災害時の備えとしてモバイルバッテリーを用意しても、スマホ本体が温度の範囲外に置かれていると、電気があっても動きません。冬の停電した室内、車中泊の車内、真夏の避難所は、いずれもその範囲を外れうる環境です。

AppleもGoogleも、動作温度として同じ0〜35℃という数値を公式に書いています。ここを外れたときに何が起きるかは、両社とも具体的に明記しています。

先に結論をまとめます。

  • 動作温度は0〜35℃、保管温度は-20〜45℃。Apple・Googleとも同じ数値を公式に記載している
  • 寒いと残量が残っていても電源が切れることがある。ただしこれは一時的で、温度が戻れば性能も戻る
  • 寒すぎても暑すぎても充電できない。iOS 16以降は「充電保留中」という通知が出る
  • 暑いとモバイル通信の電波が弱くなるとAppleが明記している。連絡手段そのものが細る
  • 温度警告画面が出ていても、Appleは「緊急電話は発信できる場合があります」と書いている
  • 高温対策の公式手順は「電源を切る/涼しい場所に移す/下がるまで待つ」の3つだけ
  • 炎天下の車内やストーブのそばでの放置・充電は、電池工業会が明確に禁じている

動作温度は0〜35℃|Apple・Googleが同じ数値を書いている#

Appleは、iPhone・iPadについて次のように書いています。

周辺温度が0℃〜35℃の場所で使用するように設計 — Appleサポート「iPhoneやiPadが高温または低温になりすぎた場合」

保管については「-20℃〜45℃の場所に保管」とされています。Apple公式の「バッテリー - パフォーマンスの最大化」でも、iPhone・iPad・Apple Watchは「0°C〜35°Cの環境下で最も良く動作します。保管温度は−20°C〜45°C」と同じ範囲が示されています(MacBookだけは10°C〜35°Cと別扱いです)。

Googleも、Pixelの安全と規制に関するガイドで同じ範囲を書いています。

気温 0〜35°C で最適に動作します。保管の際は、気温が -20〜45°C を超えないようにしてください — Google Pixelヘルプ「Google Pixel 9a の安全と規制に関するガイド」

さらにGoogleは、使用と充電の両方について踏み込んで書いています。「周囲の温度が 0°C 未満または 35°C を超える環境で、デバイスを使用したり充電したりしないでください」という表現です。

つまり、氷点下や35℃超は「性能が落ちる」だけの話ではなく、メーカーが避けるよう明記している使い方だということになります。

寒いと何が起きるか|残量が残っていても電源が落ちる#

冬の災害でいちばん実害が出るのはこちらです。Appleは低温時の挙動を次のように書いています。

バッテリーの消耗が一時的に早くなったりデバイスの電源が切れたりする — Appleサポート「iPhoneやiPadが高温または低温になりすぎた場合」

重要なのは、これがバッテリーの故障ではないという点です。Apple公式の「バッテリー - パフォーマンスの最大化」では「温度が非常に低い環境でデバイスを使用する場合もバッテリー駆動時間が短くなることがありますが、この状態は一時的なものです」と説明されています。暖かい場所に戻せば、性能も戻ります。

ただし災害時に効いてくるのは、その「一時的」の間に連絡が取れないことです。残量50%と表示されていたスマホが屋外で突然落ちる、という形で起きます。

なお、本体バッテリーが劣化していると、この低温シャットダウンはさらに起きやすくなります。Appleは劣化したバッテリーについて、残量が少ないときや低温環境で突然のシャットダウンが起きやすくなると別途明記しています。劣化具合の確認手順は災害の備えは本体バッテリーの点検からにまとめました。冬に備えるなら、こちらを先に確認しておくほうが順序として先です。

寒すぎると充電もできない:「充電保留中」#

寒い場所では、充電そのものが止まります。iOS 16・iPadOS 16以降では、これが通知として画面に出ます。

「充電保留中。[デバイス]が通常の温度に戻ると充電は再開されます」というメッセージが表示されます — Appleサポート「iPhoneやiPadに『充電保留中』という通知が表示される場合」

Appleはこの通知が出る条件を「デバイスが高温または低温になりすぎた場合」としており、寒すぎる場合も対象です。「周囲が暑すぎたり寒すぎたりすると、iPhoneやiPadを充電できない場合があります」とも書かれています。

これは、暖房の止まった冬の室内や車中泊で、モバイルバッテリーをつないだのに残量が増えないという形で起きます。ケーブルや電源を疑う前に、通知と端末の冷たさを確認してください。Pixel側も、高温時にはバッテリー保護のため充電が一時停止し、温度が下がると再開すると公式ヘルプに記載があります。

寒さで充電が止まる可能性がある以上、停電中の充電はできるだけ暖かい場所で試すのが現実的な対処になります。停電中に何から充電するかは停電中にスマホをどう充電する?に、据え置き電源を検討する段階なら災害用ポータブル電源の選び方にまとめています。

暑いと何が起きるか|電波が弱くなる#

夏の災害では、症状が変わります。Appleは高温時に起きることとして、次のように列挙しています。

  • 充電が遅くなる、停止する
  • ディスプレイが暗くなる、またはディスプレイに何も表示されなくなる
  • モバイル通信の電波が弱くなる
  • カメラのフラッシュやその他のカメラ機能が一時的に無効になる
  • フレームレートの低下や処理時間の増加によりパフォーマンスが低下する

この中で、通信の備えという観点から見逃せないのが「モバイル通信の電波が弱くなる」です。端末が熱を持つと、電池が減るだけでなくつながりにくさそのものが増すということになります。

暑い場所でアンテナが1本になったとき、それが基地局側の問題なのか端末の温度なのかは、症状だけでは区別がつきません。切り分けの手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。停電が長引いて基地局側が止まっている可能性については停電が長引くと基地局が止まるを参照してください。

Pixelも同様に、異常加熱時には「CPU のパフォーマンスが低下する」「充電速度が落ちる」「カメラのフラッシュがオフになる」「カメラがオフになる」「低電力モードになって電源が切れる場合があります」と公式ヘルプに書かれています。

温度警告画面が出たときの公式手順#

iPhoneが高温になると温度警告画面が表示されます。Appleが示す対処は3つだけです。

  1. 本体の電源を切ります
  2. 涼しい場所に移します(直射日光を避けます)
  3. 本体の温度が下がるまで待ちます

そして、災害時に知っておく価値があるのが次の一文です。

iPhoneにこのメッセージが表示されていても、緊急電話は発信できる場合があります。 — Appleサポート「iPhoneやiPadが高温または低温になりすぎた場合」

「できる場合があります」という書き方なので、確実に通報できるとは受け取らないでください。それでも、画面が使えない状態=完全に何もできない、ではないという点は覚えておく価値があります。そもそも自分の契約で110番・119番がかけられるかどうかは、格安SIMだと条件が変わります。格安SIMで110番・119番はかけられる?で確認しておいてください。

車内放置は公式に禁じられている#

夏の車中避難でとくに注意が要るのが、車内へのスマホ・モバイルバッテリーの置き忘れです。一般社団法人電池工業会は、リチウムイオン二次電池について次の2点を明確な禁止事項として挙げています。

ストーブのそば、炎天下の自動車の車内など高温になる場所に放置しないでください。液もれ、発熱、破裂、発火の原因になります。

ストーブのそば、炎天下の自動車の車内など高温になる場所で充電しないでください。液もれ、発熱、破裂、発火の原因になります。 — 電池工業会「リチウムイオン二次電池の安全で正しい使い方」

Appleも「35°Cを超える周囲温度にデバイスをさらさないことが特に重要です」とし、「周囲温度が高い場所でデバイスを充電すると、より深刻な損傷を与えることもあります」と書いています。高温下の充電は、使用よりさらに条件が悪いという整理です。

あわせて、Appleは「特定の種類のケースに入れたままデバイスを充電すると、過度の熱が発生し、バッテリー容量に影響を及ぼす可能性があります」とも書いています。厚手のケースをつけたまま急速充電すると熱がこもるので、暑い時期に充電するときは外すほうが安全です。急速充電の条件そのものは災害時にスマホを早く充電するには?にまとめました。

モバイルバッテリーの事故が夏に集中する件と、安全な製品の選び方(PSEマークなど)は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?で扱っています。

災害時に温度範囲を外れる場面#

具体的にどこで問題が起きるかを整理しておきます。

場面起きること主な対処
冬の停電した室内電源が突然落ちる/充電保留中で充電できない端末を体の近くで保温してから充電する
冬の車中泊同上。屋外に近い温度まで下がる寝袋・毛布の中に入れる。車内に置いたまま離れない
屋外の避難行動中残量が残っていても落ちる上着の内ポケットへ。手に持ったままにしない
夏の車内電波が弱くなる、温度警告、発火リスク端末もモバイルバッテリーも車内に残さない
夏の避難所・屋外充電が止まる、画面が暗くなる直射日光を避ける。ケースを外す

冬の対処は「本体を冷やさない」に尽きます。上着の内ポケットなど体温が伝わる場所に入れておくのが、道具の要らない現実的な方法です。逆に、カイロを直接貼る・ストーブのそばに置くといった強い加熱は、電池工業会が高温での放置・充電を禁じている以上、避けるべきです。

なお、冷えた端末を急に暖かい室内へ持ち込むと結露が生じるおそれがあります(これは公式ドキュメントで確認した記述ではなく、一般的な注意点です)。濡らしてしまった場合の対処はスマホが水没したら、まず充電しないにまとめています。

平常時にやっておくこと#

温度の問題は、起きてからできることが「待つ」しかありません。だから事前側に寄せるほうが効きます。

  • 本体バッテリーの劣化を確認しておく。劣化しているほど低温シャットダウンが起きやすくなる(点検手順)
  • 省電力設定の場所を先に覚えておく。発熱そのものを減らせる(低電力モード・バッテリーセーバー)
  • 予備端末も同じ条件で温度の影響を受けることを前提にする。防災バッグに入れっぱなしの端末は、夏の物置や車のトランクでは保管温度45℃を超えうる(古いスマホを予備端末にする)
  • モバイルバッテリーの保管場所を見直す。車内・窓際・暖房器具のそばは避ける
  • 厚手のケースを外して充電できるようにしておく

チェックリスト#

  • 動作温度が0〜35℃、保管温度が-20〜45℃であることを知っている
  • 寒さで電源が落ちるのは一時的で、温めれば戻ると知っている
  • 「充電保留中」の通知を見たことがある/意味を知っている
  • 暑いと電波が弱くなると知っている(障害と切り分けられる)
  • 温度警告時の対処は「電源を切る・涼しい場所・待つ」だと知っている
  • 防災バッグ・車内に、夏に高温になる場所で電池を保管していない
  • 本体バッテリーの劣化を年1回確認している

まとめ#

  • Apple・Googleとも動作温度は0〜35℃、保管温度は-20〜45℃と公式に明記している
  • Googleは「0°C未満または35°Cを超える環境で使用・充電しないでください」と書いている
  • 寒いと残量が残っていても電源が落ち、充電も止まる(iOS 16以降は「充電保留中」の通知)。ただし一時的で、温度が戻れば性能も戻る
  • 暑いと充電が止まり、画面が暗くなり、モバイル通信の電波が弱くなるとAppleが明記している
  • 温度警告画面が出ていても「緊急電話は発信できる場合があります」。ただし確実とは書かれていない
  • 高温時の公式対処は「電源を切る/涼しい場所へ/待つ」の3つ
  • 炎天下の車内・ストーブのそばでの放置と充電は、電池工業会が禁止事項として挙げている

モバイルバッテリーを何個そろえても、本体が0℃を下回れば充電は受け付けません。電気の量と同じくらい、置き場所の温度が備えの前提になります。冬なら内ポケット、夏なら車内に残さない。この2つだけでも、いざというときに電源が入っている確率は変わります。