災害時の通信の備えというと、回線・電池・アプリの話になりがちです。しかし実際に困ったとき、多くの人がまず思い浮かべるのは「店に持っていけばなんとかなる」ではないでしょうか。

その逃げ道が、契約している料金プランによっては最初から存在しません。

先に結論をまとめます。

  • povo2.0は公式に「店頭・電話によるお客さまサポートは行っていない」と明記。auショップやUQスポットでも対応してもらえない
  • LINEMOは「ソフトバンクやワイモバイルの店舗や電話では対応していません」。申し込みもオンラインのみ
  • ahamoはドコモショップで手伝ってもらえるが、1回3,300円(税込)の有料サポート。ただし故障修理の受付だけは無料で、ドコモ自身が「緊急の通信環境確保」を理由に挙げている
  • MVNOは「店舗がある=サポートが受けられる」とは限らない。IIJmioは店頭取り扱い店舗がありながら「店頭ではサポートは承っていません」としている
  • 備えの方向は2つ。店に行かずに済む状態を平常時に作ることと、オンライン手続きをするための通信を別に確保すること

災害のあと、人が店に行きたくなる場面#

回線を止める手続きについては災害でスマホをなくしたら、まず回線を止めるにまとめました。ここで扱うのは、それ以外の「持ち込めば解決しそうな」場面です。

  • 端末を落として画面が割れた、水に浸かった(スマホが濡れた・水没したときの対処)
  • 予備のスマホに回線を移したいが、eSIMの入れ替え方がわからない
  • 挿し替えたら圏外のまま戻らない(APN設定が必要だった)
  • 家族、とくに離れて暮らす親の端末で同じことが起きた

平常時なら「週末に店へ行こう」で済みます。災害時は急ぎで、しかも手元の端末が不調というまさにその状態で、オンライン手続きを求められるのが厄介なところです。

オンライン専用プラン3社の店頭対応#

各社の公式情報から、店舗で何ができるかを整理します。

契約・各種手続き使い方・設定の相談故障修理の受付
povo2.0店頭対応なし(auショップ・UQスポットでも不可)店頭対応なし。アプリのヘルプ/チャット購入先に問い合わせと案内
ahamoドコモショップで有料サポート1回3,300円(税込)。店員が代行するのではなく、本人の操作を手伝う形式無料のチャット相談ドコモショップ/d gardenで受付可(受付自体は無料・修理代金は別途)
LINEMO申し込みは店舗不可、オンラインのみ。「ソフトバンクやワイモバイルの店舗や電話では対応していません」有料オプション「店頭スマホサポート」あり(後述)今回の調査では公式ページで確認できず

povo2.0:公式が「店頭・電話サポートは行っていない」と明記#

povo2.0の重要事項説明には、次のように書かれています。

povo2.0は店頭・電話によるお客さまサポートは行っていないため、auショップ、UQスポット等のau/UQ mobile取扱店、au/ UQ mobileのお客さまセンターでは対応しておりません。

サポートの入口は「オンラインでサポートいたします。povo2.0アプリより、『ヘルプページ』やチャットからのお問い合わせをご利用ください」とされています。au回線を使っていても、auの店舗はpovoの窓口ではないということです。

端末が壊れた場合も、povoの重要事項説明は「ご利用の機種の故障修理などはご購入先にお問い合わせください」としています。povo自体は端末を売っていないため、修理の相談先は契約先ではなく購入店になります。

かつてpovoには月830円の「スマホ故障サポート」というトッピングがあり、故障・破損・水漏れのときに交換用端末(リフレッシュ品)を配送で受け取れる仕組みでした。ただし公式ページには2023年7月31日をもって新規受付を終了と記載されています。これから加入することはできません。

povoを災害用のサブ回線として持つ考え方自体は有効です(povo2.0を災害用のサブ回線に)。ただしサポートの薄さも含めてサブ回線向きだと理解しておくほうが安全です。メイン回線をpovoにしている場合は、次の章のチェックリストの重みが変わります。

ahamo:手伝ってはもらえるが有料。ただし故障受付は別扱い#

ahamoはドコモショップでの窓口が用意されていますが、有料です。

  • ahamo WEBお申込みサポート(新規契約・他社からの乗り換え・ドコモの料金プランからの変更):3,300円(税込)
  • ahamo WEBお手続きサポート(契約後の各種手続き):3,300円(税込)

ドコモの案内によれば、これは「お客さまご自身によるahamoサイトでのお手続きをお手伝いさせていただく」サービスです。店員が代わりに操作してくれるわけではありません。また、1回の来店で複数の手続きをしても1回3,300円(税込)とされています。

一方で、故障修理の受付は扱いが違います。ドコモは2021年4月22日のお知らせで、ドコモショップでの修理受付(受付自体は無料・修理代金は別途)を開始すると発表しており、その理由として次を挙げています。

緊急の通信環境確保の観点など即時対応のご要望が多い

キャリア自身が「緊急時には店頭が要る」と認めた、という読み方ができます。ahamoのFAQでも、iPhone以外の機種と一部のiPhone取次について、ドコモショップ/d gardenで受け付けると案内されています(オンライン修理受付サービスも並行して利用できます)。

ahamoの災害時の対応状況全般はahamoは災害時に強い?にまとめています。

LINEMO:店舗での申し込みは不可。有料の「店頭スマホサポート」はある#

LINEMOの公式FAQは明快です。

店舗でのお申し込みはできません。オンラインでのみお申し込みができます。

問い合わせ方法についても、「カスタマサポートやLINEMOのLINE公式アカウントでチャットにて問い合わせることが可能です」としたうえで、「ソフトバンクやワイモバイルの店舗や電話では対応していません」と書かれています。

ただし、LINEMOには「店頭スマホサポート」という有料オプションがあります。公式ページには「ソフトバンクもしくはワイモバイル取扱店にご来店いただく必要があります。一部店舗ではサポートの受付をしておりません」「フルプランなら月990円で全メニュー使い放題!」と案内されています。

つまりLINEMOの場合、平常時に有料オプションへ入っておけば店頭という選択肢を買えるという構造です。災害が起きてから思い出しても間に合いません。

LINEMOの災害時の対応状況全般(衛星通信・災害用伝言板・JAPANローミング)はLINEMOは災害時に強い?にまとめています。

MVNOは「店舗がある=サポートが受けられる」ではない#

格安SIM=店舗なし、と単純化するのも正確ではありません。会社によって事情がかなり違います。

mineoは自社の店舗網を持っていますが、店舗の種類によってできることが違います。公式ページでは mineoショップ/mineoスポット/お渡し店/サポート店/販売店 が区別され、たとえば「販売店」は「即日/後日 新規申込 SIMお渡し」のみ、「お渡し店」は初期設定サポートまで、といった具合です。近所にあるのがどの種別かで、駆け込んだときの結果が変わります。

IIJmioはさらに注意が要ります。BIC SIMの格安SIMカウンター、ヨドバシカメラ、エディオンといった取り扱い店舗がありますが、公式Q&Aには次のように書かれています。

上記URLに掲載されている手続き以外は、店頭で承ることはできません。また、店頭ではサポートは承っていません。

店舗はあるが、契約中のサポート窓口ではないということです。店舗の看板を見て「ここに持ち込めばいい」と考えていると、災害時に当てが外れます。

対して楽天モバイルは自社ショップを全国に展開し、申し込みから開通、製品の初期設定までショップで対応すると公式に案内しています。同じ「大手より安い回線」でも、この点は大きな差です。

自分の契約先がどの回線を借りていて、どういう会社なのかは格安SIMの回線元一覧に整理しています。

そもそも、災害時に店は開いているのか#

ここまで店頭対応の有無を見てきましたが、店があっても被災地では営業しているとは限りません。建物の被害、停電、従業員自身の被災で臨時休業することは普通に起こります。

災害救助法が適用された地域では、各社が支援措置を発表し、店舗の営業状況も公式サイトで案内されます。何が行われるかは災害救助法が適用されると、通信各社は何をしてくれる?にまとめました。

つまり店頭は、あれば心強いが、当てにして設計するものではないという位置づけになります。オンライン専用プランを使っているかどうかにかかわらず、「店に行かずに済ませる」準備は無駄になりません。

オンライン手続きには通信が要る、という循環#

オンライン専用プランの本当の弱点はここです。

手続きをするにはインターネットが要ります。しかし手続きが必要になっている原因は、たいていその通信が使えないことです。

抜け道は3つしかありません。

  1. 別の回線を持っておく(サブ回線の最低維持費を比較)
  2. 家族の端末やテザリングを使う(テザリングで家族の回線を分け合う)
  3. Wi-Fiを使う(自宅の回線が生きていれば、あるいは災害時に開放される00000JAPAN)

ただしWi-Fiがあっても、SMSの認証コードは携帯回線側に届くため受け取れません。この詰まり方は災害時に「SMS認証コードが届かない」とログインできないで詳しく扱っています。Wi-Fiでできること・できないことの切り分けは圏外でもWi-Fiがあれば連絡できる?にあります。

店がない前提での備えリスト#

店頭という逃げ道がないぶん、平常時にできることを前倒しするのが対策になります。

  • 自分の契約先のサポート窓口がどこかを確認した(アプリ内チャット/Web/電話/店舗)
  • その窓口の受付時間を確認した(深夜に対応してもらえるとは限らない)
  • 契約先のアプリをインストールし、ログインできる状態にした(povo2.0はアプリが入口)
  • そのアプリを予備端末にも入れて、ログインできることを確かめた
  • 契約者情報(登録電話番号、ID、本人確認に使う情報)をスマホの外に控えた
  • eSIMなら再発行の手順と手数料を控えた(povo2.0はSIMカード3,850円・eSIM440円、eSIM再発行は当面無料と案内)
  • 予備端末への移し替えを一度実際に試した(予備のスマホに自分のSIMを挿して使える?)
  • APN設定の控えを紙で持った(格安SIMの「APN設定」を災害前に控えておく)
  • 家族(とくに親)の契約先についても、同じ確認をした

とくに効くのは「予備端末に契約先アプリを入れてログインまで済ませておく」の1項目です。端末が壊れたあとに、壊れた端末でしかログインできないアプリを使って手続きする——という詰み方を、これだけで避けられます。

eSIMと物理SIMのどちらで持つかも、この場面で差が出ます。判断材料は災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?にまとめました。

まとめ#

  • povo2.0は「店頭・電話によるお客さまサポートは行っていない」と公式に明記。auショップ・UQスポットも窓口ではない
  • LINEMOは申し込みオンラインのみで、「ソフトバンクやワイモバイルの店舗や電話では対応していません」。有料の「店頭スマホサポート」に入れば店頭を使える
  • ahamoはドコモショップのサポートが1回3,300円(税込)。ただし故障修理の受付は無料で、ドコモは「緊急の通信環境確保の観点」を理由に挙げている
  • MVNOも一様ではない。mineoは店舗種別で対応が違い、IIJmioは「店頭ではサポートは承っていません」。楽天モバイルは自社ショップで初期設定まで対応
  • 店があっても被災地では閉まる。店を当てにしない設計が結局いちばん強い
  • 最優先の備えは、予備端末に契約先アプリを入れてログインできる状態にしておくこと

安さと引き換えに何を手放しているのかを、契約時ではなく災害時の基準でもう一度見ておく——それがこの記事で言いたかったことです。