「災害に備えて2本目の回線を持つ」という話を調べていると、キャリア公式の「副回線サービス」という選択肢が出てくることがあります。au契約者がソフトバンクの電波を、ソフトバンク契約者がauの電波を、月額429円のオプションとして使えた仕組みです。

ただし、このサービスは2026年8月で個人向けの提供が終了しました。 今から申し込むことはできません。

先に結論です。

  • ソフトバンクは2026年8月24日、auは2026年8月31日をもって、個人向けの副回線サービスを終了しました(新規受付はいずれも同年2月に終了)
  • 月額429円(税込)で他社回線のデータ500MB+従量制の通話・SMSが使える仕組みでした。速度は最大300kbps
  • 終了理由としてKDDIは、00000JAPAN・au Starlink Direct・JAPANローミングの整備を公式に挙げています
  • そもそも格安SIM・サブブランドの契約者は対象外でした(povo・Y!mobile・LINEMO・MVNOは対象に含まれていません)
  • つまり当ブログの読者にとっては選択肢が減ったわけではありません。従来どおり「自分で2本目を契約する」が答えです
  • 法人向けの一部プランは継続しています

順に見ていきます。

副回線サービスとは何だったのか#

2023年に両社が始めた、メイン回線のオプションとして他社の電波を使えるサービスです。契約も請求もメイン回線とまとめられ、ワンストップで手続きできる点が特徴でした。

各社公式に記載されていた条件を並べます。

au 副回線サービスソフトバンク 副回線サービス
使う電波ソフトバンク4G/4G LTEau(auのサービスエリア)
月額基本料390円(税込429円)390円(税込429円)※個人
月間データ容量500MB500MB
通信速度送受信最大300kbps(上限超過後は月末まで最大128kbps)送受信最大300kbps(上限超過後は月末まで最大128kbps)
国内通話22円/30秒22円/30秒
SMS送信3.3円/通3.3円/通(国内宛て)
提供開始2023年3月29日2023年4月12日

注目したいのは速度です。「サブ回線を持つ」と聞くと普通の回線を想像しますが、副回線サービスは上限内でも最大300kbpsでした。テキストのやりとりや安否確認、決済アプリの通信を想定した設計で、動画視聴や大きな添付ファイルを扱う用途ではありません。

KDDIは提供開始時のリリースで、想定用途を次のように説明していました。

「通信障害や災害時などにおいても、緊急を要するご家族や医療機関との音声通話や、日常生活に欠かせないスマートフォンでの決済サービスなど…データ通信のご利用が可能」

また、au側にはauのかけ放題サービスや家族割などの対象外という注記がありました。副回線の通話は定額の対象にならず、22円/30秒がそのままかかる、ということです。

終了した日付#

個人向けは両社とも終了済みです。

新規受付終了提供終了
ソフトバンク(個人)2026年2月24日2026年8月24日
au2026年2月25日2026年8月31日

ソフトバンクの公式ページには「2026年8月24日(月)をもちまして本サービスの提供を終了しました。」と過去形で記載されています。auの「終了したサービス一覧」にも、副回線サービスが提供終了日2026年8月31日として掲載されています。

法人向けは扱いが異なります。 KDDIは、個人向け副回線サービスと法人向けの「副回線サービス(一般)」を終了する一方、法人向けの「副回線サービス(タイプS)」「副回線サービス(タイプD)」は提供を継続すると案内しています。個人で使えなくなった、というのが今回の変更点です。

終了理由は公式に書かれている#

見落としやすいのですが、KDDIは終了の理由を公式に説明しています。

「災害時の通信確保に関しては、公衆無線LANサービス『00000JAPAN』、圏外時に(au Starlink Direct)等の整備がされていることや…『JAPANローミング™』の提供も予定していることなどを踏まえ」

つまり「他の手段が整ってきたから」という説明です。ソフトバンクも終了案内のなかで、代替としてJAPANローミングと00000JAPANに触れています。

この3つは当ブログでも個別に扱っています。

ただし、この3つは副回線の完全な代わりではない#

公式の説明を否定するわけではありませんが、読者が自分の備えを決めるうえでは、3つの手段の限界を知っておく必要があります。

JAPANローミングは、自分の契約している事業者の設備が被災したときに、他社の電波を借りる仕組みです。有効な備えですが、発動するかどうかは自分では決められません。事業者側が判断して提供するものです。また当ブログで確認したとおり、MVNO契約でのデータ通信は「一部の事業者のみ」とされており、格安SIMユーザーが必ずフルに使えるとは限りません。端末の対応条件もあります。

00000JAPANも、開放するかどうかは事業者側の判断です。そしてWi-Fiが届く場所まで移動する必要があり、暗号化されていないため使いどころを選びます。

衛星経由のメッセージ(au Starlink Direct、LINEMOの提供状況)は圏外でも使えますが、対応端末・対応プランが限られ、できることは基本的にメッセージのやりとりです。

いずれも「自分で事前に用意して、自分の意思で使える手段」ではないという共通点があります。自分の手元で確実に握っておける備えは、やはり別の回線網につながる2本目の回線です。

そもそも格安SIMユーザーは対象外だった#

ここが当ブログの読者にとっていちばん重要な点です。

副回線サービスの対象は、メインブランドの音声契約者に限られていました。

  • au側:auおよびUQ mobileの音声通話対応プラン契約者(スマートフォン/ケータイ4G LTE)。povoは対象に含まれていません。タブレット・ルーターも対象外
  • ソフトバンク側:「基本プラン(音声)」「通話基本プラン」「通話定額基本料」などソフトバンク本体のプラン。Y!mobile・LINEMOは対象プランとして記載されていません

つまり、povo・Y!mobile・LINEMO・その他のMVNO(格安SIM)を使っている人は、そもそも申し込めないサービスでした。

ですから今回の終了で、格安SIMユーザーの選択肢が減ったわけではありません。もともと使えなかった選択肢がなくなったというだけです。やるべきことは前から変わっていません。

料金面でも、最安の備えではなかった#

もう一点、冷静に見ておきたいことがあります。副回線サービスは維持費として安いほうではありませんでした。

月額429円を12か月続けると年5,148円です(各社公表の月額から編集部で計算した目安)。

一方でpovo2.0は基本料0円です。公式サイトには「基本料0円※1から始められるスマホプラン」と記載されています。ただし維持には条件があり、「180日間以上有料トッピングの購入等がない場合、利用停止、契約解除となることがあります。」とされています(180日以内に国内通話料・SMS送信料等が税込660円以上に達している場合などは除く)。

この条件を満たすために最低限の課金を続ける場合の年額は、災害用サブ回線は月いくらで維持できる?で試算したとおり年500円程度です。維持の手間はかかりますが、金額では副回線サービスより一桁安く収まります。

副回線サービスの価値は、安さではなく手続きのワンストップ性でした。1社の窓口で申し込めて、請求もまとまり、回線網が確実にメインと別になる。この「迷わなくていい」という部分が失われた、というのが今回の実質的な影響です。

逆に言えば、回線網の選び方を自分で理解できれば、より安く・より速い回線で同じ備えを作れます。

今から災害用サブ回線を持つ手順#

副回線サービスの代わりを自分で組むときの手順です。

1. メイン回線の「回線元」を確認する

格安SIMは、名前が違っても電波はドコモ・au・ソフトバンクのいずれかを借りています。ここを間違えると、2本持っても同じ網の2本になり備えになりません。格安SIMの回線元一覧で確認してください。

2. メインと別の回線網のプランを選ぶ

月額と回線元の組み合わせは災害用サブ回線は月いくらで維持できる?に一覧があります。副回線サービスと同じ「au契約者がソフトバンク網を持つ」構成にしたいなら、ソフトバンク網を選べるMVNOが候補になります。

3. eSIMか物理SIMかを決める

1台のスマホで2回線を使うなら、多くの場合サブ回線はeSIMになります。判断材料はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?にまとめました。端末が壊れたあとの移し替えでは物理SIMが有利という点は、副回線サービスにはなかった論点です。

4. デュアルSIMの設定をして、実際に通信できることを確認する

手順はiPhoneのデュアルSIM設定とPixelのデュアルシム設定にあります。契約しただけ・開通していないeSIMを持っているだけでは備えになりません。

5. 維持の条件をカレンダーに登録する

povo2.0のように期間条件があるプランを選ぶなら、ここが最重要です。維持のやり方はpovoを予備回線として維持する方法に整理しています。

まとめ#

  • 個人向けの副回線サービスは、ソフトバンクが2026年8月24日、auが2026年8月31日で提供終了。新規受付はいずれも同年2月に終了しており、今から申し込む方法はありません
  • 内容は月額429円(税込)/他社網のデータ500MB/最大300kbps/通話22円・30秒。安否確認や決済を想定した細い回線でした
  • 終了理由としてKDDIは00000JAPAN・au Starlink Direct・JAPANローミングの整備を挙げています。ただしこの3つはいずれも発動や対応可否を自分では決められない手段で、2本目の回線の完全な代わりにはなりません
  • povo・Y!mobile・LINEMO・MVNOは最初から対象外でした。格安SIMユーザーにとって選択肢が減ったわけではありません
  • 金額だけなら、自分でサブ回線を契約するほうが安く済みます(副回線サービスは年5,148円)。失われたのは安さではなく手続きのワンストップ性です

キャリア公式の「まとめて申し込める備え」が個人向けからなくなった以上、回線網を自分で選んで2本目を持つという組み立てを覚えておく価値は、以前より上がっています。まずは自分のメイン回線の回線元の確認からどうぞ。

つながらなくなった当日に何をするかは通信障害かも?と思ったらまず確認することと災害時の連絡手段まとめにまとめています。