モバイルバッテリーを用意しても、いざ停電したときに「思ったより充電が進まない」ということがあります。原因が端末の故障ではなく、使っている電源アダプタとケーブルの組み合わせであることは珍しくありません。

先に結論です。充電の速さは「電源アダプタの出力(W)」「ケーブル」「端末側の対応」の3つで決まり、いちばん弱いところで頭打ちになります。

  • 引き出しに眠っている古い5Wアダプタでは、Appleのいう「高速充電」の条件を満たさない
  • Googleは、パソコンのUSBポートではなくコンセントを使うよう明記している
  • 高温・低温だと、条件をそろえても高速充電されないことがある

順に見ていきます。

なぜ災害時に「充電の速さ」が問題になるのか#

平常時なら、寝ているあいだに充電が終わればそれで足ります。速さを気にする理由がありません。

災害時に事情が変わるのは、充電できる時間や機会そのものが限られるからです。

  • 携帯ショップや避難所の充電サービスを使う場合 — 順番待ちが発生すれば、1人が使える時間は長く取れません
  • 車から給電する場合 — 車を動かしている時間は燃料の消費に直結します。短時間で入るほど有利です
  • 発電が復旧しているあいだだけ充電できる場合 — いつまで使えるか読めない状況で、入る量が変わります

停電中に電気をどこから得るかという話は停電中にスマホをどう充電する?にまとめました。この記事はその一段あと、手に入れた電気をどれだけ効率よく端末に入れられるかの話です。

なお、「速く充電する=バッテリーの消費が減る」わけではありません。速さが効くのは、あくまで充電できる時間が限られている場面です。手元のモバイルバッテリーの残量を長持ちさせたいなら、災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定のほうが直接効きます。

① iPhoneの高速充電に必要なもの(Apple公式)#

Appleのサポートページ「iPhone を高速充電する」では、機種ごとに必要なものが分けて示されています。

機種有線での高速充電に必要なもの
iPhone 8〜iPhone 11「Apple製の18W以上のUSB-C電源アダプタ」
iPhone 12〜iPhone 14「20W以上の電源アダプタ」
iPhone 15以降「USB-Cケーブル」

そのうえで、充電できる量についてはこう書かれています。

「iPhone 8以降は、バッテリーを約30分で最大50パーセントまで高速充電できます」

機種によってさらに条件が分かれます。Appleは、iPhone 17/Pro/Pro Maxは「40W以上のアダプタを使用してバッテリーを約20分で最大50パーセントまで充電できます」、iPhone 17e/iPhone Airは「20W以上のアダプターを使用してバッテリーを30分で最大50パーセントまで高速充電できます」としています。

ワイヤレス充電の場合は必要な出力が上がり、iPhone 16以降は「Apple製の30W以上のUSB-C電源アダプタ」、iPhone 15以前は「Apple製の20W以上のUSB-C電源アダプタ」が条件です。

ポイントは、iPhone 14以前は「アダプタの出力」が条件になっていることです。ケーブルだけ新しくしても、アダプタが足りなければ条件を満たしません。

② 手元のアダプタが何Wかを確認する#

ここが実際のつまずきどころです。Appleは自社のUSB電源アダプタとして、USB-Aタイプの「5W USB電源アダプタ」「10W USB電源アダプタ」「12W USB電源アダプタ」、USB-Cタイプの「18W USB-C電源アダプタ」「20W USB-C電源アダプタ」を挙げています。

そして、「iPhone 11 より前のほとんどの iPhone モデルには 5W の電源アダプタが付属しています」とも書かれています。

つまり、防災バッグに入れっぱなしの「昔スマホに付いてきた小さな四角いアダプタ」は、5Wである可能性が高いということです。それでも充電はできますが、上の表の条件は満たしません。

アダプタ本体には出力の表記があります。平常時に一度、手持ちのアダプタの出力を確認しておくのが、この記事でいちばん実用的な備えです。

なお、Appleは同じページで「下記のどのアダプタでも、iPhone、iPad、Apple Watch、iPod を充電できます」ともしています。5Wアダプタが使えないという意味ではなく、速さの条件を満たさないということです。

③ Pixel・Androidの場合(Google公式)#

Google Pixel ヘルプ「Google Pixel を充電する」には、速さに関する案内が明記されています。

「充電速度を速くするには、ノートパソコンの USB-C ポートではなく、適切なコンセントを使用してください。」

避難所や施設でパソコンから充電させてもらう場面を考えると、これは覚えておく価値があります。

電源アダプタについては、「Google 30W / 45W / 67W USB-C 急速充電器」または「定格 30 W 以上の Programmable Power Supply(PPS)電源アダプター」が挙げられています。

ケーブルについては、USB-C - USB-C ケーブルとUSB-A - USB-C ケーブルの両方が使えるとしたうえで、USB-A - USB-C ケーブルを使う方法は「USB-C ケーブルと USB-C 電源アダプターを使用する場合に比べて充電に時間がかかります」と書かれています。あわせて「他のケーブルや電源アダプターは Google Pixel では正常に機能しない場合があります」という注意もあります。

ワイヤレス充電では、Qi1.xなどの従来のQi充電器も使えるものの「最大 5 W の低速充電になります」とされています。急いで充電したい場面では、ワイヤレスではなくケーブルを選ぶほうが確実です。

Googleは別のヘルプページで、「充電速度は、充電中の使用状況、バッテリーの使用年数、気温など、さまざまな要因によって変動します。」とも説明しています。カタログどおりの時間で必ず入るわけではない、という前提で考えておくのが安全です。

④ 気温が低い・高いと、条件をそろえても速くならない#

Appleは「iPhone を高速充電する」のページで、「低温または高温になりすぎた場合は、高速充電できないことがあります」と注意しています。

バッテリー全般については、Appleは「iPhone、iPad、iPod、Apple Watchは、0°C〜35°Cの環境下で最も良く動作します。」としたうえで、次のように書いています。

「35°Cを超える周囲温度にデバイスをさらさないことが特に重要です。」 「推奨されるバッテリー温度を超えると、ソフトウェアが80%以上の充電を制限する場合もあります。」

災害時の状況に当てはめると、次のような場面が該当します。

  • 夏に車内で充電する — 停車中の車内は高温になりやすく、条件を満たしていても速度が落ちる可能性があります
  • 冬に屋外や車外で充電する — 低温側でも同じことが起こりえます
  • 厚いケースを付けたまま充電する — Appleは「特定の種類のケースに入れたままデバイスを充電すると、過度の熱が発生し、バッテリー容量に影響を及ぼす可能性があります。充電中にデバイスが熱くなったら、まずケースから取り出しましょう。」としています

「アダプタもケーブルも合っているのに進まない」というときは、故障を疑う前に端末の温度を確認してみてください。

なお、そもそも本体バッテリーが劣化していると、充電しても持ちが悪くなります。確認手順は災害の備えは本体バッテリーの点検からにまとめました。

⑤ 災害用にそろえておく組み合わせ#

以上をふまえると、防災用に用意しておくのは次の組み合わせです。

  • USB-C電源アダプタを1つ(iPhone 12以降なら20W以上、Pixelなら30W以上が公式の目安)
  • 端子に合ったケーブル
    • iPhone 15以降・Pixel など → USB-C - USB-C ケーブル
    • iPhone 14以前 → USB-C - Lightningケーブル
  • 家族の端末ぶんの本数(1本しかないと順番待ちになります)

モバイルバッテリーやポータブル電源を使う場合は、その機器の出力側の表記も確認しておいてください。容量(mAh/Wh)と出力(W)は別の指標です。容量の考え方は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?、機器を動かせるかを決める定格出力の考え方は災害用ポータブル電源の選び方にまとめています。

古いスマホを予備端末として残している場合は、その端末を充電する手段も要るという点を忘れずに。予備端末の準備は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめました。

⑥ 濡れた端末は、条件が合っていても充電しない#

充電速度以前の話として、水に濡れた端末をそのまま充電してはいけません。手順はスマホが水没したら、まず充電しないにまとめています。

災害時は雨や浸水で端末が濡れる場面が実際にあります。「早く充電したい」という気持ちが強いときほど、ここを飛ばしがちです。

⑦ 今日できるチェックリスト#

  • 手持ちの電源アダプタの出力(W)を実物で確認する
  • 自分の機種の高速充電条件を満たしているか、上の表と照らす
  • 防災バッグに入れているアダプタが古い5Wのものになっていないか確認する
  • 家族の端末ぶんのケーブル本数があるか数える
  • モバイルバッテリーを満充電にしてからしまう(容量の考え方)
  • 停電時の給電手段を決めておく(停電中にスマホをどう充電する?)

まとめ#

充電の速さは、アダプタの出力・ケーブル・端末の対応の3つがそろって決まります。1つでも欠けるとそこで頭打ちになり、災害時のように充電できる時間が限られる場面ほど差が出ます。

とはいえ、これはあくまで「電気が手に入る前提」の話です。停電が長引けば、そもそも充電する電気がありません。給電手段の確保は停電中にスマホをどう充電する?を、電池を減らさない設定は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定を参考にしてください。

また、スマホが満充電でも、停電が長引いて基地局側の電源が尽きれば圏外になります。そのときに何が起きるかは停電が長引くと基地局が止まるにまとめました。電源と回線は別々に備える必要がある、という点は押さえておいてください。

なお、電源そのものが手に入らない場面では、家族の端末から少しだけ電気を分けてもらう手もあります。Pixelの「バッテリーシェア」とiPhone 15以降のUSB-C給電でできること・できないことはスマホからスマホへ充電できる?にまとめました。ただし給電は最大4.5Wなど非常に低出力で、この記事の高速充電とは別物です。