災害時の備えとして「ラジオ」がよく挙がります。ただ、いまはスマホにradikoが入っている人も多く、それで足りるのかが分かりにくくなっています。

先に結論です。

  • radikoはデータ通信で聴くアプリ。圏外になれば聴けない。ラジオ放送を直接受信しているわけではない
  • ただし radiko は「128kbps以下の環境でも利用することが可能です」と公式に案内している。速度制限中でも聴ける可能性がある手段
  • 通信量は公式の目安で2時間の連続再生で約81MB、1GBで約30時間。動画や地図より格段に軽い
  • 無料で聴けるのはいまいるエリアの放送局だけ。全国の局を聴くには有料の「エリアフリー」が要る
  • 受信機のラジオを買うなら「ワイドFM対応」を確認する。総務省はワイドFMの受信に90.0MHz〜99.0MHzに対応した受信機が必要と案内している

つまり、radikoと受信機のラジオは代わりになりません。止まり方が違うので、両方あると穴が埋まります。

radikoは「ラジオ」ではなくアプリ#

いちばん誤解されやすい点です。radikoはインターネット経由で放送を配信するサービスで、電波を直接受信しているわけではありません。

だから、次の状況では使えません。

状況radiko受信機のラジオ
基地局が停止して圏外聴けない聴ける
スマホの電池切れ聴けない(乾電池で)聴ける
通信量を使い切って速度制限聴ける可能性が高い(後述)聴ける
放送局側の被災聴けない聴けない

3行目が、格安SIMユーザーにとっていちばん現実的な場面です。圏外にはなっていないが、ギガを使い切った——災害時にいちばん起きやすいのはこちらだと思います。

速度制限中でも聴ける可能性がある#

radikoは公式ヘルプで、次のように案内しています。

radiko(ラジコ)は、128kbps以下の環境でも利用することが可能です

これは災害時に効きます。格安SIMの多くは、データ容量を使い切ったあとの速度が128kbps〜1Mbps程度に制限されます。この状態では地図も動画もほぼ使い物になりませんが、radikoは想定の範囲内だということです。

契約先ごとの制限後の速度と、容量を長持ちさせる設定は災害時にデータ容量が尽きたら?にまとめています。自分の契約が制限後に何kbpsになるのかは、先に確認しておいてください。

なお「利用することが可能」という案内であって、どんな電波状況でも快適に聴けるという意味ではありません。混雑した時間帯や電波の弱い場所では途切れることがあります。平常時に一度、速度制限がかかった状態で試しておくのが確実です。

通信量の目安#

radikoが公式に示している数値です。

項目公式の記載
2時間の連続再生約81MB
1GBに達するまでの再生時間約30時間
7GBに達するまでの再生時間約214時間

前提は「一般的なスマートフォンアプリで2時間連続で番組を再生した場合」とされています。

1GBで約30時間という数字は、災害時の情報収集手段としてはかなり優秀です。3GBプランの人なら、丸1日つけっぱなしにしても容量の1割程度で済む計算になります。ニュースサイトを何度も読み込むより、むしろ軽い場合があります。

radikoは公式に「通信料金はご利用端末の料金プランによって異なります」「ご契約の携帯会社にお問い合わせください」とも案内しているので、実際の請求は自分の契約で確認してください。

無料で聴けるのは「いまいるエリア」だけ#

意外と見落とされる制約です。radikoのヘルプには次のように書かれています。

今いるエリアで放送しているラジオ局の番組のみ聴く場合は、無料(登録・ログイン不要)でご利用いただけます。

全国の局を聴ける「エリアフリー」は、ラジコプレミアム(有料)の「ダブルプラン」または「エリアフリープラン」に登録することで使える機能だと案内されています。

災害時にこれが効いてくる場面が2つあります。

  1. 避難や帰省で移動しているとき — 自宅のある地域の放送を聴きたくても、いまいるエリアの局しか無料では聴けません
  2. 離れて暮らす家族の地域の状況を知りたいとき — 実家のある地域のローカル放送は、無料では聴けません

地元の細かい情報(どの道路が通れるか、どこで給水があるか)はローカル局が強いので、遠方の家族の地域を知りたいなら有料プランが必要になるという構図です。

家族の地域の情報をどう共有するかという話は、家族の安否確認ルールの決め方とあわせて考えておくと整理しやすいと思います。

受信機のラジオを買うなら「ワイドFM対応」を見る#

スマホと別に、乾電池で動くラジオを1台持っておく意味は残ります。通信が全部止まっても聴けるのはこちらだけだからです。

選ぶときに確認したいのがワイドFMへの対応です。

ワイドFMとは#

総務省は、ワイドFM(FM補完中継局)について、AM放送の難聴対策、災害対策の目的で、AM放送の放送区域内でFM放送を使用するものと説明しています。AM放送はビルの影響などで受信できない場所が生じますが、その地域をFMの電波で補うという仕組みです。

重要なのは受信機側の条件です。総務省は、ワイドFMを受信するには90.0MHz〜99.0MHzに対応した受信機が必要だと案内しています。古いラジオでは、この帯域を受信できないことがあります。手元にラジオがあるなら、周波数の表示範囲を一度見てみてください。

なぜAMだけに頼らないほうがいいのか#

総務省は「AM局の運用休止に係る特例措置」という制度を設けており、AM放送事業者がAM局を休止してFM放送へ転換する動きが進んでいます。

つまり、いま聴けているAM局が、将来もAMで聴けるとは限りません。防災用にラジオを新しく買うなら、AMだけでなくワイドFM(FM帯)でも同じ放送が受けられる機種を選んでおくほうが、長く使えます。

ラジオも電源が要る#

乾電池で動くとはいえ、電池がなければ止まります。ラジオ本体と一緒に、対応する乾電池を備えておくのが前提です。

手回し充電やソーラー充電が付いた防災ラジオもありますが、スマホの充電手段としてあてにしすぎないのが無難です。手回しで得られる電力は小さく、スマホを実用的な残量まで充電するのは現実的ではありません。スマホの電源は電源で別に用意してください。

スマホでradikoを聴くなら、電池の消費も考える必要があります。画面を消していても再生中は電力を使います。省電力モードで何が止まるのかは災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定にまとめました。

ラジオでできないこと#

情報を受け取る手段としては強いのですが、ラジオは一方通行です。次のことはできません。

  • 家族に自分の無事を伝える
  • 特定の場所(自宅の前の道)の状況を調べる
  • 救助を要請する

安否を伝える手段は別に用意しておく必要があります。携帯4社の災害用伝言板の使い方と災害用伝言ダイヤル(171)の使い方にまとめてあります。とくに171は、格安SIMでも契約先を問わず使える点で押さえておく価値があります。

電話がつながらないときに何が起きているのか(そして何なら通りやすいのか)は災害時に電話だけつながらないのはなぜ?を、通信障害と端末側の問題の切り分けは通信障害かも?と思ったらまず確認することをご覧ください。

そもそも通信そのものを途切れさせにくくする備えとしては、別の回線網でサブ回線を持つ方法があります。格安SIMの「回線元」一覧とpovo2.0を災害用のサブ回線にするが入口です。

今日やっておくチェックリスト#

  • radikoアプリを入れて、一度再生できることを確認した
  • 自分の契約が速度制限後に何kbpsになるかを確認した
  • 実家など遠方の地域の局を聴きたいなら、エリアフリーが有料だと理解した
  • 手元のラジオが90.0MHz以上まで受信できるかを確認した
  • ラジオ用の乾電池を備えた(本体だけ買って終わりにしない)
  • 地元のAM局・FM局の周波数を紙にメモした(スマホが使えないときに探せるように)
  • 手回し充電にスマホの充電を期待しないと決めた

最後から2番目が地味に効きます。周波数を調べるのに通信が要る、という状態では本末転倒です。

まとめ#

  • radikoはデータ通信で聴くアプリ。圏外や電池切れでは使えない
  • radikoは「128kbps以下の環境でも利用することが可能」と公式に案内。速度制限中の手段として有効
  • 通信量は2時間で約81MB/1GBで約30時間。情報収集手段としては軽い
  • 無料で聴けるのはいまいるエリアの局のみ。全国の局は有料の「エリアフリー」
  • 受信機のラジオはワイドFM対応を確認する。総務省は90.0MHz〜99.0MHz対応の受信機が必要と案内
  • AM局はFM転換が進んでおり、AMだけに頼る前提で選ばない
  • ラジオは一方通行。安否を伝える手段は別に用意する

なお、自治体が出す避難情報はLアラートを通じて放送局にも共有されるため、ラジオは自治体の情報を受け取る経路としても機能します。緊急速報メールで鳴る情報と鳴らない情報の切り分けは大雨の特別警報はスマホに鳴らないことがあるに整理しました。

radikoと受信機のラジオは、どちらか一方で足りるものではありません。通信が生きているうちはradikoが軽くて便利、通信が死んだら受信機のラジオしか残らない——この役割分担で考えるのが実際的だと思います。