モバイルバッテリーを備えていても、停電が数日続けばいずれ使い切ります。その次の手段としてよく候補に挙がるのがポータブル電源です。

ただし数万円する買い物なので、「本当に必要なのか」「何を基準に選ぶのか」で迷いやすいところです。しかもカタログには mAh・Wh・W と単位の違う数字が並んでいて、比較しづらくなっています。

先に結論をまとめます。

  • 通信を維持するだけが目的なら、まずモバイルバッテリーを複数持つ案で足りないかを先に検討する
  • 容量は Wh(ワットアワー) で比較する。mAh表示だけでは製品どうしを比べられない
  • 「その機器が動くかどうか」は容量ではなく**定格出力(W)**で決まる。容量とは別の指標
  • 容量と同じくらい重要なのがリコール情報を追える製品かどうか。NITEは事故防止の第一に「賢く選ぶ」を挙げている
  • 多くのポータブル電源は飛行機には持ち込めない(機内持込は160Wh以下まで)

順に見ていきます。

その前に:本当にポータブル電源が要るか

スマホの通信を維持するだけが目的なら、モバイルバッテリーを人数分+予備で持つほうが安く、軽く、持ち出しやすいです。必要量の計算方法は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?にまとめました。まずそちらで自分の必要量を出してから、この記事に戻ってくるのが順序としては正しいと思います。

そのうえで、ポータブル電源が効いてくるのは次のような場合です。

  • 家族の複数台を、何日にもわたって充電し続けたい
  • ノートPCなど、USB充電だけでは足りない機器を使う必要がある
  • テザリングで1本の回線を家族に配る構成をとっていて、親機に電池の消耗が集中する災害時に1本の回線を家族で分け合う
  • 停電が数日単位で続く前提で考えている

逆に、避難所まで徒歩で持ち出す想定だと重量が問題になります。「在宅避難で使う据え置きの機材」と割り切るほうが、選ぶ基準がはっきりします。

なお、買い足す前にやっておくべきことがもう一つあります。端末側の消費を減らすことです。設定だけで減らせる分は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定にまとめました。こちらは0円でできます。

容量は「Wh」で見る

ポータブル電源のカタログでは、容量が Wh(ワットアワー) で書かれているのが一般的です。モバイルバッテリーでよく使われる mAh とは別の単位です。

換算はこうなります。

Wh = 電池容量(mAh) × 電圧(V) ÷ 1000

mAh だけでは比較できないのは、内部の電圧が製品ごとに違うためです。同じ mAh でも電圧が違えば、取り出せるエネルギーの総量は変わります。だから Wh で見ます。

自分のスマホ側も Wh に直しておくと、規模感がつかめます。たとえば端末の電池が 5,000mAh、電圧が 3.85V だとすると、次のようになります。

5,000 × 3.85 ÷ 1000 = 約19Wh

電圧は端末の仕様ページやバッテリーの表記で確認できます。手持ちの端末の mAh の調べ方は、モバイルバッテリーの記事の「まず自分のスマホの容量を調べる」で解説しています。

表示容量がまるごと使えるわけではない

ここは重要です。ポータブル電源の表示 Wh を、スマホ1回分の Wh で単純に割った回数は、実際より多く出ます。充電の過程で変換のロスが発生するためです。

特にポータブル電源の場合、どの出口から取るかでロスの大きさが変わります。コンセント(AC出力)は、内部の直流を交流に変換して出しています。そこにスマホの充電器を挿すと、充電器が交流を再び直流に戻します。変換が二重になる構造です。

そのため、USB出力が付いているならそちらから直接充電するほうが無駄が少なくなります。スマホやモバイルバッテリーの充電が主目的なら、USBポートの数と規格を確認しておくとよいと思います。

「動かせるかどうか」は出力(W)で決まる

ここを混同すると買い物を失敗します。容量(Wh)と定格出力(W)は別の指標です。

  • 容量(Wh) … どれだけ長く使えるか
  • 定格出力(W) … そもそもその機器を動かせるか

容量が大きくても、定格出力が足りなければその機器は動きません。逆に出力が足りていても、容量が小さければすぐ空になります。

確認する手順は次のとおりです。

  1. 動かしたい機器の消費電力(W)を、本体の定格ラベルか取扱説明書で確認する
  2. ポータブル電源の定格出力(W)がそれを上回っているかを見る
  3. 複数の機器を同時に使うなら、合計のWで考える

消費電力は機器によって大きく違うので、「たぶんこのくらい」で見積もらず、必ず実物のラベルを見てください。スマホの充電器やノートPCのACアダプタには、出力のW数が書かれています。

なお、モーターやコンプレッサーを持つ機器(扇風機、冷蔵庫など)は、動き始めるときに定格より大きな電力が必要になることがあります。カタログに「瞬間最大出力」や「サージ出力」が併記されているのは、この余力を示すためです。定格ぎりぎりの選び方は避けたほうが無難です。

通信機器を動かす場合の注意

光回線のONUやWi-Fiルーターは、消費電力が比較的小さい部類の機器です。ただし、手元の機器に電気を供給できても、回線設備の側が停電で止まっていれば通信はできません。この点は停電中にスマホをどう充電する?の「停電しても回線は生きていることがある」で整理しています。

「ポータブル電源があれば自宅の通信は維持できる」とは限らない、という前提で考えてください。回線そのものが落ちている可能性を切り分ける手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめました。

安全性:NITEが挙げる「3つのC」

製品評価技術基盤機構(NITE)は2026年7月15日の発表で、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故が2,140件あったとしています。製品別ではモバイルバッテリーが最も多く発生しています。

そして事故は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加し、8月にピークを迎えるとされています。

NITEは事故を防ぐポイントとして「3つのC」を挙げています。

内容
賢く選ぶ(Cool Choice)「購入前に、販売事業者の連絡先や製品情報、リコール情報を確認する」「表示マークが適切か確認する」
丁寧に使う(Careful use)「高温となる場所では使用・保管しない」「強い衝撃や圧力を加えない」「異常を感じた場合は使用を中止する」
正しく捨てる(Correct disposal with better recycling)「家電製品を廃棄する際はリチウムイオン電池の使用の有無を確認する」「メーカー回収や自治体の回収区分等の廃棄方法を確認する」

ポータブル電源に固有のリスク

NITEはポータブル電源について、単体の電池製品とは違う注意点を挙げています。

ポータブル電源には、可燃性の電解液を含むリチウムイオン電池が複数個入っていて、一度発火すると複数個の電池が次々に発火して大きな火災につながるおそれがあります

電池が複数入っている分、発火したときの規模が大きくなりうるという指摘です。ここはモバイルバッテリーとの大きな違いなので、置き場所を決めるときに意識しておく価値があります。

「高温となる場所では使用・保管しない」という原則と合わせると、車内に積みっぱなしにするのは避けるべきということになります。車中泊や車からの給電を想定して買う人ほど陥りやすいので注意してください。車からの給電については停電中にスマホをどう充電する?で別途解説しています。

買う前と買ったあとに、リコールを確認する

NITEはリコール対象製品について、**「異常が認められなくても直ちに使用を中止」**するよう求めています。異常が出てからでは遅い、という考え方です。

確認できる公的な窓口は次の2つです。

窓口運営内容
SAFE-Lite製品評価技術基盤機構(NITE)製品事故情報とリコール情報を検索できる
リコール情報サイト消費者庁回収・無償修理等の情報を分野別に検索できる

購入前に候補の製品名・メーカー名で一度検索しておくこと、そして買ったあとも定期的に確認することの両方が必要です。NITEが挙げる「賢く選ぶ」に、販売事業者の連絡先の確認が含まれているのは、何かあったときに連絡が取れない事業者だと対応してもらえないためです。

メーカーによっては製品登録をしておくと通知が届く仕組みを用意している場合があります。購入時に案内があれば登録しておくと、確認の手間が減ります。

表示マークの確認について

NITEは「表示マークが適切か確認する」としています。

モバイルバッテリー(ポータブルリチウムイオン蓄電池)については、電気用品安全法にもとづくPSEマークの表示が必要で、表示のない製品は販売できません。この点はモバイルバッテリーの記事で解説しています。

現時点で確実に言えるのは、購入前に表示を確認し、確認できない製品は候補から外すという判断基準を持っておくことです。

買ったあとの運用:半年に1回、点検の日を決める

ポータブル電源は、買った時点では備えとして完成していません。いざというときに空だったというのが最も多い失敗です。

  • 保管場所:高温になる場所を避ける(車内、直射日光の当たる窓際など)
  • 残量の維持:長期保管時の推奨残量は製品によって違うため、取扱説明書の指示に従う
  • 点検の頻度:半年に1回、残量と外観(膨らみ・変形がないか)を確認する

点検日は、他の備えとまとめて同じ日に行うと続きます。たとえば次の3つは同じタイミングで管理できます。

  1. ポータブル電源の残量確認
  2. 予備回線(povo2.0)の180日ごとのトッピング購入(povo2.0を災害用のサブ回線に
  3. 予備端末の充電(古いスマホを災害用の予備端末にする方法

カレンダーに繰り返しの予定として登録してしまうのが、いちばん確実です。

持ち出しの制約:飛行機には基本的に持ち込めない

国土交通省のルールでは、2026年4月24日から機内持込みのモバイルバッテリーは160Wh以下のものに限り2個までとされ、預け入れ荷物に入れることは禁止されています。

多くのポータブル電源は160Whを大きく超えます。つまり、機内持込みの条件を満たさず、預け入れもできないことになります。帰省先や旅行先に持って行く前提では考えないほうがよいでしょう。詳しいルールは災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?にまとめています。

車で移動する場合は持ち運べますが、前述のとおり車内に置きっぱなしにしない運用が前提になります。

買う前のチェックリスト

  • モバイルバッテリーの複数持ちで足りないか、先に検討した
  • 家族の端末の合計必要量を Wh で概算した
  • 動かしたい機器の消費電力(W)を、実物のラベルで確認した
  • 定格出力が、それを余裕をもって上回る製品を選んだ
  • USB出力の数と規格を確認した(スマホ充電が主目的なら重要)
  • 候補製品をSAFE-Lite・消費者庁リコール情報サイトで検索した
  • 販売事業者の連絡先が確認できる製品を選んだ
  • 高温にならない保管場所を決めた
  • 半年ごとの点検日をカレンダーに登録した

まとめ

  • 容量は Wh、動かせるかどうかは 定格出力(W)2つは別の指標
  • 表示容量がまるごと使えるわけではない。AC出力よりUSB出力のほうが変換の無駄が少ない
  • NITEによると、リチウムイオン電池搭載製品の事故は2021〜2025年の5年間で2,140件8月がピーク
  • ポータブル電源は電池が複数入っているため、発火したときの規模が大きくなりうる
  • 買う前も買ったあともリコール情報を確認する。異常がなくても対象なら使用中止
  • 半年に1回の点検日を、サブ回線や予備端末の管理とまとめて決めておく

なお、「停電中もルーターを動かして自宅Wi-Fiを維持したい」という目的で検討する場合は、先に停電すると自宅のWi-Fiと固定電話は止まるを読んでおくことをおすすめします。NTT西日本は、自宅が停電していなくても通信会社側の設備が停電していればサービスを利用できないことがあると案内しており、宅内機器を生かしても通信できるとは限らないためです。

ポータブル電源は「通信の備え」の最後のピースであって、最初に買うものではありません。まずは災害時の連絡手段まとめで0円でできる備えを一通り済ませ、次にモバイルバッテリーの容量を確保し、それでも足りない場合に検討する——という順番をおすすめします。


この記事の情報について:本記事は製品評価技術基盤機構(NITE)の報道発表(令和8年7月15日「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を ~『リチウムイオン電池搭載製品』は3つのCで事故を防ぎましょう!~」)、NITEの注意喚起「ポータブル電源『1.リコール製品に注意』」、NITE SAFE-Lite、消費者庁リコール情報サイト、および国土交通省の報道発表(令和8年4月14日「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」)の各情報をもとに、2026年8月8日時点で確認した内容です。製品仕様・規制・各社の取扱いは変更される場合があります。購入前には必ず最新の公式情報と、製品の取扱説明書をご確認ください。