契約している回線が災害でダウンしたとき、他社の電波を借りられる「JAPANローミング」。2026年4月1日に始まった仕組みですが、制度として存在することと、自分の端末で実際に使えることは別です。

そして2026年7月の令和8年熊本地震では、この仕組みが実際に提供されました。さらに2026年9月には、台風第25号の影響で千葉県の一部でも提供されました。つまり「いつか使われるかもしれない制度」ではなく、すでに2度動いた仕組みとして扱う段階に入っています。

先に結論です。格安SIMユーザーが平常時に確認しておくことは3つです。

  1. 手持ちの端末がJAPANローミングに対応しているか(2026年春より前の機種は個別確認が必要)
  2. AndroidはデータローミングをONにしておく(iPhoneは設定変更不要とau公式が案内)
  3. MVNO契約ではデータ通信が「一部の事業者のみ」とされている点を知っておく

順に見ていきます。

実際に提供されたのは、2026年7月の熊本地震#

まず事実関係の確認からです。

NTTドコモの重要なお知らせによると、令和8年熊本地震の影響で2026年7月28日午後4時27分頃から熊本県の一部エリアで携帯電話サービスが利用しづらい状況となり、サービスの復旧に伴い「JAPANローミング(フルローミング方式)」は提供を終了したと案内されています(NTTドコモ|【復旧】令和8年熊本地震の影響について(7月30日午後5時00分時点))。復旧は7月30日午後5時00分頃とされています。

ソフトバンクの公式お知らせでも、同じ地震に関して「JAPANローミング(フルローミング方式)」の提供と、復旧に伴う順次終了が案内されています(ソフトバンク|【災害影響】令和8年熊本地震の影響について(7月29日午後5時00分時点))。

ここから読み取れるのは、発動は数日単位の一時的なもので、復旧すれば終了するということです。恒久的に他社の電波が使えるようになるわけではありません。

2度目は2026年9月の台風第25号(千葉県)#

2026年9月には、地震ではなく台風で2度目の提供がありました。各社の公式お知らせによると、次のとおりです。

事業者公式お知らせの内容
NTTドコモ台風25号の影響で、9月21日から東京都青ヶ島村および千葉県の一部エリアで携帯電話サービスが利用できない・しづらい状況に。「JAPANローミング(フルローミング方式)」を提供し、9月27日午前11時10分時点で復旧と案内
KDDI(au)9月25日午後1時時点のお知らせで、千葉県の木更津市・市原市・君津市・富津市などを対象に、au・UQ mobile・povo・au回線を利用するMVNOの利用者向けに「JAPANローミング(フルローミング方式)」を提供中と案内。緊急通報などの音声通話、データ通信(送受信最大300kbps)、SMSが利用できるとされた
ソフトバンク千葉県の木更津市・茂原市・勝浦市などで、ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMOの利用者向けに、9月22日午前1時30分から9月27日午後2時30分まで「JAPANローミング(フルローミング方式)」を提供(9月27日掲載のお知らせ)

出典:NTTドコモ|台風25号の影響について(第15報ほか)、KDDI|台風第25号の影響について(9月25日午後1時00分時点)、ソフトバンク|台風第25号の影響について

ソフトバンクのお知らせでは、原因は台風による停電や伝送路の故障とされています。熊本地震のときと比べると、次の点が読み取れます。

  • 地震だけでなく、台風による停電・設備故障でも提供される
  • 複数の事業者が同じ時期にそれぞれ提供している
  • 今回の提供期間は約1週間。熊本地震のとき(数日)より長かった

ここでもフルローミング方式が使われ、KDDIはMVNOの利用者も対象に含めて案内しています。ただし、MVNO契約者がデータ通信まで使えたかどうかは、次の節で説明するとおり契約先によって異なります。

2つの方式:どちらが提供されるかは状況次第#

JAPANローミングには2つの方式があり、災害・障害の状況に応じてどちらかが提供されます。

方式使えるもの提供される場面(各社の説明)
フルローミング方式音声通話・SMS・データ通信(最大300kbps)限定的なエリアの災害時
緊急通報のみ方式110・118・119 のみ規模の大きな災害時

出典:NTTドコモ|JAPANローミング、au|JAPANローミング

注意したいのは、大きな災害ほど「緊急通報のみ方式」になりうるという点です。直感に反するかもしれませんが、広域で多数の利用者が他社網に流れ込めば、受け入れ側のネットワークも持ちません。そのため大規模時は緊急通報に絞られる設計になっています。

つまり「大災害のときこそフルで使える」わけではなく、大災害のときほど、家族への連絡はJAPANローミングでは行えない可能性があるということです。ここが備えを考えるうえでの核心です。

安否確認の手段を別に用意しておく必要があるのはこのためで、具体的な手段は災害時の連絡手段まとめと携帯4社の災害用伝言板の使い方に整理しています。

なお、フルローミング方式のデータ通信は最大300kbpsです。テキスト中心のやりとりや軽いWebページなら実用になりますが、動画や大きな画像の読み込みには向きません。低速回線での通信を軽くする設定は災害時にデータ容量が尽きたら?が参考になります。

格安SIM(MVNO)契約者はどこまで使えるか#

当ブログの読者にとっていちばん重要な点です。各社の公式説明はこうなっています。

NTTドコモは「MVNOをご契約中のお客さまも、JAPANローミングの提供方式に応じて、音声通話(緊急通報・一般電話)とSMS、または音声通話(緊急通報のみ)をご利用になれます」と案内しています。

auの説明も同様で、「MVNO事業者をご利用の方も音声通話(緊急通報)、音声通話、SMSをご利用できます。(データ通信につきましては、一部のMVNO事業者のみでご利用できます)」とされています。

整理すると次のとおりです。

契約形態緊急通報音声通話・SMSデータ通信
大手・サブブランド(au/UQ mobile/povo 等)○○(方式による)○(方式による・最大300kbps)
MVNO(格安SIM)○○(方式による)一部のMVNOのみ

MVNO契約ではデータ通信が保証されないという点が、格安SIMユーザーにとっての実質的な差です。自分の契約先が「一部のMVNO」に含まれるかどうかは、契約先の公式案内で確認する必要があります。

たとえばIIJmioは、2026年4月1日から音声SIM・SMS機能付きSIMでJAPANローミングを提供していますが、2026年9月30日時点の案内ではフルローミング方式でもデータ通信は対象外、データSIMはそもそも対象外です(詳しくはIIJmioは災害時に強い?)。

mineoも2026年4月1日から音声・SMSでJAPANローミングに対応しましたが、2026年3月25日掲載のお知らせではデータ通信は利用できないとされています(詳しくはmineoは災害時に強い?)。

また、そもそも音声通話SIMでない契約(データ専用SIM)の場合、緊急通報自体が発信できないと各社が案内しています。この点は格安SIMで110番・119番はかけられる?で詳しく整理しました。JAPANローミング以前の問題として、サブ回線の契約形態を確認しておくことをおすすめします。

契約先がどの回線網を使っているか(=どの会社の障害に巻き込まれるか)は格安SIMの「回線元」一覧にまとめています。

端末が対応していなければ使えない#

制度が動いても、端末が対応していなければ恩恵は受けられません。

NTTドコモは「2026年春以降に発売する音声通話に対応する機種は両方式ともに対応」と案内しており、それ以前の機種については個別の確認が必要とされています。あわせて、「対応機種であっても、OSやソフトウェアが最新でない場合、JAPANローミングをご利用いただけない場合があります」という注意も明記されています。

確認先は各社の対応機種ページです。

事業者対応機種の確認先
NTTドコモJAPANローミング 対応機種
au(au/UQ mobile/povo)JAPANローミング 対応機種

古い端末を災害用の予備機として残している場合はとくに注意が要ります。予備端末の準備の考え方は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめました。

端末側の設定:Androidは事前にひとつ確認を#

auの対応機種ページでは、端末による違いが案内されています。

  • iPhone:設定変更をせずに利用できる
  • Android:データローミング設定を「ON」にする

Androidを使っている場合、この1点だけは平常時に済ませておく価値があります。障害が起きてから設定画面を探すのは現実的ではありません。

ここで気になるのが「データローミングをONにすると課金されるのでは」という点です。JAPANローミングについてauは「日本国内でのみご利用いただけます」としており、国内の仕組みであって海外ローミングとは別です。ただし海外渡航時の意図しない課金を避けたい場合の設定は別問題なので、渡航前の扱いはpovo・ahamoの2枚差しで海外ローミングを参照してください。

使い終わったあと、設定を戻さないと平常時につながらない#

これがいちばん見落とされやすい落とし穴です。

NTTドコモは、フルローミング方式の利用にあたって「ご利用後に必ず『自動選択』にお戻しください。JAPANローミングの提供が終了した後に、ご契約中の携帯電話サービスがご利用いただけなくなります」と案内しています。

ソフトバンクの熊本地震のお知らせでも、復旧後に表示が「SoftBank」「Y!mobile」「LINEMO」に戻ることと、ネットワークを手動選択に切り替えた場合は「自動選択」に戻すよう案内されています。戻さないと平常時の通信が利用できない、と明記されています。

つまり手順としてはこうなります。

  1. 平常時:ネットワーク選択は「自動選択」のままにしておく(触らない)
  2. 障害時:自動で他社網に切り替わる。手動選択にしていた人は自分で操作が必要
  3. 復旧後:手動に切り替えた場合は必ず「自動選択」に戻す

総務省の案内では、ローミング中のネットワーク表示が 「JPN-ROAM X」 のような通常と異なる表示になるとされています(総務省|非常時事業者間ローミング)。見慣れない表示が出ても異常ではない、と知っておくと当日あわてずに済みます。

料金の扱い#

月額使用料は無料です。そのうえで、通話料等の扱いについては各社の記載に差があります。

  • NTTドコモ:「音声通話料、SMS送信料およびデータ通信料については、JAPANローミングをご利用の場合でも、現在ご契約いただいている料金プランの条件が適用されます」
  • au:月額料金は無料で、「ご契約の料金プランに応じた通話料、SMS送信料がかかります。データ通信料はかかりません」

いずれも「ローミングだから割高になる」という説明ではありませんが、データ通信料の扱いについては表現が一致していません。契約先の記載を確認するのが確実です。

なお、災害救助法が適用される規模になると、JAPANローミングとは別に各社から支援措置(データ追加提供、支払期限の延長など)が出ます。熊本地震でもKDDIから支援措置が案内されました。内容と確認方法は災害救助法が適用されると通信各社は何をしてくれる?にまとめています。

JAPANローミングがあっても、サブ回線が不要にはならない#

ここまでを踏まえると、JAPANローミングの位置づけがはっきりします。

使える場面

  • 契約先のネットワークが大規模な障害・災害でダウンしたとき
  • 対応端末を使っていて、設定が自動選択のとき

当てにできない場面

  • 山間部などで単に電波が届いていない圏外(山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?)
  • 大規模災害で「緊急通報のみ方式」になったとき(家族への連絡は不可)
  • MVNO契約でデータ通信が必要なとき(一部事業者のみ)
  • 2026年春より前の端末で、対応が確認できていないとき

JAPANローミングは最後の受け皿であって、日常的に選べる代替回線ではありません。発動するかどうかも事業者の判断です。データ通信まで自分で確保したいなら、別の回線網のサブ回線を持っておくほうが確実です。維持費を抑えた持ち方はpovo2.0を災害用のサブ回線にする方法とサブ回線の最低維持費を比較にまとめました。

なお、KDDIはこのJAPANローミングの提供などを理由に挙げて、他社回線をバックアップに使えるオプション「副回線サービス」を2026年8月で終了しました(個人向け)。経緯と、代わりにサブ回線をどう持つかはキャリアの「副回線サービス」は2026年8月で終了したに整理しています。

今日できる確認リスト#

  • 手持ちの端末がJAPANローミング対応かを各社の対応機種ページで確認する
  • OS・ソフトウェアを最新にしておく(対応機種でも古いと使えない場合があると案内されている)
  • Androidならデータローミング設定をONにしておく
  • ネットワーク選択が「自動選択」になっているか確認する(過去に手動にしたまま忘れていないか)
  • サブ回線が音声通話付きか確認する(データ専用では緊急通報ができない)

つながらなくなったときの切り分け手順そのものは通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。JAPANローミングが提供されているかどうかも、結局は公式のお知らせページで確認することになるため、それを開くための通信手段を別に持っておくことがここでも効いてきます。

まとめ#

JAPANローミングは2026年4月に始まり、同年7月の令和8年熊本地震、9月の台風第25号(千葉県)で実際に提供されました。ただし提供は復旧までの一時的なもので、大規模災害では緊急通報のみに絞られる場合があります。

格安SIMユーザーにとっては、音声通話とSMSは対象でも、データ通信は一部のMVNOのみという点が実務上の差になります。端末の対応確認とAndroidのデータローミング設定、そして「自動選択」の維持——この3つを平常時に済ませておけば、当日にできることは増えます。