災害時に「スマホは圏外だけど、避難所のWi-Fiにはつながった」という状況は起こります。このとき、いつもどおり電話やSMSが使えるつもりでいると、いざというときに手が止まります。

先に結論です。Wi-Fiにつながっても、電話番号を使う通信(音声通話・SMS・110番/119番)は基本的に復活しません。Wi-Fiで動くのは、インターネットを経由する手段だけです。

  • 使える:LINEなどのアプリ通話・メッセージ、iMessage、RCS、メール、web171、各社の災害用伝言板(Web)、地図・SNS
  • 使えない:SMS(携帯電話ネットワークが必要)、110番・119番などの緊急通報
  • 条件つき:電話番号での通話(「Wi-Fi通話」に契約先が対応している場合のみ)

この線引きを平常時に知っておくと、圏外になった瞬間に何をすればいいかが決まります。順に見ていきます。

Wi-Fiだけで何が使えるのか(早見表)#

手段Wi-Fiだけで使えるか根拠・条件
LINE・アプリの通話/メッセージ○インターネット経由のため
iMessage(青い吹き出し)○Appleが「モバイルデータまたはWi-Fi接続が必要」と案内
RCS(Googleメッセージのチャット)○Googleが「Wi-Fi経由でメッセージを送信できる」と案内
SMS(緑の吹き出し/電話番号のメッセージ)×Appleが「携帯電話ネットワークへの接続が必要」と明記
メール(Gmail・キャリアメールのWeb版)○インターネット経由のため
web171(災害用伝言板)○NTT東日本が「インターネットを利用して」と案内
携帯4社の災害用伝言板(Web版)○ブラウザから利用する仕組みのため
電話番号での音声通話△契約先が「Wi-Fi通話」に対応している場合のみ
110番・119番・118番×緊急通報は電話回線での発信が前提

いちばん誤解が多いのがSMSです。「メッセージアプリが開けるから送れるはず」と思いがちですが、Appleは公式サポートで、iMessage・RCS・MMSは「モバイルデータまたはWi-Fi接続が必要」なのに対し、SMSメッセージを送信するには携帯電話ネットワークへの接続が必要だと区別して説明しています(iMessage、RCS、SMS/MMSの違い)。

つまり、相手がiPhoneでiMessageが有効なら青い吹き出しでWi-Fi越しに届きますが、相手がAndroidで緑の吹き出しになる相手には届かない、ということが起こります。同じ「メッセージ」アプリの中で挙動が分かれるので、送信済みに見えても届いていないケースに注意してください。

Androidも同様で、GoogleメッセージのRCSチャットは「Wi-Fi経由でメッセージを送信したり、その他の機能を使用したりできるようになります」と公式に案内されています(RCSチャットをオンにする)。裏を返せば、RCSがオフだったり相手が非対応だったりすると、SMSにフォールバックして送れなくなります。

SMSが使えないと地味に効くのが、ログイン時の認証コードが受け取れなくなることです。Wi-Fiでつながったのに認証で止まる場面と、その備えは災害時に「SMS認証コードが届かない」とログインできないに分けて書きました。

「Wi-Fi通話(Wi-Fi Calling)」は誰でも使える機能ではない#

スマホには、モバイル回線の代わりにWi-Fiを使って電話番号のまま通話する仕組みがあります。iPhoneでは「Wi-Fi通話」、Androidでは「Wi-Fi 通話」と表示される機能です。

ただし、これは端末だけで完結する機能ではありません。契約先(携帯電話会社)が対応していることが前提です。

Googleの電話アプリヘルプは、この点をはっきり書いています。

「モバイル ネットワークの代わりに Wi-Fi 接続を使用して通話できる場合があります。一部の携帯通信会社は Wi-Fi 経由の通話をサポートしていません。」 「ご利用の携帯通信会社がこの機能に対応していない場合、このオプションは表示されません。」 (Wi-Fi 経由で通話する - 電話アプリ ヘルプ)

Appleも同じく、Wi-Fi通話を使うには「ご契約先の通信事業者がWi-Fi通話に対応している」ことが条件だとしています(Wi-Fi通話で電話をかける)。

自分が使えるかどうかは、設定画面で確認できる#

問い合わせなくても、設定画面に項目が出るかどうかで判断できます。災害が起きてからでは確認する余裕がないので、今のうちに見ておくのがおすすめです。

iPhone

  1. 「設定」→「モバイル通信」
  2. デュアルSIMなら回線を選ぶ
  3. 「Wi-Fi通話」があるか確認する(あればオンにできる)

Appleは、オンにする際に「緊急通報サービスを利用するときのために、住所の入力または確認が必要となる場合があります」と案内しています。また、Wi-Fi通話が有効なときはステータスバーの通信事業者名のあとに「Wi-Fi」と表示されます。

Android(Pixelの場合)

  1. 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」
  2. 使っている回線を選ぶ
  3. 「Wi-Fi 通話」があるか確認する

繰り返しになりますが、Googleは非対応ならこのオプション自体が表示されないと明記しています。項目が見当たらない場合は、端末の不具合ではなく契約先が対応していない可能性が高い、と考えて次の手段に進んでください。

デュアルSIMで2回線持っている場合は、回線ごとに設定が分かれます。サブ回線側だけ対応していることもあるので、両方確認しておくと確実です。デュアルSIMの設定手順そのものはiPhoneでデュアルSIM(eSIM)を設定する手順、PixelでデュアルSIMを設定する手順にまとめています。

なお、国内の携帯電話会社がWi-Fi通話に対応しているかどうかは、Appleが公開している通信事業者の対応一覧で確認できます。2026年9月18日公開の版では、日本のau・NTT docomo・Rakuten Mobile・SoftBankの4社に「Wi-Fi通話」の記載がありませんでした。詳しくはWi-Fi通話(VoWiFi)は日本の携帯会社で使える?にまとめています。

楽天モバイルの「Rakuten Link」はアプリ側でWi-Fi通話に対応している#

例外的に、アプリ側の仕組みでWi-Fi越しの通話を提供しているケースもあります。楽天モバイルのRakuten Linkは、Wi-Fi接続中でも発信・着信ができる旨が公式に案内されています。

ただし公式には注意点も書かれています。楽天モバイルの電波につながらずWi-Fiだけで着信した場合、「不明」や「非通知」と表示されることがある、初期設定は「Wi-Fiに接続せず、アンテナマークが表示されている状態」で行うことが推奨、といった条件です(Rakuten Link)。

「アプリを入れておけばWi-Fiだけで完全に電話が使える」と考えるのではなく、平常時に一度、実際にWi-Fiだけの状態で発着信を試しておくのが確実です。

110番・119番はWi-Fiでは代替できない#

ここがいちばん重要な線引きです。LINE通話やアプリ通話で110番・119番にはかけられません。緊急通報は電話回線での発信が前提で、格安SIMでもデータ専用SIMでは発信できないと各社が案内しています。詳しくは格安SIMで110番・119番はかけられる?にまとめました。

では、携帯がつながらないときにどうするか。総務省消防庁は、携帯電話等から119番がつながりにくい場合の対応として次のように案内しています。

「公衆電話を利用する、近隣の方やお店に119番通報を依頼する、消防署所に直接駆け込むなどのご対応をお願いいたします。」 (119番緊急通報|総務省消防庁)

Wi-Fiを探すより、公衆電話を探すほうが正解という場面があるということです。公衆電話は停電時でも硬貨で発信できる仕組みがあり、災害時には無料化されることもあります。設置場所はNTT東日本・西日本のサイトで検索できるので、生活圏の位置を事前に見ておくと迷いません。使い方は災害時の公衆電話の使い方で解説しています。

なお、音声による通報が難しい方向けには、インターネット経由で通報する公的な仕組みがあります。消防庁のNET119緊急通報システムと、警察庁の110番アプリシステムです。いずれも事前の登録が必要で、その場で思い立って使えるものではありません。該当する方は平常時に登録を済ませておいてください。この2つに加えて、110・118・119へもかけられる電話リレーサービスがあります。3つの違いと登録の進め方は声で電話できないときの連絡・通報手段で整理しています。

緊急通報のときに位置情報が通報先へ届く仕組みや、緊急SOSの設定についてはスマホの緊急SOSを災害前に設定するにまとめています。

安否確認はWi-Fiだけでも成立する#

一方で、安否の伝達はWi-Fiだけで十分にできます。ここは覚えておく価値があります。

  • web171:NTT東日本が「インターネットを利用して被災地の方の安否確認を行う」サービスとして案内しているもので、ブラウザから使えます(災害用伝言板(web171))。契約先を問わないため、格安SIMユーザーにとっては本命の手段です。
  • 携帯4社の災害用伝言板:Web版はブラウザから確認できます。ただし契約先によっては自分の番号を登録できないという制約があります。詳しくは携帯4社の災害用伝言板の使い方を確認してください。
  • 音声で残したい場合の171:こちらは電話回線を使うため、Wi-Fiだけでは利用できません。web171との使い分けは災害用伝言ダイヤル(171)の使い方にまとめています。

「電話がつながらない=安否も伝えられない」ではありません。Wi-Fiがあるなら、まずweb171に登録する。この順番を家族で決めておくだけで、災害時の動きがかなり楽になります。ルールの決め方は家族の安否確認ルールの決め方を参考にしてください。

そもそも災害時にWi-Fiはどこにあるのか#

「Wi-Fiがあれば」と言っても、災害時にWi-Fiが手に入るとは限りません。現実的な入手先は3つです。

① 00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)

大規模災害時に無料開放される統一SSIDです。ただしパスワードなしでつながる代わりに通信は暗号化されていません。使ってよいこと・避けるべきことの線引きは00000JAPANの安全な使い方にまとめました。

② 自宅のWi-Fi(ただし停電すると止まる)

自宅のWi-Fiは、停電した時点で使えなくなります。ホームゲートウェイやルーターの電源が落ちるためです。NTT東日本はひかり電話について「停電時は緊急通報を含む通話ができません」と明記しています。詳細は停電すると自宅のWi-Fiと固定電話は止まるを確認してください。

つまり、停電をともなう災害では自宅Wi-Fiは戦力外と考えておくのが安全です。

③ 家族・自分のもう1台からのテザリング

誰か1人の回線が生きていれば、テザリングで全員がインターネットにつながれます。ただし親機の電池とデータ量が先に尽きるという問題があります。手順と注意点は災害時に1本の回線を家族で分け合うにまとめました。

回線が生きている人を作るという意味では、別の回線網でサブ回線を1本持っておくのがいちばん確実です。契約先が違っても回線元が同じでは意味が薄いので、格安SIMの「回線元」一覧で自分の回線を確認したうえで、災害用サブ回線は月いくらで維持できる?を参考に選んでみてください。

平常時にやっておく4つのこと#

  • 自分の端末の設定に「Wi-Fi通話」の項目があるかを確認する(iPhone:モバイル通信/Android:ネットワークとインターネット→SIM)
  • 家族との連絡で、Wi-Fiだけで届く手段(LINE・iMessage・RCS・メール)を1つ決めておく
  • web171の使い方を一度試しておく(毎月1日・15日ほかの体験利用日に試せます。次の防災週間は8月30日9:00から→災害用伝言ダイヤル(171)の使い方)
  • 生活圏の公衆電話の場所を確認しておく(Wi-Fiより確実な場面がある)

いちばん抜けやすいのは1つ目です。「たぶん使える」と思っていた機能が、設定画面に項目すらなかった——というのは、災害時に気づいてもどうにもなりません。

なお、電話番号あてに写真や長文を送れる「+メッセージ」も、Wi-Fi経由では5060番台のポート番号を使うとドコモが案内しています。格安SIMでの利用条件とあわせて+メッセージは格安SIMで使える?にまとめました。

まとめ#

Wi-Fiは万能ではなく、インターネットを通る手段だけを復活させるものです。安否の伝達(web171・アプリ・iMessage/RCS)には十分効きますが、SMSと緊急通報は戻りません。

とくに110番・119番については、消防庁自身が「公衆電話を利用する」「近隣の方やお店に依頼する」といった代替手段を案内しています。Wi-Fiを探して時間を使うより、そちらのほうが早いこともあります。

なお、「圏内表示なのに電話だけつながらない」場合は、そもそも圏外ではなく通信の集中(輻輳)を避けるための規制ということもあります。この場合はWi-Fiを探さなくても、パケット通信側は通ることがあります。仕組みは災害時に電話だけつながらないのはなぜ?にまとめました。

また、Wi-Fiもモバイル回線も使えない状況でも、すぐ隣にいる人とだけならデータを渡せます。AirDropはインターネットを経由しない設計だとAppleが明記しています(→圏外でも近くの人にファイルを渡せる?)。

つながらないのが障害なのか端末側なのかを切り分ける手順は通信障害かも?と思ったらまず確認すること、災害時の連絡手段の全体像は災害時の連絡手段まとめにまとめています。

Wi-Fiすらない場所で、すぐ近くの家族とだけ連絡を取りたい場合は、基地局もWi-Fiも使わない無線機という選択肢もあります。使える範囲と必要な手続きは圏外でも家族と話せる?免許のいらないトランシーバーでできること・できないことに整理しました。