災害で通信が途切れる原因は、基地局の障害だけではありません。端末そのものが壊れる・水没する・落として画面が割れるというほうが、実際には起こりやすい失敗です。
そのときに効くのが「引き出しの古いスマホにSIMを挿し替える」という手ですが、これはぶっつけ本番だと失敗することがあります。挿し替えたのに圏外のまま、という状態は災害下では致命的です。
先に結論をまとめます。
- 確認すべきは①SIMロック ②ネットワーク利用制限 ③SIMの種類の3点
- 2021年半ば以降に各社が発売した端末はSIMロックがかかっていない(基準日は会社ごとに違う)
- それ以前の端末は解除手続きが要る。手続きにはインターネットか電話が必要なので、災害後では間に合わないことがある
- 中古で買った・譲り受けた端末は、ネットワーク利用制限(△・×)がかかっていないかIMEIで確認しておく
- eSIMは物理的な挿し替えができない。再発行・転送の手続きに通信が要る
なぜ「今」確認するのか#
3つとも、確認や手続きにインターネット接続か電話が必要です。
- SIMロック解除 … オンライン(My docomo・My au・My SoftBank)か電話・店頭
- ネットワーク利用制限の照会 … 各社のWebサイト
- eSIMの再発行・転送 … オンライン手続き
つまり「メイン端末が使えなくなってから」では、手続きのための通信手段がないという順序の問題が起きます。だからこそ平常時に済ませておく必要があります。
確認1:その端末にSIMロックがかかっていないか#
SIMロックは、購入したキャリア以外のSIMを挿しても使えないようにする設定です。かかっていると、ドコモで買った端末にau回線のSIMを挿しても通信できません。
各社とも2021年に順次、SIMロックを設定しない方針へ切り替えています。基準日は会社ごとに違うので、手持ちの端末がどちら側かを確認してください。
| 購入元 | SIMロックがかかっていない機種 |
|---|---|
| ドコモ | 2021年8月27日以降に発売された機種(手続き不要) |
| au | 2021年10月1日以降に発売された機種(iPhone 13シリーズなど2021年9月24日発売分もSIMロックなし) |
| ソフトバンク | 2021年6月以降に発売された機種。ただしXperia 1 III は除く |
いずれも各社の公式ページに明記されている内容です。ソフトバンクのXperia 1 IIIのように時期の条件から外れる例外機種があるので、機種名まで含めて確認するのが確実です。
それ以前の端末は「今のうちに」解除する#
基準日より前の端末は、解除手続きをすれば他社のSIMで使えるようになります。手数料は各社とも無料化されています。
- ドコモ:My docomo(24時間受付)、電話(ドコモの携帯から151/午前9時〜午後8時)、ドコモショップ/d garden。2023年10月1日より、すべての申込方法で無料。解約済み回線の端末はMy docomoかドコモショップのみで、電話では受け付けていません
- au:My auアプリまたはWebサイト、au Style/auショップ。au回線契約を伴わない端末(解約後・中古を含む)はIMEIが必要
- ソフトバンク:My SoftBank、ソフトバンクショップ。2023年9月13日以降、事務手数料は無料。通信契約が解約済みの場合や、製品のみ購入・中古販売店購入・譲渡品は別の手続きが案内されています
古いスマホを予備端末として置いておくなら、電源を入れて動作を確かめるついでにここまで済ませておくと安心です。予備端末そのものの準備は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめています。
確認2:ネットワーク利用制限(中古で買った・譲り受けた端末)#
中古端末には、SIMロックとは別にネットワーク利用制限という仕組みがあります。不正に契約・取得された端末や、分割払いが滞った端末の通信を制限するものです。
判定は各社の照会サイトで、IMEI(製造番号)15桁を入力して確認します。
- ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルとも、公式サイトに照会ページがあります(auは
my.au.com/rd/nwriyoseigen、ソフトバンクはct11.my.softbank.jp/WBF/icv) - 判定は「○」「△」「×」で表示されます
現時点で公式に確認できているのは次の点です。
- au:確認できるのは照会の前日時点での登録状況。デュアルSIM対応端末では「IMEI(IMEI1)」の番号で確認する。修理でIMEIが変わった場合、情報が反映されるまで確認できないことがある
- ソフトバンク:正規取扱店以外(オークションや中古市場など)で購入した端末が不正に契約・取得されたものであれば、利用制限の対象となる場合がある。そして一度実施された利用制限の解除は行わないと明記されています
「解除しない」という点が重要です。中古端末を予備として持つなら、買った直後に照会しておくのが唯一の防衛策になります。
IMEIの調べ方#
- 電話の発信画面で
*#06#を入力すると表示されます(機種によっては表示されないことがあります) - 端末の設定メニューの「機種情報」などからも確認できます
- 購入時の箱の側面や裏面、機種によっては本体の刻印やシールにも記載があります
なお、譲り受けたiPhoneでは、前の持ち主のApple Accountに紐づいたままだと初期設定を進められない場合があります(アクティベーションロック)。譲り受ける時点で、前の持ち主が端末を消去してサインアウトしているかを確認してください。
確認3:SIMの種類(物理SIMかeSIMか)#
ここが見落とされがちです。そもそも「挿し替える」ができるのは物理SIMだけです。
- 物理SIM:メイン端末から抜いて予備端末に挿せば、その場で使える可能性がある。ただしSIMピン(取り出し用の細いピン)が必要
- eSIM:端末に書き込まれているため物理的に移せない。再発行や転送の手続きが必要で、その手続きにインターネット接続が要る
つまりeSIMだけで運用していると、「メイン端末が壊れた → 予備端末に移したい → 移すための通信手段がない」という詰み方をします。この違いは災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?で詳しく整理しています。
物理SIMの場合も、SIMカードのサイズが予備端末のトレイに合うかは確認しておいてください。古い端末はSIMトレイの規格が今のものと違うことがあります。SIMピンは予備端末と一緒に保管しておくと確実です(クリップで代用できることもありますが、当てにしないほうが無難です)。
つながるかは「バンド」でも決まる#
SIMロックが外れていて、利用制限もなく、SIMが物理的に挿さったとしても、端末が回線の電波(対応バンド)に対応していなければ、つながりにくい・場所によっては圏外になります。特に古い端末や海外モデルで起きやすい問題です。
対応バンドの確認方法は山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?にまとめました。また、契約中の格安SIMがどの回線網を使っているかは格安SIMの「回線元」一覧で確認できます。
もうひとつ、その端末がVoLTEに対応しているかも確認が必要です。2026年3月31日のドコモFOMA終了で3社の3Gがすべて終了したため、4G対応でもVoLTE非対応の端末は音声通話ができません。詳しくは災害用の予備スマホ、3G停波後も使える?にまとめています。
事前チェックリスト#
- 予備にする端末の発売時期を調べ、上の表でSIMロックの有無を確認した
- SIMロックがかかっていた場合、解除手続きを済ませた
- 中古・譲渡の端末なら、IMEIでネットワーク利用制限を照会した
- iPhoneを譲り受けた場合、前の持ち主のサインアウト・消去が済んでいる
- メイン回線が物理SIMかeSIMかを把握している
- 物理SIMならSIMピンを予備端末と一緒に保管した
- 予備端末が、使いたい回線の対応バンドに合っているか確認した
- 一度だけでいいので、実際にSIMを挿し替えて通信できるか試した
最後の項目が一番効きます。表と手順で「大丈夫なはず」と判断するより、平常時に1回試しておくほうが確実です。試したときに電波は入っているのにインターネットだけつながらないなら、原因はAPN設定であることが多く、その設定値は事前に控えておかないと圏外では調べられません。控える項目は格安SIMの「APN設定」を災害前に控えておくに整理しました。また、SIMにSIM PINを設定していると、挿し替えた時点でPINの入力を求められます。3回間違えるとロックがかかるので、PINと解除用のPUKコードの控え方はSIMの「PINロック」で予備スマホが使えなくなる?を確認してください。
まとめ#
- 端末が壊れたときの備えは、SIMロック・ネットワーク利用制限・SIMの種類の3点で決まる
- 各社の基準日(ドコモ2021年8月27日/au2021年10月1日/ソフトバンク2021年6月)より前の端末は、解除手続きを平常時に済ませる
- 中古端末は買った直後にIMEIで照会する。実施された利用制限は解除されない
- eSIMのみの運用は、端末故障時に手続き用の通信手段がないという弱点がある
- 確認も手続きも通信が要るので、災害後では間に合わない
端末を失ったときにまずやることは災害でスマホをなくしたら、まず回線を止めるに、水没させてしまったときの対処はスマホが水没したら、まず充電しないにまとめています。