災害用にサブ回線をもう1本契約するとき、「どこが安いか」より先に確認したいことがあります。その回線が、メイン回線と同じ電波を使っていないかです。
格安SIM(MVNO)は自社で基地局を持たず、大手キャリアの設備を借りてサービスを提供しています。LINEMOの公式サイトでも、格安SIMは「自社で基地局などを保有せず、大手キャリアの回線を借りて通信サービスを提供」する仕組みだと説明されています。
つまり会社名が違っても、電波の出どころは同じことがあります。この場合、その設備が被害を受ければ2本とも同時に使えません。
先に結論をまとめます。
- サブ回線は**メイン回線と別の回線網(ドコモ/au/ソフトバンク/楽天)**で持つ
- 会社名では判断できない。契約先の公式サイトで「回線元」を確認する
- 同じ格安SIMでも、申し込み時に選ぶプランで回線元が変わることがある
- 2026年4月開始のJAPANローミングは救済になるが、MVNO契約者はデータ通信が対象外と案内されている
順に見ていきます。
なぜ「別の回線網」でなければ意味が薄いのか
サブ回線を持つ目的は、メイン回線が使えなくなったときの逃げ道を用意することです。使えなくなる原因は主に次の3つです。
- 大規模な通信障害(契約先の設備・システムの問題)
- 災害による基地局の停止・停電
- 端末やSIMの故障
このうち 1と2は「回線網の単位」で起きます。ドコモ網で大規模障害が起きれば、ドコモ本体だけでなく、ドコモ網を借りている格安SIMの利用者も影響を受けます。
「メインはドコモ系の格安SIM、サブもドコモ系の別会社」という組み合わせは、月額を2つ払いながら、いちばん起きてほしくない場面で2本同時に落ちる可能性があります。別会社であることと、別の電波であることは別問題です。
なお、つながらないときに障害なのか端末側なのかを切り分ける手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。このときも「回線元」の考え方が必要になります。
大手4社と、そのブランド
まず土台になる回線網は4つです。ドコモ、au(KDDI・沖縄セルラー)、ソフトバンク、楽天モバイル。
各社のオンライン専用ブランドとサブブランドは、親会社の回線をそのまま使います。ここは各社が公式サイトで明記しています。
| ブランド | 回線網 | 公式サイトの記載 |
|---|---|---|
| ahamo | ドコモ | 「docomoと同じ電波が、国内はもちろん、海外でも最大2週間そのまま使える!」 |
| povo2.0 | au | 「povoは安心のau回線を利用」 |
| LINEMO | ソフトバンク | 「LINEMOはMNO(ソフトバンク)直営。ソフトバンク回線を使用した高品質な通信環境が強み」 |
| UQ mobile | au | 「UQ mobileで利用可能なau 5G / au 4G LTEのサービスエリアマップです」 |
| ワイモバイル | ソフトバンク | 「ソフトバンクの電波で快適」 |
「auがメインだからUQ mobileをサブに」という組み合わせは、回線としては同じau網です。分散にはなりません。
楽天モバイルは自社の設備を持つ4番目の回線網です。ただし全域が自社回線というわけではなく、KDDIとのローミング協定にもとづき、一部のエリアではauの電波を使います。楽天モバイルの発表では「東京都23区・名古屋市・大阪市を含む都市部の一部繁華街のエリアを新たな対象とし、一部インドア(地下鉄、地下街、トンネル、屋内施設など)やルーラルエリアも引き続きローミング提供する」とされ、この協定は「2023年6月から開始し、提供期間を2026年9月まで延長」と記載されています。自分の生活圏が楽天回線エリアかローミングエリアかで、分散の効果が変わる点は意識しておいたほうがよいと思います。
主な格安SIMの回線元一覧
格安SIM(MVNO)は、申し込み時に回線を選ぶ会社と、1つに固定されている会社があります。各社の公式ページで確認した内容が次のとおりです。
| 格安SIM | 選べる回線網 | 備考 |
|---|---|---|
| IIJmio(ギガプラン) | ドコモ/au | タイプD=ドコモ、タイプA=au |
| mineo | ドコモ/au/ソフトバンク | Dプラン=ドコモ、Aプラン=au、Sプラン=ソフトバンク |
| NUROモバイル | ドコモ/au/ソフトバンク | 「どれを選んでも同一料金」 |
| イオンモバイル | ドコモ/au | タイプ1・タイプ2の区分はドコモ回線のみ |
| 日本通信SIM | ドコモ | 「ドコモネットワークを利用しています」 |
各社の表現も引用しておきます。
- IIJmio:公式Q&Aで「ドコモの回線を利用して通話や通信を行なうものが『タイプD』」「au回線を利用するものが『タイプA』」と説明されています。
- mineo:Aプランは「au 4G LTEサービスエリア、au 5Gサービスエリア」、Dプランは「Xi(クロッシィ)エリア、ドコモ 5Gエリア」、Sプランは「SoftBank 4G LTE、SoftBank 4Gエリア、SoftBank 5Gエリア」と案内されています。
- NUROモバイル:「トリプルキャリア対応で、ドコモ・au・ソフトバンク回線のどれを選んでも同一料金です」と記載されています。
- イオンモバイル:NTTドコモ回線は「日本全国のNTTドコモの5G/LTE(Xi)/3G(FOMA)エリア」、au回線は「日本全国のauの5G/4G LTEエリア」で利用でき、au回線では3G通信は利用できないとされています。
- 日本通信SIM:合理的シンプル290プランの詳細ページに「ドコモネットワークを利用しています」と明記されています。
ここで重要なのは、同じ会社と契約していても、選んだプランによって回線網が違うということです。「mineoだから」では回線元は決まりません。自分がAプランなのかDプランなのかまで見る必要があります。
自分の契約先の回線元を調べる方法
まだ契約している場合は、次の順で確認できます。
- 契約先のマイページで、契約中のプラン名を確認する(「タイプA」「Dプラン」など回線を示す表記が入っていることが多い)
- 公式サイトの「対応端末」「動作確認端末」ページを見る。回線ごとにページが分かれている会社は、そこで回線名がわかります
- 障害情報ページを見る。mineoのように、お知らせに【A】=au回線、【D】=ドコモ回線といったラベルを付けている会社もあります
まとめサイトの一覧表ではなく、契約先の公式サイトで確認してください。MVNOは提供回線を追加・終了することがあり、古い情報が残りやすい分野です。
サブ回線を選ぶときの組み合わせ
メイン回線の回線網がわかったら、サブは別の回線網から選びます。
| メイン回線が | サブ回線の候補(回線網) |
|---|---|
| ドコモ系(ahamo、日本通信、IIJmioタイプD など) | au/ソフトバンク/楽天 |
| au系(UQ mobile、povo、IIJmioタイプA など) | ドコモ/ソフトバンク/楽天 |
| ソフトバンク系(ワイモバイル、LINEMO など) | ドコモ/au/楽天 |
| 楽天モバイル | ドコモ/ソフトバンク(auはローミング先と重なる場合がある) |
au網のサブ回線としては、初期費用0円で持てるpovo2.0が候補になります。ただし180日ごとの課金が必要で「完全な0円維持」はできません。維持費の計算はpovo2.0を災害用のサブ回線ににまとめました。
回線を分散しても、端末が対応していなければ届かない
回線網を分けたうえで、もうひとつ確認が必要です。手持ちの端末が、その回線の周波数帯(バンド)に対応しているかです。
対応していないバンドの電波は、どれだけ強く飛んでいても端末側で受け取れません。特に山間部や地方で効いてくる低い周波数帯(いわゆるプラチナバンド)は、キャリアごとに割り当てが違います。調べ方は山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?対応バンドとエリアの確認方法にまとめています。
契約後の設定手順は端末別に分かれます。iPhoneならiPhoneでデュアルSIM(eSIM)を設定する手順、PixelならPixelでデュアルSIMを設定する手順を参照してください。1台にまとめず、古いスマホをサブ回線専用機にする方法は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめました。
なお、eSIMは物理SIMの到着を待たずにオンラインで開通できるため、サブ回線と相性がよい方式です。今回確認した範囲では、IIJmio(タイプD・タイプAとも音声eSIMを提供)、日本通信SIM(「SIMカード←→eSIMの変更が可能です」と記載)などが対応しています。ただし対応状況は会社・プランごとに異なるため、申し込み前に公式サイトで確認してください。
JAPANローミングがあっても、分散が不要にはならない
2026年4月1日から、大規模災害・大規模障害時に他社のネットワークを借りられる「JAPANローミング」が始まっています(ドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの5社)。契約先の回線が落ちても他社の電波で救済されるなら、回線を分ける必要はないのでは——と考えたくなるところですが、格安SIMユーザーにとっては、そのまま当てはまりません。
楽天モバイルの発表資料には、次の注記があります。
MVNO事業者をご契約のお客様は、緊急通報のみ方式では音声通話(緊急通報の発信)、フルローミング方式ではデータ通信を除き、音声通話・SMSをご利用いただけます。詳細については、MVNO各社にお問い合わせください。
つまりMVNO契約者の場合、フルローミング方式であってもデータ通信は除かれ、使えるのは音声通話とSMSと案内されています。連絡は取れても、地図・SNS・災害情報サイトといったデータ通信を使う手段は戻ってきません。
なお電気通信事業者協会(TCA)側の説明では、MVNOのデータ通信について「一部のMVNOのみ対応」とされています。表現に幅があるため、自分の契約先が救済時にどこまで使えるのかは、契約先のMVNOに確認するのが確実です。楽天モバイルの注記も「詳細については、MVNO各社にお問い合わせください」と結ばれています。
加えて、JAPANローミングは平常時や小規模な障害では提供されず、端末側の対応も前提になります。制度の全体像と、対応端末の条件については災害時の連絡手段まとめで解説しています。
JAPANローミングは最後の受け皿であって、日常的に使える代替回線ではありません。データ通信まで確保したいなら、別の回線網のサブ回線を自分で用意しておくのが確実です。
契約前のチェックリスト
- メイン回線の回線網を公式サイトで確認した(会社名ではなくプラン名まで)
- サブ回線の候補が、メインと別の回線網であることを確認した
- 手持ちの端末が、サブ回線の対応バンドを満たしていることを確認した
- 生活圏・帰省先が、その回線のエリア内であることをエリアマップで確認した
- サブ回線が音声通話SIMであることを確認した(データ専用SIMでは110番・119番が使えません)
- デュアルSIMの設定を平常時に済ませた(障害の最中に初期設定はできません)
データ専用SIMからは緊急通報ができない点は見落とされやすいところです。理由と各社の案内は格安SIMで110番・119番はかけられる?にまとめました。
また、サブ回線を持っても安否情報の登録先は別の話です。格安SIMでは契約先の災害用伝言板に登録できないことがあります。携帯4社の災害用伝言板の使い方を合わせて確認してください。
まとめ
- 格安SIMは大手キャリアの回線を借りているため、会社名が違っても電波が同じことがある
- サブ回線はメインと別の回線網(ドコモ/au/ソフトバンク/楽天)から選ぶ
- mineo・IIJmio・NUROモバイル・イオンモバイルのように、同じ会社でも選ぶプランで回線元が変わる
- 回線を分けても、端末が対応バンドを満たしていなければ届かない
- JAPANローミングは救済策だが、MVNO契約者はデータ通信が対象外と案内されている
回線元を分けたら、次はSIMの種類です。メイン回線と同じ種類(eSIM同士・SIMカード同士)でそろえると、端末が壊れたときに2本ともまとめて使えなくなることがあります。選び方は災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?にまとめました。
回線元を知っておくことは、被災したときの支援措置を調べる場面でも効いてきます。ただし注意点があり、回線元(ドコモ・au等)が発表する災害時の支援措置は、その回線を借りているMVNOの契約者には適用されません。支援を出すかどうかは契約先のMVNOが独自に判断します。この違いは災害救助法が適用されると通信各社は何をしてくれる?で整理しました。
回線元のあたりがついたら、次は維持費です。povo2.0・mineo マイそく・HISモバイル・日本通信・IIJmio・楽天モバイルの月額と初期費用を公式料金で並べた比較を災害用サブ回線は月いくらで維持できる?にまとめました。回線元を選べる会社と、1回線しか扱っていない会社があるので、この記事と合わせて見ると絞り込みが早くなります。
サブ回線を選ぶときは、料金表を見る前に「その回線はどこの電波か」を1分確認するだけで、備えとしての価値がかなり変わります。
この記事の情報について:本記事は各社の公式サイト(ahamo、povo2.0、LINEMO、UQ mobile、ワイモバイル、IIJmio Q&A、mineoユーザーサポート、NUROモバイル、イオンモバイル、日本通信SIM、楽天モバイル プレスリリース(JAPANローミング)、楽天モバイル プレスリリース(KDDIとのローミング協定))をもとに、2026年8月3日時点で確認した内容です。提供回線・プラン・提供条件は変更される場合があります。申し込み前に必ず各社の公式サイトで最新の条件をご確認ください。