災害に備えて予備のスマホを用意している人は少なくありません。ところが、いざメイン端末が壊れて予備端末にSIMを差し替えたとき、アンテナは立っているのにインターネットだけつながらないということが起こります。原因の多くは、APN設定が済んでいないことです。

そして問題は、APN設定のやり方も、設定値そのものも、調べるにはネット接続が要るという点にあります。圏外の場所で、通信できない端末を手に持ったまま「APN設定 mineo」と検索することはできません。

この記事では、APN設定が必要になる場面を公式情報で確認したうえで、平常時のうちに何を控えておけばいいかを整理します。

結論#

  • APNは、端末がデータ通信をするときの接続先を指定する情報。設定されていないと、電波は入っていてもデータ通信ができない
  • SIMを別の端末に差し替えたとき・eSIMを再発行したときは、APN設定が必要になり得る(IIJmioが必要なケースとして明記)
  • iPhoneの構成プロファイルは、インストールに「Wi-Fiなどのネットワーク環境が必要」(mineoが明記)。圏外では入れられない
  • Androidの手動設定は、Wi-FiをOFFにした状態で行う必要がある(mineoが明記)
  • だから、設定値と手順は平常時に紙かオフラインで控えておく。控えるのは数行で済む

そもそもAPNとは#

mineoは、APNを次のように説明しています。

APNとは、「Access Point Name」の略で、スマートフォンなどでデータ通信を行うために必要なインターネットへの接続を指定する識別子

IIJmioの解説では、より噛み砕いて「端末が携帯電話会社の回線を通じてインターネットへ接続する際の『入口』を示す情報」とされています。

大事なのは、これが端末側に持たせる設定であるということです。SIMカードを挿しただけ、eSIMを開通しただけでは足りず、端末が「どこにつなぎに行くか」を知っている必要があります。だから端末を替えると、設定もついてこないのです。

回線そのものが生きているかどうかの切り分けは通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめました。電波表示は出ているのにデータ通信だけできないときは、障害ではなくAPNを疑う場面です。

APN設定が必要になるのはどんなときか#

IIJmioは、APN設定が必要になるケースとして次を挙げています。

  • 格安SIMを契約したとき
  • SIMフリースマホや中古スマホにSIMカードを差し替えたとき
  • 海外SIMを使うとき
  • 設定が何らかの原因でリセットされたとき
  • eSIMの再発行をするとき

このうち、災害時に現実的に起こるのは2番目と5番目です。

起きることAPN設定が必要になる理由
メイン端末が壊れ、予備端末にSIMを差し替える予備端末側にAPNの設定がない
端末を紛失・水没させ、eSIMを再発行する再発行後の端末で改めて設定が要る
何かの拍子にネットワーク設定をリセットした入れていた設定が消える

端末が水に落ちたときの初動はスマホが水没したときの対処に、なくしたときの回線停止と再発行の流れはスマホを紛失したときの回線停止に整理しています。どちらの記事の先にも、新しい端末でAPNをどうするかという工程が待っています。

なお、予備端末にSIMを挿して使えるかどうかは、APN以前にSIMロック・ネットワーク利用制限・SIMの形状でも決まります。この3点は予備のスマホに自分のSIMを挿して使える?にまとめました。

いちばんの落とし穴:調べるのにネットが要る#

ここがこの記事の本題です。

iPhoneの場合:構成プロファイルの入手にネットが要る#

多くの格安SIMでは、iPhoneのAPN設定は「APN構成プロファイル」というファイルをインストールして行います。mineoはiOS端末のネットワーク設定ページに、はっきりこう書いています。

設定には、Wi-Fiなどのネットワーク環境が必要です。

プロファイルはSafariで各社のURLにアクセスしてダウンロードする方式で、mineoの場合はプラン別に配布URLが分かれています(ドコモプランは mineo-d1.mobileconfig、auプランは mineo-a2.mobileconfig など)。インストール自体は「設定」→「一般」→「VPNとデバイス管理」→ダウンロード済みのプロファイル→「インストール」という流れです。

つまり、圏外で、Wi-Fiもない場所では、そもそもプロファイルを手に入れられません。「予備のiPhoneを持っている」だけでは足りない、というのはこの意味です。

ただし逃げ道もあります。IIJmioは、自社アプリについて「アプリをインストールしておくことで、オフラインの状態でもアプリ経由でAPN構成プロファイルのダウンロードが可能」と案内しています(同社は同じページで、この内容を保証・サポートするものではないとも注記しています)。契約先の公式アプリを、平常時に予備端末側へ入れておくのは、それだけで意味のある備えです。

もうひとつ、mineoが注意している点があります。

複数キャリアの構成プロファイルが入っている場合、プロファイルの削除が必要となります。

中古で買った端末や、以前ほかの格安SIMで使っていた端末を予備に回している場合、古いプロファイルが残っていると新しい設定が効かないことがあります。予備端末を用意した時点で確認しておきたいところです。

Androidの場合:Wi-FiをOFFにして設定する#

Androidは設定画面から手入力します。mineoの手順は次のとおりです。

  1. 「設定」をタップ
  2. 「ネットワークとインターネット」をタップ
  3. 「インターネット」をタップ
  4. Wi-Fiを「OFF」にする
  5. モバイルのアイコンをタップ
  6. 「アクセスポイント」をタップ
  7. APN・ユーザーID・パスワード・認証タイプなどを入力して保存

mineoはこの手順に、次の注意を添えています。

ネットワーク設定(APN設定)は、Wi-Fi を OFF にした状態で行う必要があります。

設定作業中はWi-Fiを切るということは、その端末で公式サイトを見ながら入力することができない、ということでもあります。設定値は事前に控えておくか、別の端末で開いておくのが現実的です。

メニュー名は端末メーカーによって異なります。楽天モバイルの案内では「設定」→「その他」→「モバイルネットワーク」→「アクセスポイント名」→メニューから「新しいAPN」という並びで説明されており、mineoの表記とは違います。自分の予備端末での並びは、実機で一度たどっておくのがいちばん確実です。

会社ごとの設定値(公式に公開されているもの)#

各社が公式サイトで公開している設定値の例です。自分の契約先のものだけを控えれば十分です。

事業者APNユーザー名パスワード認証タイプ
mineo Dプラン(ドコモ)mineo-d.jp[email protected]mineoCHAP
mineo Aプラン(au)mineo.jp[email protected]mineoCHAP
mineo Sプラン(ソフトバンク)mineo-s.jp[email protected]mineoCHAP
日本通信SIMdm.jplat.netjci@jcijciPAPまたはCHAP
ahamo / ドコモ回線(spモード)spmode.ne.jp(記載なし)(記載なし)未設定 または なし
povo2.0povo.jp(記載なし)(記載なし)(記載なし)

補足として、mineoはAPNタイプに default,supl,ia を入力するよう案内し、一部端末では末尾に ,dun の追加が必要な場合があるとしています。NTTドコモは他社製品でspモードを使う場合、APNプロトコルを「IPv4/IPv6」に設定するよう案内しています。

日本通信SIMは、入力時の注意としてこう書いています。

すべて半角で入力してください

あわせて「ドットとカンマをお間違えないように」とも案内しています。紙に書き写すときは、この2点がそのまま事故のもとになります。dm.jplat.net の区切りはすべてドットです。

「台紙に書いてある」タイプもある#

楽天モバイルのAndroid向けAPN設定ページでは、ユーザ名・パスワードが「SIMカード台紙に記載」とされ、APN情報の確認先として「SIMカードが添付されていた台紙」の左側上部が案内されています。

つまり事業者によっては、設定値が公式サイト上ではなく手元の台紙にしかないことがあります。SIMの台紙を捨ててしまっていると、平常時ですら調べ直しに手間がかかります。契約時の台紙が残っているか、この機会に確認しておくとよいでしょう。

iPhoneは「APN設定不要」のこともある#

すべての契約でAPN設定が要るわけではありません。povo2.0はFAQで、iOS15以上のiPhoneではAPN設定は不要、AndroidではAPN設定を行うよう案内しています(iOS14.5〜15未満ではキャリア設定のアップデートが必要としています)。

ここで出てくる「キャリア設定」について、Appleは次のように説明しています。

新しいeSIMを設定した場合や新しいSIMカードを挿入した場合は、その新しい通信事業者に対応したキャリア設定を適宜ダウンロードする必要があります

現在のバージョンは「設定」→「一般」→「情報」を開くと、「キャリア」の横に表示されます。このダウンロードにも通信が必要ですから、構造としては構成プロファイルと同じ問題を抱えています。

一方、ahamoはAndroidでAPNを spmode.ne.jp に設定するよう案内し、iPhoneについてはプロファイルのダウンロードと設定を求めています。「キャリア系だから何もしなくていい」とは限らないということです。契約先がどの回線を使っているかについては格安SIMの「回線元」一覧を、ahamoの災害時の対応状況についてはahamoは災害時に強い?を参照してください。

何を、どう控えるか#

控える内容は多くありません。A5の紙1枚、あるいは端末内のオフラインで読めるメモで足ります。

【契約先】
 事業者名:
 プラン名(ドコモ回線/au回線/ソフトバンク回線):
 契約者名・電話番号:

【APN設定値】※公式サイトの表記どおり・すべて半角
 APN:
 ユーザー名:
 パスワード:
 認証タイプ:
 APNタイプ/APNプロトコル:

【iPhoneの場合】
 構成プロファイルの配布URL:
 ※インストールにはWi-Fi等のネットワークが必要

【Androidの場合】
 自分の端末での設定メニューの並び:
 設定 →     →     → アクセスポイント名

【サポート窓口】
 電話番号:
 受付時間:

置き場所は、スマホの中だけにしないことが肝心です。防災リュック、財布、家族と共有している紙の連絡カードなど、端末が使えない状態でも見られる場所に置きます。紙の連絡カードの作り方は家族の安否確認ルールの決め方に、通信が細ったときに端末内で開ける形にしておく考え方はオフライン地図の備えに整理しました。

同じ発想で、契約先の公式アプリを予備端末に入れておくのも有効です。前述のとおりIIJmioはアプリ経由のオフラインダウンロードに触れていますし、アプリがあれば契約内容の確認先も1つ増えます。

一度は実際に試しておく#

備えとしていちばん効くのは、平常時に一度、実際に差し替えて通信できるところまで確認することです。

このとき確認できることは3つあります。

  1. APN設定がそもそも必要な端末か(自動で入る端末もある)
  2. 必要な場合、設定メニューがどこにあるか
  3. 入力後、実際にデータ通信ができるか

povo2.0のFAQは、設定が要るかどうかの目安として、電波表示の横に「4G」「5G」が出ているか、Wi-Fiを切った状態でデータ通信ができるかを挙げています。Wi-FiをOFFにしてWebページが開けば、その端末では設定できていると判断できます。

予備端末そのものの選び方・準備は古いスマホを予備端末として活用するに、サブ回線をeSIMと物理SIMのどちらで持つかは災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?にまとめています。eSIMは再発行で移し替える都合上、APN設定にも触れる機会が多い方式です。

今日できるチェックリスト#

  • 契約先の公式サイトで、自分のプランのAPN設定値を確認した
  • 設定値を紙(またはオフラインで読めるメモ)に控えた
  • 控えをスマホ以外の場所(防災リュック・財布など)に置いた
  • iPhoneなら、構成プロファイルの配布URLも控えた
  • 契約先の公式アプリを予備端末に入れた
  • 予備端末で、APN設定メニューの場所を一度たどった
  • 予備端末に古い事業者の構成プロファイルが残っていないか確認した
  • SIMカードの台紙が手元に残っているか確認した
  • 一度実際に差し替えて、Wi-Fi OFFでWebページが開くところまで確認した

まとめ#

  • APNは端末側に持たせる設定。SIMを別の端末に移すと、設定はついてこない
  • IIJmioは、SIM差し替え時とeSIM再発行時をAPN設定が必要なケースとして挙げている
  • iPhoneの構成プロファイルは「Wi-Fiなどのネットワーク環境が必要」(mineo)。圏外では入手できない
  • Androidの設定はWi-Fi OFFで行う(mineo)。その端末で公式サイトを見ながらの入力はできない
  • povo2.0はiOS15以上ならAPN設定不要としており、契約と端末によって要否が変わる
  • だから、設定値・プロファイルURL・メニューの場所を平常時に控えておく。紙1枚で足りる

災害時の通信の備えというと、サブ回線やモバイルバッテリーに目が向きがちです。しかし「予備端末はあるのに、つなぐための数行が分からない」という止まり方は、あらかじめ紙に書いておくだけで避けられます。手段そのものの一覧は災害時の連絡手段まとめに整理しました。