災害の備えとして回線を2本用意し、モバイルバッテリーもそろえた——それでも見落とされがちなのが、データ容量そのものが尽きるという状況です。

安否確認、避難所の情報、交通情報、家族とのやりとり。災害時はふだんより通信の回数が増えます。格安SIMは月3GB前後の小容量プランを選んでいる人が多く、数日で使い切ってもおかしくありません。

先に結論を書きます。

  • 容量を使い切ったあとの速度は契約しているプランで決まっている。まず自分のプランの数値を確認する
  • povo2.0は0円0GB時に送受信最大128kbps、UQ mobileのミニミニプランは節約モードで送受信最大300Kbpsと、それぞれ公式に案内されている
  • 容量を長持ちさせる機能はiPhoneは「省データモード」、Androidは「データセーバー」。どちらも設定は1分で終わる
  • Androidの「データ使用量の上限」は、上限に達するとモバイルデータ通信を自動的にオフにする。災害時にこれが働くと通信が止まる。設定している人は今のうちに見直す

なぜ災害時にデータ容量が減りやすいのか#

平常時とくらべて、災害時は通信の使い方が変わります。

  • 家族や職場との連絡が増える(メッセージ、通話アプリ)
  • ニュースやSNSを繰り返し見に行く(自動再生の動画が重い)
  • 地図・経路検索を何度も開く
  • 自宅のWi-Fiが停電で止まり、ふだんWi-Fiで済ませていた通信がすべてモバイル回線に乗る

最後の項目は見落とされがちです。停電すると光回線のルーターも止まるため、自宅にいてもモバイルデータ通信を使うことになります。ふだん月3GBで足りている人でも、Wi-Fiが使えない前提だと消費のペースはまったく変わります。

停電時にルーターやスマホをどう動かすかは、停電中にスマホをどう充電する?と災害用ポータブル電源の選び方にまとめています。

まず「尽きたあとの速度」を確認する#

容量を使い切っても、通信がゼロになるわけではありません。多くのプランでは低速に切り替わって使い続けられます。ただしその速度はプランごとに違い、体感は大きく変わります。

自分の契約がどうなっているかを、公式ページで確認しておいてください。ここでは公式表記が確認できたものを挙げます。

povo2.0#

povo2.0の公式サービス詳細ページには、「0円0GB時は、送受信最大128kbpsとなります。」と記載されています。データトッピングを購入していない状態が、この速度にあたります。

音声通話とSMSはトッピングの有無とは別の従量課金で、公式には通話が30秒あたり22円、SMS送信が1通あたり3.3円(70文字まで)、SMS受信は無料と案内されています。

つまりpovo2.0をサブ回線として寝かせている場合、そのままではデータ通信は128kbpsです。災害時にサブ回線として本格的に使うなら、その場でデータトッピングを購入する前提になります。povo2.0の維持のしかたはpovo2.0を災害用のサブ回線にで解説しています。

UQ mobile#

UQ mobileの公式プランページでは、ミニミニプランの節約モードが「送受信最大300Kbps」と案内されています。節約モードは対象プランが限られており、公式ページ上ではトクトクプラン・コミコミプランは節約モードの対象外という整理になっています。

また、トクトクプラン・コミコミプラン+については、データ容量を超過したあとも最大1Mbpsで利用できる旨が公式に示されています。こちらは「自分で切り替える節約モード」ではなく、超過後の速度です。

そのほかの会社#

上記以外の会社については、契約先の公式サイトで「低速」「節約モード」「速度制限」といった語を含むページを確認してください。まとめサイトの数値は改定に追いついていないことがあり、料金や速度のように変動する情報は公式で確認するのが確実です。

自分が使っている回線がどの会社の電波を借りているかは格安SIMの「回線元」一覧にまとめています。

低速になると、何が厳しくなるのか#

ここは断定を避けて書きます。実際の体感は電波状況・時間帯・アプリの作り方に左右されるため、「128kbpsなら○○ができる」と言い切れる性質のものではありません。

公式情報として確認できた具体例は次のひとつです。povo2.0のFAQには、「データトッピングが無い場合の通信速度(128kbps)でもpovo2.0アプリのアップデートは可能です。」と記載されており、完了までおよそ1時間かかるという説明が添えられています。

ここから読み取れるのは、低速でも通信自体は成立するが、データ量の大きい処理には相応の時間がかかるということです。一般論として、テキスト中心の通信ほど低速下でも成立しやすく、画像や動画を多く含む通信ほど時間がかかります。災害時に優先したい安否のやりとりは前者にあたります。

なお、大きな地震の直後は容量が残っていても電話がつながりにくくなることがあります。これは容量の問題ではなく輻輳(ふくそう)と通信規制によるもので、対処が変わります。仕組みは災害時に電話だけつながらないのはなぜ?を参照してください。

iPhoneで容量を長持ちさせる:省データモード#

Appleの公式ユーザガイドでは、モバイルデータ通信のデータ使用量を減らす方法として次の手順が案内されています。

  1. 「設定」>「モバイル通信」>「モバイルデータ通信のオプション」を開く
  2. 「データモード」をタップする
  3. 「省データモード」を選択する

このモードについて、公式ユーザガイドには「iPhoneがWi-Fiに接続されていないときに、自動アップデートとバックグラウンドタスクが一時停止します。」と記載されています。

裏を返すと、バックグラウンドで動く更新は止まります。災害時に使いたいアプリの通知が遅れる可能性がある点は理解したうえでオンにしてください。iPhoneの省データモードにはアプリ単位の例外設定がないため、細かく制御したい場合は次項のアプリ別設定と組み合わせます。

アプリごとにモバイルデータ通信を切る#

公式ガイドでは、「設定」>「モバイル通信」を開き、アプリごとにモバイルデータ通信のオン/オフを切り替えられると案内されています。オフにしたアプリは、データ通信にWi-Fiだけを使うようになります。

災害時に容量を食いやすいのは、動画・写真の同期・大きなアプリの更新です。平常時のうちに「これはWi-Fiだけでいい」というアプリを切っておくと、いざというときの消費が変わります。

「Wi-Fiアシスト」に注意する#

見落とされやすいのがこの設定です。公式ガイドには、「Wi-Fiアシスト」はデフォルトではオンになっていること、Wi-Fiの接続状況が悪いときに自動的にモバイルデータ通信に切り替えること、その結果使用されるモバイルデータ量が増えることがあることが明記されています。

災害時は、避難所のWi-Fiや無料開放されたWi-Fiのように混雑して不安定な接続につなぐ場面が増えます。そういう場所ではWi-Fiアシストが働き、気づかないうちにモバイル回線を消費している可能性があります。「設定」>「モバイル通信」の一番下あたりで状態を確認できます。

無料開放されるWi-Fiそのものの使い方と注意点は00000JAPANの安全な使い方にまとめました。

使用量を確認する#

「設定」>「モバイル通信」では、アプリごとの使用量を確認できます。公式ガイドによれば、この統計は画面下部の「統計情報をリセット」でリセットできます。ただし公式には、正確な使用量は通信事業者に確認するよう注記されています。契約先のアプリやマイページの数値を正とするのが確実です。

Androidで容量を長持ちさせる:データセーバー#

Google Pixelヘルプでは、「データセーバーをオンにすることで、データ通信量に制限のあるプランでモバイルデータの使用量を抑えることができます」と説明されています。

手順は次のとおりです。

  1. 「設定」アプリを開く
  2. 「ネットワークとインターネット」>「データセーバー」をタップする
  3. 「データセーバー」をオンにする

オンにしたときの動作は、公式ヘルプに「ほとんどのアプリやサービスで Wi-Fi 接続時のみバックグラウンド データが取得されるようになります。その時点でアクティブなアプリやサービスでは、モバイルデータ通信が使用されます」と記載されています。

つまり画面を開いて使っているアプリは通常どおり通信し、裏で動く更新が抑えられるという挙動です。

災害時に止めたくないアプリは例外にする#

Pixelヘルプには、データセーバーの例外を設定する手順も案内されています。

  1. 「設定」>「ネットワークとインターネット」>「データセーバー」>「無制限のデータアクセス」をタップ
  2. モバイルデータ通信が必要なアプリをオンにする

安否確認に使うメッセージアプリや防災情報のアプリは、ここで例外にしておくとデータセーバーをオンにしたまま通知を受け取れる構成にできます。データセーバーを「災害時に入れるスイッチ」として使うなら、例外の指定は平常時に済ませておくのが現実的です。

最重要:「データ使用量の上限」は災害時に通信を止める#

Pixelヘルプでは、モバイルデータの使用量に警告と上限を設定できることが案内されています。そして上限に達すると、モバイルデータ通信が自動的にオフになると説明されています。

これは平常時には使いすぎ防止として有効ですが、災害時には通信そのものが止まるという意味になります。設定した本人が忘れていると、「圏内なのに何も通信できない」状態になり、通信障害と区別がつきません。

過去に上限を設定した記憶がある人は、今のうちに設定値を確認してください。上限を外して「警告」だけ残す、あるいは上限値を余裕のある数字に変えておくと、災害時に自動でオフになる事態を避けられます。

つながらないときの切り分け手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめていますが、この上限設定は切り分けの盲点になりやすい項目です。

アプリごとのバックグラウンド制限#

Pixelヘルプでは、アプリの権限からバックグラウンドデータの利用を許可・制限できること、自動同期をオフにして手動同期に切り替えることでもデータ使用量を削減できることが案内されています。写真の自動バックアップのように容量の大きい同期は、Wi-Fi接続時のみに寄せておくと安全です。

容量を使い切る前にできること#

通信を使わずに済む備えを増やす#

そもそも通信しなくて済む部分を増やすほど、容量は減りません。

  • 地図:事前にダウンロードしておけば、圏外でも低速でも表示できます。手順は圏外でも地図を見るには?にまとめました
  • 連絡先・避難所・ハザードマップ:スクリーンショットや紙で持っておけば、開くのに通信が要りません
  • 緊急速報メール:受信の可否は料金プランではなく端末で決まるという整理を格安SIMでも緊急速報メールは受信できる?にまとめています

家族で1本にまとめる#

家族全員がそれぞれの回線で情報収集すると、消費も人数分になります。テザリングで1台に集約すれば、消費する回線を1本に絞れます。ただし親機の電池とデータ量が先に尽きるという問題があるため、手順と注意点は災害時に1本の回線を家族で分け合うを確認してください。

電池とセットで考える#

データを節約しても、電池が切れれば同じことです。省電力モードにはオンにすると止まる機能があり、その中に災害時に使いたい機能が含まれます。詳しくは災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定を参照してください。

なお、省データモード(データセーバー)と省電力モードは別の設定です。片方をオンにしても、もう片方は変わりません。災害時に両方を入れるつもりなら、どこにあるかを両方とも覚えておく必要があります。

今日やっておくチェックリスト#

  • 契約中のプランの「容量を使い切ったあとの最大速度」を公式ページで確認した
  • サブ回線が低速のまま寝ている状態か(povo2.0なら128kbps)を把握した
  • iPhone:「設定」>「モバイル通信」>「モバイルデータ通信のオプション」>「データモード」の場所を確認した
  • iPhone:Wi-Fiアシストの状態を確認した
  • iPhone:Wi-Fiだけで十分なアプリのモバイルデータ通信をオフにした
  • Android:「設定」>「ネットワークとインターネット」>「データセーバー」の場所を確認した
  • Android:「無制限のデータアクセス」に安否確認用のアプリを登録した
  • Android:「データ使用量の上限」が設定されていないかを確認した(設定済みなら値を見直した)
  • 自宅周辺・職場周辺のオフライン地図をダウンロードした
  • 家族で「情報収集は誰の回線でやるか」を決めた

最後から2番目までは、すべて平常時にしかできない作業です。災害が起きてから設定画面を探すことになると、その操作自体が電池と時間を食います。

まとめ#

  • 災害時は自宅Wi-Fiが停電で止まるため、ふだんWi-Fiで済ませていた通信までモバイル回線に乗る
  • 容量を使い切ったあとの速度はプランで決まっている。povo2.0は公式に「0円0GB時は、送受信最大128kbps」、UQ mobileのミニミニプランは節約モードで送受信最大300Kbpsと案内
  • povo2.0はトッピングなしでも音声通話(30秒22円)とSMS(送信3.3円/受信無料)は従量で使えると公式に記載
  • 低速で「何ができるか」は環境次第。公式に確認できた具体例は128kbpsでpovoアプリの更新に約1時間という記載のみ
  • iPhoneは「省データモード」。公式にはWi-Fi未接続時に自動アップデートとバックグラウンドタスクが一時停止すると記載
  • iPhoneのWi-Fiアシストはデフォルトでオン。接続が悪いWi-Fiではモバイルデータに自動で切り替わり、使用量が増えることがある
  • Androidは「データセーバー」。Wi-Fi接続時のみバックグラウンドデータを取得する挙動になる
  • Androidの「データ使用量の上限」に達するとモバイルデータ通信が自動的にオフになる。災害時の盲点なので事前に確認する

なお、災害救助法が適用された地域では、各社がデータ量の追加提供や速度制限の解除を実施することがあります。ただし契約住所で対象が判定され、格安SIMだと提供量が小さいため、支援をあてにせず自分で節約できる状態にしておくのが前提です。各社の実例と受け取り方は災害救助法が適用されると通信各社は何をしてくれる?にまとめました。

低速の状態でも比較的使える手段として、radikoがあります。radikoは公式に「128kbps以下の環境でも利用することが可能です」と案内しており、通信量も2時間で約81MBという目安が示されています。制限後に何ができるかの選択肢として、災害時の情報収集にラジオは要る?に整理しました。

この「自宅Wi-Fiが停電で止まる」という前提そのものは、NTT東日本・NTT西日本が公式に案内しています。何が止まり、ひかり電話がどう扱われるのかは停電すると自宅のWi-Fiと固定電話は止まるにまとめました。

データ容量は、電源や回線とくらべて備えの話題になりにくい項目です。ただ、尽きた瞬間に「圏内なのに何もできない」状態になるという点では、圏外とよく似た困り方をします。回線をもう1本持つ備えについては格安SIMの「回線元」一覧と災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?を、連絡手段全体の整理は災害時の連絡手段まとめをご覧ください。