災害や停電でしばらく充電できない状況になったとき、スマホの省電力モードは有効な手段です。ただし、オンにすると止まる機能があり、その中に災害時に使いたい機能が含まれています。
先に結論です。
- 省電力モードは「使う」。ただし何が止まるかを知ったうえで使う
- Androidの緊急SOSは、バッテリーセーバーがオンだと機能しない(Google公式に明記)
- スーパーバッテリーセーバーでは一時停止されたアプリから通知が届かなくなる
- iPhoneの低電力モードはメールの取得・アプリのバックグラウンド更新がオフになる
- 省電力モードより先に効くのは、画面の明るさを下げることとWi-Fiを使うこと
順に見ていきます。
① iPhone:低電力モードで何が変わるか
Appleのサポート記事「iPhoneやiPadで低電力モードを使ってバッテリーを長持ちさせる」では、低電力モードは「バッテリー残量が少なくなるとiPhoneやiPadのバックグラウンド処理を減らし、バッテリーの駆動時間を延ばします」と説明されています。
オンにする手順
| 機種 | 手順 |
|---|---|
| iPhone 15以降 | 「設定」→「バッテリー」→「電力モード」→「低電力モード」 |
| iPhone 14以前 | 「設定」→「バッテリー」→「低電力モード」 |
| 共通(コントロールセンター) | 画面の右上隅から下にスワイプし、バッテリーアイコンをタップ |
| 共通(Siri) | 「Siri、低電力モードをオンにして」 |
低電力モードがオンの間は、ステータスバーのバッテリーアイコンが黄色になります。判別しやすいので、覚えておくと便利です。
低電力モードでオフ・制限される設定
Apple公式が挙げているのは次の項目です。
- メールの取得:オフ
- アプリのバックグラウンド更新:オフ
- 自動ダウンロード:オフ
- iCloud写真:一時的に停止
- 自動ロック:デフォルトの「30秒」に設定
- ディスプレイの明るさ:低下
- ProMotionディスプレイ搭載モデルのリフレッシュレート:最大60Hzに制限
- ビジュアルエフェクト:一部のエフェクトをオフ
- 5G:ほとんどのデバイスでオフ(ただしビデオストリーミングや大量のダウンロードが行われている場合、iPhone 12と13の各種モデルでは5Gがオフになりません)
災害時の観点で重要なのは上の4つです。メールの取得とアプリのバックグラウンド更新がオフになるため、自治体からのメールや各種アプリの更新が「アプリを開くまで届かない・反映されない」状態になり得ます。
一方でiPhoneユーザガイドには、低電力モードでも「電話、メール、およびメッセージの発着信やインターネットへのアクセスなど重要なタスクのパフォーマンスが最適化されます」と記載されています。能動的に使う分にはほぼ支障がなく、影響が出るのは「勝手に取りに行く動作」、と理解しておくとよいです。
自動でオン/オフになる条件
- 80%以上まで充電すると、低電力モードは自動的にオフになります(Apple公式)
- 「適応型電力制御」が有効な対応デバイスでは、バッテリー残量が20%を下回ると低電力モードがオンになります
適応型電力制御はiPhone 15 Pro以降で使える機能で、iPhoneユーザガイドによれば、iPhone 17/17 Pro/17 Pro Max/iPhone Airではデフォルトでオンになっています。オンにすると画面の明るさが下がり、バックグラウンド処理が制限されます。設定は「設定」→「バッテリー」→「電力モード」→「適応型電力制御」です。
ここで注意したいのが、80%充電で自動的にオフになるという挙動です。停電の合間に充電できた場合、意図せず低電力モードが解除されていることがあります。災害中は、充電後にもう一度オンにし直す前提で考えておくと安全です。
② Android(Pixel):バッテリーセーバーで何が変わるか
Google Pixelヘルプによると、バッテリーセーバーは画面を上から下にスワイプし、バッテリーセーバーアイコンをタップして切り替えます。自動でオンにする設定は「設定」→「バッテリー」→「バッテリーセーバー」→「スケジュールとリマインダー」→「バッテリー残量に応じて ON にする」です。
同じ画面で「90% 充電されたら OFF にする」の設定もでき、また充電中はバッテリーセーバーがオフになります。バッテリー残量が20%になったとき、その後10%になったときにリマインダーが送られます。
標準バッテリーセーバーの制限
Google公式が挙げている主なものです。
- ホーム画面の壁紙が少し暗くなります
- アプリでのコンテンツ(メールやニュースなど)の更新は、アプリを開いたときにのみ行われます
- 画面をオフにすると、位置情報サービスは停止します
- バッテリーの最適化をオフにしない限り、アプリはバックグラウンドで実行されません
- 「OK Google」を認識しなくなります
- ダークモードがオンになります
- 優先度の低い通知は遅れる可能性があります
- 「時間と情報を常に表示」はオフになります
- Pixel 3、Pixel 4、およびそれ以降のPixelで、自動車事故検出がオフになります
- 5G対応のGoogle Pixelでも4Gサービスを使用することがあります
スーパーバッテリーセーバー(Pixel 3以降)の追加制限
- ほとんどのアプリが一時停止します。一時停止中のアプリからは通知が送信されなくなります
- スマートフォンの処理速度(CPU)が遅くなります
- Wi-FiとBluetoothは動作しますが、位置情報のためのWi-FiスキャンとBluetoothスキャンはオフになります
- 仕事用プロファイルがオフになります
- 画面消灯が30秒に短縮されます
- 現在のアクセスポイントやテザリングはすべて停止します
どちらのモードでも「電話、メッセージ、時計、設定などの必須システムアプリがオフになることはありません」と明記されています。つまり通話とSMSは使えます。
③ 災害時にいちばん注意すべき点:Androidの緊急SOS
これは知らないと危険なので、独立して書きます。
Androidヘルプ「Androidスマートフォンを使用して緊急時に助けを求める」には、緊急SOSの注意事項として次のように明記されています。
機内モードやバッテリー セーバーがオンになっている場合、緊急 SOS は機能しません。
緊急SOSは、通報して救援を求める・位置情報を緊急連絡先と共有する・動画を撮影するといった緊急時のアクションをまとめて実行する機能です(Android 12以降)。
電池を節約しようとバッテリーセーバーを常時オンにしていると、いざというときに緊急SOSが動かないということになります。ここは省電力と安全機能がはっきり衝突する部分です。
対処としては、次の使い分けが現実的です。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 平常時・移動中で身の危険がありうる | バッテリーセーバーは常時オンにしない |
| 避難所などで安全が確保され、充電できない | バッテリーセーバー(必要ならスーパー)をオンにする |
| 単独行動・登山・夜間の移動 | 緊急SOSを優先し、省電力はモバイルバッテリーで代替する |
なお、緊急SOSとは別に、110/119への通常の緊急通報は電話アプリからかけられます。災害時の連絡手段全般は災害時の連絡手段まとめに整理しています。
④ 通知が「遅れる」ことの意味
省電力モードの副作用でいちばん見落とされやすいのが通知です。
- iPhone:メールの取得とアプリのバックグラウンド更新がオフ
- Android標準:優先度の低い通知は遅れる可能性がある/アプリの更新はアプリを開いたときのみ
- Androidスーパー:一時停止中のアプリからは通知が送信されない
つまり、省電力モード中は「通知が来ないから何も起きていない」とは限りません。家族からの連絡や自治体の情報を待っている状況では、定期的に自分からアプリを開いて確認する運用に切り替える必要があります。
家族と連絡ルールを決めるときは、この点を前提にしておくと行き違いが減ります。安否確認の手段は携帯4社の災害用伝言板の使い方にまとめています。
なお、緊急速報メール(緊急地震速報)は通常の通知とは別の仕組みで配信されます。受信可否が端末で決まるという整理は格安SIMでも緊急速報メールは受信できる?にまとめました。
⑤ 省電力モードより先に効く基本
Apple・Googleの公式情報では、モード切り替え以前に効く項目として次が挙げられています。
Apple(バッテリーの駆動時間と耐用年数を最大限に延ばす)
- 画面の明るさを落とす、または明るさの自動調節をオンにする
- データにアクセスする際は、携帯電話ネットワークより消費電力が少ないWi-Fiを使う
Google(Androidデバイスの電池を長持ちさせる)
- すぐに画面がオフになるようにする/画面の明るさを下げる
- ダークモードをオンにする
- モバイルネットワークが不要な場合は機内モードをオンにする
- モバイルデータの代わりにWi-Fiを使う/Bluetoothをオフにする
- テザリング、GPSの長時間使用、動画・音楽のストリーミングを避ける
災害時に特に効くのは画面の明るさと電波の掴み方です。圏外や電波の弱い場所では、端末が基地局を探し続けて電池を消耗します。復旧を待つあいだ連絡の必要がないなら、機内モードにしておくほうが電池は持ちます(ただし前述のとおり、機内モード中は緊急SOSも通話も使えません)。
また、省電力モードで5Gが4Gに切り替わるのは、災害時にはむしろ好都合な場合があります。速度は落ちますが、テキスト中心の連絡には十分です。
避難所などで無料Wi-Fiが開放された場合の使い方は00000JAPANの安全な使い方を参照してください。パスワードなしでつながる代わりに通信は暗号化されていないため、使い方に注意が要ります。
なお、ここで扱っている省電力モード(低電力モード/バッテリーセーバー)と、データ通信量を抑える省データモード/データセーバーは別の設定です。電池とデータ容量はどちらも災害時に尽きうる資源なので、両方の場所を確認しておいてください。データ側の設定手順と、容量を使い切ったあとの速度の調べ方は災害時にデータ容量が尽きたら?にまとめています。
⑥ 設定だけでは足りない部分
省電力設定は「今ある電池を延ばす」手段であって、電池そのものを増やすものではありません。数字で見ると、できることには限界があります。
そのため、順序としては次のようになります。
- 電源を確保する(モバイルバッテリー・充電の機会を逃さない)
- 省電力設定で持ちを延ばす(本記事)
- 予備の端末を用意する(1台に依存しない)
容量の考え方は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?、余った端末の活用は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめています。
つながらない原因が障害なのか端末なのかを切り分ける手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することを参照してください。省電力モードが原因で「通信が遅い・通知が来ない」と感じているだけ、というケースもあります。
⑦ 平常時にやっておくこと
- 自分の端末で低電力モード/バッテリーセーバーの場所を確認しておく(機種で階層が違う)
- コントロールセンター/クイック設定に省電力のボタンを配置しておく
- Androidなら、バッテリーセーバーを常時オンにしていないかを見直す(緊急SOSが機能しません)
- 自動でオンにする残量(何%で発動するか)を決めておく
- 充電すると自動でオフになること(iPhone 80%/Pixel 90%)を覚えておく
いちばん重要なのは3つ目です。普段から節電目的でバッテリーセーバーを入れっぱなしにしている方は、緊急SOSとのトレードオフを一度確認してください。
まとめ
省電力モードは災害時に有効ですが、**止まるのは「バックグラウンドの自動処理」と「一部の安全機能」**です。
- iPhone:メール取得・バックグラウンド更新・自動ダウンロードがオフ。80%充電で自動解除
- Android:通知が遅れる/位置情報が画面オフで停止。スーパーでは一時停止アプリの通知が届かない。90%充電で自動オフの設定あり
- Androidの緊急SOSはバッテリーセーバー中は機能しない(Google公式に明記)
緊急SOSが止まる点が気になる場合は、そもそも自分の回線から110番・119番がかけられる契約かどうかもあわせて確認しておくとよいと思います(格安SIMで110番・119番はかけられる?)。
節約と並行して、充電できる先を確保しておくことも効きます。停電中に電動車・住宅用太陽光・避難所の無料充電をどう使うかは、停電中にスマホをどう充電する?にまとめました。据え置きの電源を買い足すかどうかを検討する段階なら、災害用ポータブル電源の選び方もあわせてご覧ください。設定で減らせる分を先に減らしておくほど、必要な容量は小さくて済みます。
「電池を節約する」と「連絡が取れる状態を保つ」は、ある程度トレードオフの関係にあります。どちらを優先するかは状況次第なので、平常時に設定場所と副作用だけ把握しておき、当日は状況に応じて切り替えるのが現実的です。
この記事の情報について:本記事は、Appleサポート「iPhoneやiPadで低電力モードを使ってバッテリーを長持ちさせる」(公開日2025年12月8日)、Apple「iPhoneユーザガイド|iPhoneの電力モードでバッテリーを長持ちさせる」、Apple「バッテリー | パフォーマンスを最大化する」、Google Pixelヘルプ「Google Pixel でバッテリー セーバーを使用する」、Androidヘルプ「Android デバイスの電池を長持ちさせる」、Androidヘルプ「Android スマートフォンを使用して緊急時に助けを求める」の各情報をもとに、2026年7月26日時点で確認した内容です。設定項目の名称や階層はOS・機種・バージョンによって異なります。Pixel以外のAndroid端末(Galaxy、AQUOS、Xperia等)では、省電力モードの名称・制限内容がメーカーごとに異なるため、お使いの端末メーカーのサポートサイトをご確認ください。