災害時の通信の備えというと、回線をもう1本増やす話になりがちです。ただその前に、機種変更で余った古いスマホが引き出しに眠っていないかを確認してみてください。

追加の契約なしでも、予備端末は備えとして機能します。ただし「置いておくだけ」では役に立たないので、事前にやっておくことがいくつかあります。

先に結論をまとめます。

  • SIMを入れなくても、Wi-Fiにつながれば連絡・情報収集はできる
  • 予備端末の価値は通信よりむしろ**「メイン端末が壊れた・電池が切れたときの代替」**にある
  • OSのサポートが終わった端末は常用せず、用途を絞る
  • 保管は50%充電・電源オフが基本(Apple公式の推奨)

順に見ていきます。

そもそも予備端末は何の役に立つのか

災害時にスマホが使えなくなる原因は、回線の障害だけではありません。

  • バッテリーが切れた(停電で充電できない)
  • 落として壊した・水没させた
  • 避難のときに置いてきてしまった

これらはサブ回線を契約しても解決しません。端末そのものがもう1台あることでしか埋まらない穴です。

逆に言えば、予備端末は「回線の備え」とは別軸の備えです。povo2.0を災害用のサブ回線にする方法で解説した回線の二重化と、両方そろってはじめて備えとして完成します。

SIMを入れなくてもできること

古い端末に回線を契約し直さなくても、Wi-Fiにつながる状態であれば次のことができます。

できること補足
Wi-Fi経由のメッセージ・通話アプリLINE、各種メッセンジャーなど
Web・SNSでの情報収集自治体や気象庁の発信を確認
災害用伝言板(web171)の利用インターネット経由で使える
オフライン地図の閲覧事前にダウンロードしておく必要あり
重要書類の写真の保管保険証・免許証・通帳などを撮影しておく
懐中電灯・ライト意外と使う場面が多い

災害時には00000JAPANなどの無料Wi-Fiが開放されることがあり、避難所や公共施設でつながる可能性があります。SIMのない端末でもWi-Fiには接続できるため、通信手段としてまったくの無力ではありません。

ただし00000JAPANは暗号化されていないため、パスワードやカード番号の入力は避けてください。詳しくは災害時の連絡手段まとめにまとめています。

なお、緊急通報(110・118・119)が予備端末から使えるかどうかは、端末の状態や事業者の対応によって変わります。「SIMを抜いた端末でも緊急通報できる」と決めつけて備えを組み立てるのは避けてください。 緊急通報の手段は、現に契約している端末を第一に考えるのが安全です。

セキュリティ:サポートが終わった端末をどう扱うか

古い端末で最大の注意点は、OSのセキュリティ更新が止まっている可能性です。更新が止まった端末は既知の脆弱性が修正されないまま残ります。

Pixelの場合はサポート期間が明示されている

Googleは公式ヘルプで、Pixelのアップデート提供期間を機種ごとに公表しています。

Google Pixel 8 以降にアップデートが提供される期間は、米国の Google ストアでのデバイス販売開始日から 7 年間です。

Pixel 6・6a・6 Pro・7・7a・7 Pro・Pixel Foldについては、

これらのスマートフォンにアップデートが提供される期間は、米国の Google ストアでのデバイス販売開始日から 5 年間です。

と記載されています。Pixel 5a以前の機種は、Androidバージョンアップデートとセキュリティアップデートの提供がすでに終了しています。

iPhoneの場合、Appleは機種ごとの年数を分かりやすい形では示していないため、最新のiOSにアップデートできるかどうかが一つの目安になります。設定アプリからソフトウェア・アップデートを確認してみてください。

サポートが切れていても使い道はある

更新が止まった端末を捨てる必要はありません。用途を絞れば予備端末として使えます

  • ネットバンキング・決済アプリは入れない
  • パスワードマネージャーなど重要なアカウントは同期しない
  • 主な用途を「ライト」「オフライン地図」「書類の写真」「ラジオ・情報収集」に限定する
  • 使わないアカウントはログアウトしておく

要は、万一その端末が乗っ取られても被害が限定される状態にしておく、という考え方です。

一歩進めて「2台目の回線」にする場合

予備端末に回線を入れれば、Wi-Fiがない場所でも使えるようになります。古いiPhone・Pixelの多くはeSIMに対応しているため、カードの差し替えなしで回線を追加できます

このとき重要なのは、メイン端末と別の通信会社(別の電波)を選ぶことです。同じ会社の回線を2台に分けても、その会社の設備が落ちれば両方使えません。

設定手順は端末ごとにまとめています。

維持費を抑えたい場合は、基本料0円から使えるpovo2.0を災害用のサブ回線にする方法もあわせてご覧ください(ただし180日ごとの課金が必要で、完全な0円維持はできません)。

なお、いま使っているeSIMを予備端末へ移す操作は、契約中の通信会社が対応しているかどうかで手順が変わります。移した時点でメイン端末の回線が止まる場合があるため、災害時にぶっつけ本番で試すのは避けてください。移行を検討する場合は、契約先の案内を事前に確認しておくことをおすすめします。

保管のしかた:バッテリーを死なせないために

予備端末でいちばんありがちな失敗が、いざ電源を入れたら充電が空で、しかも劣化して充電もできないというものです。

Appleは公式に、デバイスを長期保管する場合の推奨を示しています。

デバイスのバッテリーをフルに充電したり使い切ったりせず、50%前後充電した状態にします

バッテリーの使用量を増やさないために、電源を切ります

湿気のない、32°C以下の涼しい環境で保管します

6か月以上デバイスを保管する予定の場合は、6か月ごとに50%まで充電します

満充電でも空でもなく50%前後、というのがポイントです。満充電のまま放置するのはバッテリーによくありません。

保管場所として、車のダッシュボードや窓際は避けてください。32°Cを超えやすい環境です。

この「6か月ごとに充電」は忘れやすいので、povo2.0の180日ごとのトッピング購入同じタイミングでカレンダーに登録しておくと管理が楽になります。どちらも半年周期なので相性がよいです。

今日やっておくチェックリスト

  • 引き出しの中の古いスマホを探す
  • 初期化するか、不要なアプリ・アカウントを削除する
  • Wi-Fiに接続できることを確認する
  • オフライン地図をダウンロードしておく
  • 保険証・免許証・保険証券などを撮影して保存する
  • 家族の電話番号を端末内にメモしておく(クラウド頼みにしない)
  • 決済・銀行系アプリが入っていないか確認する
  • 50%まで充電して電源を切り、涼しい場所に保管する
  • 半年後の充電をカレンダーに登録する
  • 充電ケーブル(その端末に合うもの)を一緒に保管する

最後の項目は見落としがちです。古い端末がmicroUSBやLightningの場合、いまのケーブルでは充電できません。端末とケーブルはセットで保管してください。

まとめ

  • 予備端末は「回線の備え」とは別軸の、端末が失われたときの備え
  • SIMがなくてもWi-Fiにつながれば連絡・情報収集はできる
  • OSのサポートが終わった端末は用途を絞って使う(決済・銀行系は入れない)
  • 保管は50%充電・電源オフ・涼しい場所、半年ごとに充電
  • 端末と充電ケーブルはセット

お金をかけずにできる備えとしては、優先度の高い部類だと思います。回線を増やす前に、まず手持ちの端末を1台立ち上げておくところから始めてみてください。

回線側の備えについてはpovo2.0を災害用のサブ回線にする方法、契約なしでできる備え全般は災害時の連絡手段まとめで解説しています。

予備端末に回線を移せるかどうかは、SIMの種類で変わります。物理SIM(SIMカード)なら抜いて差せばその場で使えますが、eSIMは再発行や転送の手続きが必要で、その手続きにインターネット接続が要ります。詳しくは災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?をご覧ください。

なお、予備端末を用意しても充電手段がなければ使えません。災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?では、必要な容量の考え方とPSEマークの確認方法をまとめています。停電が続く状況で何から充電するかは、停電中にスマホをどう充電する?で整理しています。


この記事の情報について:本記事はApple公式「バッテリーの性能を最大限に引き出す」(apple.com/jp/batteries/maximizing-performance/)およびGoogle Pixel公式ヘルプのアップデート提供期間に関する記載をもとに、2026年7月20日時点で確認した内容です。サポート期間・提供条件は変更される場合があります。緊急通報やeSIMの移行可否など、端末・契約先によって扱いが異なる事項は、必ずご利用中の通信会社と端末メーカーの公式情報をご確認ください。