災害や通信障害でスマホがつながらなくなったとき、意外と困るのが地図です。避難所までの道、迂回路、帰宅ルート——ふだんは地図アプリで解決していることが、圏外になった瞬間に使えなくなります。

先に結論です。

  • 地図アプリは事前にダウンロードしておかないと、オフラインでは満足に使えない
  • Googleマップのオフライン地図では、徒歩・自転車・公共交通機関の経路が表示できない(車のナビは可)
  • Appleのマップは、オフラインでも車・徒歩・自転車・交通機関のターンバイターン経路が使えると案内されている
  • どちらも一部の国や地域では利用できないと明記されているため、平常時に実際に落として動作を確かめておく

「災害時に調べればいい」が通用しない類の備えなので、今日のうちに落としておく話です。

なぜオフライン地図が要るのか

Googleは公式のAndroid Magazineで、オフライン地図がない状態での表示について次のように説明しています。

通常のオフライン環境では、Google マップの表示は左の画像のように、地形や道路などが簡略化された地図になります。

つまりまったく映らないわけではないが、実用にならない粗さになるということです。そのうえで、ダウンロードした範囲であれば目的地の検索や住所の表示、自動車のナビ機能が使えると案内されています。

そして重要な点として、Googleは次のように書いています。

GPS は、ネットワーク環境がなくても動作するため、インターネット接続が遅かったり利用できなかったりする場合でも、ルート全体がオフライン マップ内にあれば、そのオフライン マップで目的地までの案内を受けることができます。

現在地の測位そのものは通信がなくてもできるので、足りないのは「地図データ」だけ、という構図です。だからこそ事前ダウンロードが効きます。

災害時にはこれが3通りの場面で効きます。

場面オフライン地図があると
基地局が停止して圏外現在地と周辺の道路が読める
通信は生きているが混雑している地図の読み込み待ちが発生しない
データ量を節約したい地図の通信をほぼ使わずに済む

3つ目は格安SIMユーザーにとって地味に大きい点です。小容量プランで契約している場合、災害時の情報収集で地図を開き続けるとデータを消費します。

Googleマップのオフライン地図

ダウンロードの手順

Googleマップ ヘルプでは、インターネットに接続している状態でGoogleマップにログインしていることが前提として案内されています(シークレットモード中はダウンロードできません)。

範囲を自分で指定する場合の手順は次のとおりです。

  1. Googleマップアプリを開く
  2. プロフィール写真またはイニシャル →「オフライン マップ」をタップ
  3. 「自分の地図を選択」をタップ
  4. ダウンロードするエリアに合わせて地図を調整する
  5. 「ダウンロード」をタップ

場所を検索してから落とすこともできます。ヘルプでは「名古屋」を例に、プレイスシートを右にスワイプ →「もっと見る」→「オフライン マップをダウンロード」→「ダウンロード」と案内されています。

範囲は広いほどダウンロードサイズが大きくなるため、まずは自宅・職場・学校・実家といった生活圏から始めるのが現実的です。

オフラインでできること・できないこと

Googleが公式に整理している内容です。

内容
使える現在地の表示/ダウンロード範囲の車のナビ機能/ダウンロード範囲の施設・住所の検索/施設の概要(住所、営業時間、電話番号など)
使えない徒歩・自転車・公共交通機関の経路/リアルタイム交通情報/代替ルートの表示/施設の詳細情報(写真、クチコミ、最新情報など)

災害時の観点でいちばん効いてくるのが、徒歩の経路が出せないという点です。道路が寸断されたり、車を使えなかったりする状況では徒歩移動が前提になりますが、そこはオフラインでは案内してもらえません。地図そのものは読めるので「自分で道を見て判断する」ことになります。

有効期限と自動更新

落としっぱなしにできない点にも注意が要ります。ヘルプには次のように書かれています。

スマートフォンまたはタブレットにダウンロードしたオフライン マップは、有効期限が切れる前に更新する必要があります。

オフライン マップの有効期限が 15 日以内にせまると、Wi-Fi ネットワーク接続時に自動的に更新が試みられます。

自動更新はWi-Fi接続が前提なので、ふだん自宅にWi-Fiがない運用の人は、期限切れに気づかないまま放置される可能性があります。オフラインマップの一覧に期日が表示されるので、たまに開いて確認しておくと安全です。

保存先とデータ節約の設定

  • 保存先:「オフライン マップは、デフォルトではデバイスの内部ストレージにダウンロードされますが、SD カードにダウンロードすることもできます」。ただし「Android 6.0 以上のデバイスをお使いの場合は、ポータブル ストレージ用に設定された SD カードにのみエリアを保存できます」とされています。保存先を変えるには地図をダウンロードし直す必要がある点に注意してください。
  • 通信の節約:設定から「Wi-Fi のみ」を有効にすると、モバイルデータ通信量やバッテリーの節約になるとGoogleは案内しています(プロフィール写真 → 設定アイコン →「Wi-Fi のみ」)。ダウンロードの設定を「Wi-Fi 経由のみ」にしておけば、更新でモバイル通信を消費することも防げます。

Appleのマップのオフライン地図

iPhoneのマップアプリにも同じ機能があります。できることの範囲がGoogleマップと違うので、iPhoneユーザーはこちらを押さえておくと選択肢が増えます。

オフラインでできること

Appleのユーザガイドには次のように書かれています。

Wi-Fiやモバイルデータ通信サービスにアクセスできない場合でも、営業時間や評価などの情報を場所カードで確認したり、車、徒歩、自転車、交通機関を利用した場合のターンバイターンの経路を確認したり、到着予定時刻を確認したりすることができます。

徒歩と交通機関の経路がオフラインでも使えると明記されている点が、Googleマップとの大きな違いです。災害時に徒歩移動が前提になることを考えると、iPhoneを使っているならGoogleマップだけでなくマップアプリ側にも落としておく価値があります。

なおAppleも「オフラインマップは、一部の国や地域ではご利用いただけません」と注記しています。使えるつもりで備えず、実際に落として確かめるのが確実です。

ダウンロードの手順

  1. iPhoneでマップアプリを開く
  2. ピンのマーカーが表示されるまで地図をタッチしたままにして「ダウンロード」をタップ (または検索フィールド横の写真・イニシャル →「オフラインマップ」→ 場所を入力するか「現在地」をタップ)
  3. 選択された領域を調整して「ダウンロード」をタップ

Appleも「ダウンロードするマップのサイズを小さくしたい場合は、小さめの領域を選択します」と案内しています。

「ストレージを最適化」に注意

マップアプリの「オフラインマップ」画面では、次の設定を変更できます。

設定内容
Wi-Fiのみ / Wi-Fi + モバイル通信ダウンロードに使う回線を選ぶ
自動アップデートすべてのマップを自動的にアップデートする(デフォルトでオン
ストレージを最適化非使用のマップを自動的に削除する
オフラインマップのみを使用オフにするとオンラインマップを使う

災害の備えという観点では、「ストレージを最適化」の扱いに注意が要ります。Appleはこの設定を「非使用のマップを自動的に削除する」ものと説明しています。ふだん使わない地元の地図を災害用に落としてある場合、まさに「非使用のマップ」に該当し得ます。残しておきたい地図があるならオンにしないという判断になります。

また、格安SIMの小容量プランを使っているなら、ダウンロード設定は**「Wi-Fiのみ」のまま**にしておくのが無難です。地図データは範囲によってはそれなりのサイズになります。

落としておく範囲の決め方

「日本全体を落とす」といった使い方は現実的ではありません。範囲が広いほどサイズが増えるので、移動する可能性がある場所に絞ります。

  • 自宅の周辺(避難所までの経路が入る広さ)
  • 職場・学校の周辺(帰宅ルートを含む)
  • 実家・よく行く親族の家の周辺
  • 帰省や旅行の予定があるならその土地

とくに抜けやすいのが職場・学校まわりです。自宅周辺は土地勘があるぶん、むしろ地図が要るのは出先のほうだったりします。

地図アプリだけでは足りないもの

オフライン地図に入るのは、あくまで一般の地図データです。災害用の情報は別枠で用意しておく必要があります。

避難所とハザードマップ

国土交通省と国土地理院が運営するハザードマップポータルサイトでは、「重ねるハザードマップ」(洪水・土砂災害・高潮・津波などのリスク情報)と「わがまちハザードマップ」(市町村が作成したハザードマップへのリンク)を確認できます。

これらはWebサイトなので、圏外になれば当然開けません。平常時に見て、自宅・職場の危険度と最寄りの避難所を確認し、スクリーンショットで端末に保存しておくのが実務的です。画像なら通信なしで見られます。

紙に印刷して財布や防災バッグに入れておくのも有効です。端末の電池が切れた時点で、デジタルの備えはすべて無効になります。

家族の集合場所

地図が読めても、どこで落ち合うかを決めていなければ動けません。安否確認の手段と集合場所は、災害時の連絡手段まとめ携帯4社の災害用伝言板の使い方を参考に、事前に決めておいてください。

電池との兼ね合い

地図とGPSは電池を消費します。オフライン地図は通信を使わないぶん有利ですが、画面を点けっぱなしにすれば当然減ります。

注意したいのが省電力モードとの関係です。iPhoneの低電力モードやAndroidのバッテリーセーバーは有効な手段ですが、オンにすると止まる機能があります。何が止まるのかは災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定にまとめました。

データ容量との兼ね合いもあります。オフライン地図を落としておけば地図の表示に通信は要りませんが、ほかのアプリが裏で通信していれば容量は減ります。iPhoneの省データモードとAndroidのデータセーバーの設定手順は災害時にデータ容量が尽きたら?にまとめています(省電力の設定とは別物なので、両方を確認しておいてください)。

電源そのものの備えは災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?を、モバイルバッテリーを使い切ったあとの手段は停電中にスマホをどう充電する?を参照してください。

なお、使っていない古いスマホを予備端末として残している場合、そちらにもオフライン地図を落としておくと**「電池が切れた端末の代わり」**として機能します。予備端末の作り方は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめています。

今日やっておくチェックリスト

  • Googleマップで自宅周辺のオフライン地図をダウンロードした
  • (iPhoneなら)マップアプリでも同じ範囲をダウンロードした
  • 職場・学校の周辺も落とした
  • ダウンロードの設定を「Wi-Fiのみ」にした
  • (iPhone)「ストレージを最適化」の状態を確認した
  • 有効期限を確認する日を決めた(半年に1回など)
  • ハザードマップと避難所の位置をスクリーンショットで保存した
  • 機内モードにして、実際に地図が表示されるか試した

最後の項目が重要です。機内モードで試せば、圏外の状態を再現できます。落としたつもりで落ちていなかった、というのはよくある話なので、一度は確認しておいてください。

まとめ

  • 地図アプリは事前ダウンロードが前提。圏外では簡略化された地図しか出ない
  • GPSは通信がなくても動くので、足りないのは地図データだけ
  • Googleマップは徒歩・自転車・交通機関の経路がオフラインでは出せない。車のナビは可
  • Appleのマップは車・徒歩・自転車・交通機関のターンバイターン経路がオフラインでも使えると案内されている
  • Googleマップの地図には有効期限があり、更新はWi-Fi接続時に試みられる
  • iPhoneの**「ストレージを最適化」は非使用のマップを自動削除**する。災害用に残したいならオンにしない
  • 両社とも一部の国や地域では利用できないと明記。実機で確認しておく
  • 避難所・ハザードマップは地図アプリに入らない。スクリーンショットか紙で持つ

圏外になってから困る典型が地図です。ただ、そもそも圏外になる原因が端末側の設定や対応バンドにあるケースもあります。つながらない理由の切り分けは通信障害かも?と思ったらまず確認すること山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?を、そもそも圏外になりにくくするための2本目の回線についてはpovo2.0を災害用のサブ回線にするをご覧ください。


この記事の情報について:本記事は、Google マップ ヘルプ「Google マップでエリアをダウンロードしてオフラインでナビを使う」(Android版・iPhone/iPad版)、Google「Android Magazine|Google マップはオフラインでも快適! 旅行先や電波のない場所で便利なオフライン マップの使い方」(2025年8月7日公開、Google Pixel 8/Android 15で検証と記載)、Apple サポート「iPhoneにオフラインマップをダウンロードする」(iPhoneユーザガイド)、国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」の各公式情報をもとに、2026年8月9日時点で確認した内容です。アプリの画面構成・設定項目名・提供機能は、OSやアプリのバージョン、お使いの国や地域によって異なる場合があります。実際の操作にあたっては、各社の最新の公式ヘルプをご確認ください。