べて何が違うのか」は、公式サイトのあちこちに分かれていて見えにくくなっています。
先に結論です。
- JAPANローミング:2026年4月1日から対応。ただし対象は音声SIM/音声eSIM、SMS機能付きSIMで、データSIMは対象外。ローミング中もデータ通信はできない
- 緊急速報・Jアラート:受信できるかは端末しだい。IIJmioが受信を確認しているのは、タイプDのドコモ販売端末とタイプAのKDDI販売端末
- 災害救助法の支援:過去の例では2GBのデータ付与(手続き不要・登録住所で判定)。大手キャリアのような支払期限の延長は案内に書かれていない
- 災害用伝言板:IIJは、大手3社の伝言板をMVNO利用者が使えるかは保証されていないとし、web171などを案内している
- IIJmioならでは:同じmioIDの中でタイプD(ドコモ網)とタイプA(au網)を別々に契約でき、データ容量もシェアできる
それぞれ、IIJmio公式の情報をもとに順に見ていきます。
この記事は特定のプランをすすめるものではありません。契約前に必ずIIJmioの公式サイトで最新の条件をご確認ください。
先に一覧で#
| 災害時の機能 | IIJmioでの扱い |
|---|---|
| JAPANローミング | 音声SIM・SMS機能付きSIMが対象(申し込み不要)。データSIMは対象外 |
| ローミング中のデータ通信 | できない(IIJmioの案内では今後提供予定) |
| 110番・119番 | 音声通話SIMはかけられる。データ通信専用SIMは不可 |
| 緊急速報メール・Jアラート | 端末しだい |
| 災害救助法適用時の支援 | データ量の付与(過去例は2GB・自動) |
| 大手3社の災害用伝言板への登録 | 利用できるかは保証されていない(web171を案内) |
| スマホと衛星の直接通信 | IIJmio公式の案内は確認できず(後述) |
① JAPANローミング:音声とSMSは使えるが、データは使えない#
JAPANローミングは、契約している携帯会社のネットワークが災害などで使えなくなったとき、他社の4G設備に切り替えて通信できるようにする仕組みです。制度全体と、令和8年熊本地震で実際に提供されたときの内容はJAPANローミングは実際に発動したにまとめました。
IIJmioは「JAPANローミング™(非常時事業者間ローミング)の提供開始について」というお知らせ(2026年3月30日掲載、4月30日・7月31日更新)で、2026年4月1日から提供を開始したと案内しています。
対象になるSIM#
IIJmioの案内では、対象は「IIJmioすべてのプランの音声SIM/音声eSIM、SMS機能付きSIM」です。申し込みは不要です。
裏を返すと、データSIM(データeSIMを含む)は対象外です。災害用のサブ回線を「安いからデータeSIMで」と考えている人は、ここが大きな分かれ目になります。
方式ごとにできること#
| 項目 | 緊急通報のみ方式 | フルローミング方式 |
|---|---|---|
| 緊急通報(110・119・118) | ○ | ○ |
| 一般の音声通話 | × | ○ |
| SMS | × | ○ |
| データ通信 | × | × |
フルローミング方式でもデータ通信はできません。IIJmioはデータ通信について今後提供予定としていますが、2026年9月30日時点の案内では対象外です。LINEやメール、地図アプリはローミング中には使えない前提で考えておく必要があります。
ローミング先#
ローミング先は、契約しているタイプの回線元以外の会社です。
- タイプD(ドコモ網)を使っている場合:KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル
- タイプA(au網)を使っている場合:NTTドコモ・ソフトバンク・楽天モバイル
料金は「通常のご利用料金と同様に取扱います」とされています。
7月31日の更新で追記された手順#
2026年7月31日の更新で、フルローミング方式で通信できないときの対処が追記されました。「JPN-ROAM」などの表示が出ているのに通信できない場合は、ネットワークの選択を「手動選択」にして、一覧から「JPN-ROAM D」「JPN-ROAM K」「JPN-ROAM S」「JPN-ROAM R」のいずれかを選ぶと改善することがある、という内容です。
手動で選んだ設定は、ふだんの電波が戻ったあとに「自動選択」へ戻すのを忘れないようにしてください。使い終わったあとに戻す設定はJAPANローミングの記事でも整理しています。
端末側の条件#
IIJmioのQ&Aでは、利用にはJAPANローミングに対応した機種が必要で、対応はOSやソフトウェアのバージョンによって異なるため、各メーカーに確認するよう案内しています。最新のOSが必要な場合もあるとされているので、OSの更新を後回しにしないことが平常時にできる準備です。
② 110番・119番は「音声通話SIM」ならかけられる#
IIJmioの災害時の案内では、緊急通報(110番・118番・119番など)は音声通話機能付きSIM(みおふぉん)で利用でき、データ通信専用SIMでは利用できないとされています。
これはJAPANローミングの対象と同じ線引きです。データ専用SIMは、自社回線でも、他社の電波を借りても、110番・119番をかけられません。データ専用SIMと通話アプリの組み合わせで起きる落とし穴は格安SIMで110番・119番はかけられる?で詳しく整理しています。
③ 緊急速報・Jアラートは「端末しだい」#
緊急速報メール#
IIJmioのQ&A「緊急速報の設定(確認)方法について教えてください」では、受信には端末の電源が入っていて、圏外や機内モードでないことが前提とされています。確認場所は次のとおりです。
- iPhone:「設定」→「通知」→「緊急速報」
- Android:設定方法は端末の提供元によって異なるため、メーカーに確認
受信できない端末の場合の代わりの手段として、IIJmioは民間事業者が提供するスマートフォンアプリと、市町村の登録制メール(すべての自治体が実施しているわけではない)を挙げています。
Jアラート#
Jアラートの配信による緊急速報については、IIJmioのQ&Aで「ご利用の端末によっては受信できない場合があります」とされ、受信できるとしているのは次の組み合わせです。
- NTTドコモで販売された端末をタイプDで使う場合
- KDDIで販売された端末をタイプAで使う場合
これ以外のAndroid端末については、受信確認はしていないという扱いです。つまりSIMフリー端末をIIJmioで使っている人は、自分の端末で受信できるかを自分で確かめる必要があります。
受信の仕組みそのものと、格安SIMで受信できるかの条件は格安SIMでも緊急速報メール(緊急地震速報)は受信できる?とJアラート(ミサイル情報)は格安SIMのスマホにも届く?にまとめています。また、端末が受信できても、大雨の特別警報のように、そもそも気象庁から緊急速報メールで流れてこない情報があります(大雨の特別警報はスマホに鳴らないことがある)。
④ 災害救助法が適用されたときの支援#
IIJmioは、災害救助法が適用された地域の契約者向けに支援措置を出しています。例として、2025年9月16日掲載の「令和7年9月12日からの大雨に伴う災害」にかかるお知らせの内容は次のとおりでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 災害救助法の適用地域にお住まいで、対象サービスを契約している人 |
| 対象サービス | ギガプラン、IIJmioモバイルプラスサービス、eSIMサービス データプランゼロ など |
| 内容 | 1契約ごとに、その月のバンドルクーポンを2GB付与 |
| 手続き | 不要(ただし登録住所が現況と異なる場合は住所変更の手続きが必要) |
| データシェア利用時 | グループ単位ではなく各回線に付与 |
ポイントは2つです。
- 判定は登録住所。引っ越したのに住所変更をしていないと、被災地に住んでいても対象と判定されません
- 中身はデータ付与が中心。このお知らせには、大手キャリアが出すような料金支払期限の延長は書かれていません
大手キャリアとMVNOで支援の中身がどう違うか、令和8年熊本地震での各社の例は災害救助法が適用されると、通信各社は何をしてくれる?で比較しています。
⑤ 災害用伝言板は「web171」を軸にする#
IIJの公式ブログ「てくろぐ」(2015年9月1日掲載)は、大手3社(ドコモ・au・ソフトバンク)の災害用伝言板について、原則として各社の利用者向けに提供されており、MVNOの利用者が使えるかどうかは保証されていないと説明しています。そのうえで、利用する電話番号に制限のないNTT東西のweb171を案内しています。
ここで注意したいのが、同じ記事やIIJmioの災害時の案内(2016年4月18日掲載)で紹介されている「J-anpi」は、2023年9月30日に運営を終了していることです。古い案内のまま家族向けメモを作っていると、いざというときにつながりません。名前で安否を探せる手段の現状は名前で安否を探す方法にまとめています。
伝言板の登録先と相互検索の仕組みは携帯4社の災害用伝言板の使い方に、ネットが使えないときの声の伝言は災害用伝言ダイヤル(171)の使い方にまとめています。IIJmioを使っている家族がいる場合は、「困ったらweb171」と決めておくのが分かりやすい運用です。
⑥ 衛星通信:IIJmioとしての案内は見当たらない#
ドコモは2026年4月27日から、Starlink衛星とスマートフォンが直接通信する「docomo Starlink Direct」を提供しています。ドコモの案内では対象は「ドコモ回線をご利用中のお客さま」とされていますが、IIJmioのタイプD(ドコモ網)の契約者が対象になるかは、ドコモ・IIJmioのどちらの公式ページでも明記を確認できませんでした。
そのため、IIJmioの回線だけで「圏外でも衛星でつながる」と考えるのは避けたほうが安全です。現時点で確認できる選択肢は次の2つです。
- iPhone 14以降の「衛星経由の緊急SOS」:Appleの機能で、携帯会社の契約とは別に動きます。IIJの技術者ブログ(2024年7月30日掲載)では、タイプDの音声SIMとデータ専用eSIMでデモモードでの動作を確認したと報告されています(実際の緊急通報は行っていないと明記)。詳しくはiPhoneの衛星機能は格安SIMでも使える?
- au以外の回線向けに提供されている衛星サービスを別途契約する:格安SIMユーザーが衛星通信を使うための現実的な経路はLINEの衛星モードは格安SIMで使える?で整理しています
⑦ IIJmioならでは:ドコモ網とau網を1つのmioIDで持てる#
災害対策の観点で、IIJmioのいちばんの特徴はここです。
IIJmioのギガプランでは、SIMの種類ごとに回線網を選べます。
| タイプ | 回線網 | 補足 |
|---|---|---|
| タイプD | ドコモ網(5G・4G) | 音声・SMS・データ |
| タイプA | au網(5G・4G) | IIJmioのQ&AではタイプAにデータSIMの提供はないとされている |
| タイプI | ドコモ網(4G) | データeSIM |
そして、同じmioIDでギガプランを最大10契約(うち音声通話SIM/音声eSIMは5契約まで)申し込めます。データ容量シェア機能は無料で、同一mioIDで最大10回線までデータ容量を分け合えます。
これを使うと、1つのIIJmioのアカウントの中で「メインはタイプD(ドコモ網)、サブはタイプA(au網)」という持ち方ができます。回線元が分かれていれば、片方の回線網で大規模な障害が起きても、もう片方が残る可能性があります。サブ回線を別の回線網で持つ考え方は格安SIMの「回線元」一覧で詳しく解説しています。
よくある落とし穴:データeSIMは「ドコモ網」#
IIJmioのデータeSIM(タイプI)は安価ですが、回線はドコモ網です。IIJmioの公式ページでは、2GBのデータeSIMの組み合わせ例が月額440円(税込)と案内されています。
ただし、メイン回線がタイプD(ドコモ網)なら、データeSIMを足しても同じドコモ網の中で2本になるだけです。ドコモ網そのものが止まったときの備えにはなりません。しかもデータeSIMは、前述のとおりJAPANローミングの対象外で、110番・119番もかけられません。
災害用のサブ回線として回線元を分けたいなら、メインとは別のタイプを選ぶ必要があります。メインがタイプDならサブはタイプA、という組み方です。
各社の最小構成での維持費の比較は災害用サブ回線は月いくらで維持できる?にまとめています。
タイプを後から変える場合#
IIJmioの料金表では、SIMのタイプ変更(タイプD⇔タイプA)はSIMカード1枚/SIMプロファイル1つにつき2,200円(税込)です。音声SIMのタイプ変更では電話番号は変わらず、新しいSIMカードが届いたあとに電話で開通手続きが必要です。変更前のSIMカードは、新しいSIMの開通処理が終わるまで使えるとされています。
⑧ 災害時に知っておきたい料金まわりの仕様#
データ容量が尽きたときや、容量を節約したいときに関わる仕様です(IIJmio料金表より)。
- 高速通信のON/OFF:会員専用ページか公式アプリ「My IIJmio」から切り替えられ、OFFにすると最大300kbpsになります
- 低速時の制限:高速データ容量がない、またはOFFの状態で、3日あたりの通信量が366MBを超えると、さらに速度を制限する場合があるとされています
- 追加データ:1GBあたり220円(税込)で、毎月最大20枚まで。有効期限は購入した月の末日です
- クーポンカード:店頭で買えるクーポンカードでもチャージできます
最大300kbpsで何ができるか、容量を長持ちさせる設定は災害時にデータ容量が尽きたら?にまとめています。
SIMをなくした・壊したとき#
IIJmioの料金表では、SIMカードの再発行は1枚につき2,200円(税込)です。eSIMの再発行は無料ですが、別途SIMプロファイル発行手数料がかかります。
注意したいのは、オンラインでSIMカードの再発行や交換を申し込むと、新しいSIMカードが届くまで旧SIMカードで通信できない期間が発生すると明記されている点です。災害時は配送自体が遅れることも考えられます。手続きがオンライン中心の契約での備え方はpovo・ahamo・LINEMOは災害時に「店に駆け込む」ができないで整理しています(IIJmioの店頭での扱いにも触れています)。紛失したときに回線を止める手順は災害でスマホをなくしたら、まず回線を止めるをご覧ください。
予備の端末にSIMを差し替えたときに必要になるAPN設定は格安SIMの「APN設定」を災害前に控えておくにまとめています。
今日できるチェックリスト#
- 自分のIIJmioのSIMが音声SIM・SMS機能付きSIM・データSIMのどれかを会員専用ページで確認する(データSIMはJAPANローミング対象外・110番不可)
- 自分のSIMがタイプD・タイプA・タイプIのどれかを確認する(回線元がどこかを把握する)
- サブ回線を持つなら、メインと別の回線網になっているか確認する
- 端末のOSを最新にしておく(JAPANローミングの対応に関わる)
- ネットワークの手動選択の場所を一度開いて確認しておく(戻し方も含めて)
- 緊急速報の設定がオンか確認する。Jアラートの受信条件に当てはまらない端末なら、防災アプリや自治体の登録制メールを用意する
- IIJmioの登録住所が現住所になっているか確認する(災害時の支援の判定に使われる)
- 家族の安否確認は「web171」と決め、古いメモにJ-anpiが残っていたら消す
まとめ#
IIJmioは2026年4月からJAPANローミングに対応し、7月には手動選択の手順も追記されました。ただし対象は音声SIMとSMS機能付きSIMで、データSIMは対象外、ローミング中もデータ通信はできません。緊急速報・Jアラートの受信は端末しだいで、災害時の支援はデータ付与が中心です。
一方で、ドコモ網とau網を同じmioIDの中で持ち分けられるのは、災害対策として実用的な特徴です。安さだけでデータeSIMを足すと、同じドコモ網で2本になるうえ、ローミングも110番も使えないサブ回線になります。サブ回線は「回線網」と「SIMの種類」の両方で選ぶ——これがIIJmioで備えるときの要点です。
災害用のサブ回線全体の考え方は災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?とpovo2.0を災害用のサブ回線にもあわせてご覧ください。ドコモ・au・ソフトバンクの3回線から選べるmineoの災害時の扱いはmineoは災害時に強い?にまとめています。