災害時の通信の備えとして、モバイルバッテリーを用意している方は多いと思います。ただ、停電が数日続いたら、そのモバイルバッテリー自体をどこで充電するのか——ここまで考えている方は意外と少ないのではないでしょうか。

スマホがつながっても、電池がなければ何もできません。この記事では、停電中にスマホを充電する手段を、公的機関が公表している情報をもとに整理します。あわせて、やると命に関わる方法も明確に書きます。

結論:現実的な選択肢は4つ、NGは1つ

先に要点をまとめます。

手段使える条件
① モバイルバッテリー事前に充電してあること(最優先の備え)
② 車から給電する電動車(EV・HV・PHV・FCV)なら車内コンセントや給電端子から
③ 住宅用太陽光の自立運転機能自宅に太陽光発電設備があり、機能が付いている場合
④ 携帯ショップ・避難所の無料充電事業者が支援を実施した場合。契約先を問わないことがある

そして絶対にやってはいけないのが、発電機の屋内使用です。消費者庁・経済産業省・製品評価技術基盤機構(NITE)は「屋内では絶対に使用しないでください」と明記しています。詳しくは後述します。

その前に:停電しても回線は生きていることがある

充電の話の前に、前提を一つ。停電=スマホが圏外、とは限りません。

総務省の令和5年版情報通信白書によると、電気通信事業者各社は東日本大震災の教訓から停電対策を強化しており、移動電源車や可搬型発電機の増配備、基地局バッテリーの強化が行われています。つまり停電中でも、基地局が生きている限り通信できる可能性があります。

だからこそ、手元の端末の電池を保たせる意味があります。逆に言えば、停電が長引けば基地局側の電源も限界を迎え得るということでもあります。

つながらなくなったときに、それが停電由来の障害なのか端末側の問題なのかを切り分ける手順は、通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。

① まずはモバイルバッテリー(ただし満充電が前提)

一次的な備えはやはりモバイルバッテリーです。ここでの注意点は単純で、使うときに充電されていなければ意味がないということ。

容量の決め方(mAhの数字だけでは必要量が決まらない理由)や、PSEマークの確認方法は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?で解説しています。

家族の複数台を何日も充電し続ける想定なら、ポータブル電源も候補になります。容量(Wh)と定格出力(W)の見方、NITEが挙げる安全上の注意は災害用ポータブル電源の選び方にまとめました。ただし高温になる車内に積みっぱなしにしないことが前提です。

そして、充電手段を増やすことと同じくらい効くのが消費を減らすことです。iPhoneの低電力モード、Androidのバッテリーセーバーには「オンにすると止まる機能」があるので、副作用を理解したうえで使ってください。詳しくは災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定にまとめました。

② 車から給電する:電動車なら「非常用電源」になる

資源エネルギー庁は、電動車を災害時の非常用電源として活用する方法を公表しています。経済産業省が国土交通省と連携して『災害時における電動車の活用促進マニュアル』を作成しており、その内容が解説されています。

ここでいう「電動車」は、**電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)**の4タイプです。

実際、2019年の台風15号で停電が長引いた千葉県内の被災地には自動車メーカー各社が電動車を派遣し、携帯電話の充電をはじめエアコン・扇風機・冷蔵庫・照明などへの電力供給が行われました。

給電の方法は2通り

資源エネルギー庁の解説によると、電動車から電気を取り出す方法は次の2つです。

  1. 車内の100Vコンセントから給電する 車室内に100V電源用コンセントがある場合、所定の方法で使用可能な状態にすると家電の電源として使えます。最大出力は1500W。ただしコンセントが標準装備ではない電動車もあり、手順は車種によって異なるため、メーカーの取扱説明書を確認してください。
  2. 「給電端子」を使って給電する EVやPHVは急速充電用の給電口(CHAdeMO端子)から、FCVは給電口から、別売の「可搬型給電器」や「充放電設備」につなぐことで給電できます。避難所や店舗の電力をまかなえる規模です。

スマホの充電程度であれば1500Wの枠は十分ですが、使えるのは「今日いきなり」ではありません。手順が車種ごとに違う以上、平常時に取扱説明書を確認して一度試しておくことが実質的な備えになります。

給電するときの注意点(公式マニュアルより)

資源エネルギー庁の解説では、車内コンセントから給電する際の注意点として次が挙げられています。

車両側

  • 車両を発進させないよう、シフトはPポジションにしてパーキングブレーキをかける
  • 地面が固く平らな場所に駐車し、できれば輪止めを設置する
  • コードリールを用いる場合、発熱防止のためコードはすべて引き出して使用する
  • 発熱する可能性があるため、たこ足配線はしない
  • HVやPHVはエンジンが作動することがあるため、換気の良い場所に停める

電気製品側

  • 使用できるのはAC100V・最大消費電力1500W以下の電気製品
  • 振動や極寒地・炎天下での使用が原因で電気製品が故障する可能性がある
  • 一時的に出力が断たれることもあるため、医療機器には使用しない

「HVやPHVはエンジンが作動することがある」という点は特に重要です。ガレージや締め切った空間での給電は避けてください。

冬の車内でエンジンをかけ続けるときの重大な注意

車を電源として使う場面では、雪の日の一酸化炭素(CO)中毒にも触れておく必要があります。

JAFのユーザーテストでは、雪に埋まった車でエンジンをかけたままマフラー周辺を除雪しなかった場合、開始直後から車内のCO濃度が上がり、16分後に短時間暴露限度の400ppmに達し、その後6分で測定上限の1,000ppmに到達しました。一方、マフラー周辺を除雪した場合は終始COがほとんど検知されなかったとされています。窓を開ける対策では危険性は軽減されませんでした。

JAFは、車の周囲の状況や風向き、エアコンの設定によって結果は変わるため、テストで安全だった条件でも危険になる場合があると注記しています。雪の日に車内で電源を取るなら、排気口周辺の除雪が前提だと考えてください。

③ 住宅用太陽光発電の「自立運転機能」

自宅に太陽光発電設備がある場合、資源エネルギー庁は次のように案内しています。

自宅の屋根などに設置されている太陽光発電設備に「自立運転機能」がついている場合には、停電時にも電気を使うことができます

ただし同時に、感電の危険がないか十分に確認してから使用するよう注意が添えられています。

また、これは全世帯に関わる話ですが、資源エネルギー庁は太陽光発電設備は破損したり水に浸かっている場合でも、太陽光があたり続けている間は発電を続けるため、感電防止の観点からむやみに近づかないよう呼びかけています。被災した太陽光パネルは「発電していないはず」と思い込まないでください。

自立運転機能の操作方法は設備によって異なります。こちらも平常時に切り替え手順を確認しておくのが現実的な備えです。

④ 携帯ショップ・避難所の無料充電:契約先を問わないことがある

ここは格安SIMユーザーにとって知っておく価値がある点です。

NTTドコモは、公式サイトで**「災害時にはドコモショップ・避難所などで無料充電サービスを提供いたします」**と案内しています。

さらに、2024年1月2日のドコモの報道発表(令和6年能登半島地震に伴う支援措置)では、石川県・富山県・福井県・新潟県の営業中のドコモショップで実施された無料充電サービスについて、**「現在ご利用いただいている通信キャリアを問わずご利用いただけます」**と明記されていました。

つまり過去の事例では、ドコモと契約していない人——格安SIMユーザーを含む——も対象とされていました。ただしこれは災害ごとの支援措置であり、毎回同じ条件で提供されるとは限りません。実際に利用する際は、そのときの各社の発表内容を確認してください。

なお、避難所では充電と同時にWi-Fiが開放されることもあります。災害時の無料Wi-Fi「00000JAPAN」は暗号化されていないため、使ってよい用途とダメな用途があります。00000JAPANの安全な使い方を先に読んでおくことをおすすめします。

絶対にやってはいけないこと:発電機の屋内使用

ここが、この記事でいちばん強く伝えたい点です。

消費者庁は経済産業省・NITEと同時に、2023年8月29日付で「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意」という注意喚起を公表しています。そこには次のように書かれています。

屋内では絶対に使用しないでください。発電機運転中の排ガスには一酸化炭素が含まれており、屋内で使用すると一酸化炭素中毒になるおそれがあります。

さらに、屋外で使う場合についても条件が示されています。

  • 自動車内やテント内で使用すると屋内と同等以上の危険性がある
  • 排ガスが逆流しないよう、出入口・窓など開口部から離れた、風通しの良いところで使用する

資源エネルギー庁も同様に「停電した時に発電機を使用する場合、屋内ではぜったいに使わないでください」「屋外で使用する場合でも、排気ガスが屋内に入るような設置はしないように」と案内しています。

一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには動けなくなっていることがあります。スマホの充電のために命を落とす事故を起こさない——ここは妥協しないでください。

停電が復旧するときの「通電火災」にも注意

あわせて覚えておきたいのが通電火災です。停電直前まで使っていた電化製品は、電気が復旧すると急に通電します。地震で電化製品が倒れたり損傷していると、そこから出火する危険があります。

公的機関が案内している対策は次のとおりです。

  • 停電時は、電気こんろや電気ストーブなどの電熱器具の電源プラグをコンセントから抜く(消費者庁)
  • 避難のため家を離れる時は、必ずブレーカーを切っておく(資源エネルギー庁)
  • 復旧後、異音や異臭がする場合は使用を中止し、メーカーや販売店に相談する(消費者庁)

また、被災して切れた電線や倒れた電柱は感電のおそれがあるため、近づいたり触れたりせず、電力会社(一般送配電事業者)に連絡してください。

停電したら最初にやること

充電手段の前に、まず状況把握です。資源エネルギー庁は次の手順を案内しています。

  1. 家の中の電気が全部消えているか、一部だけかを確認する
  2. 全部消えていて近所も同じなら、地域の電力会社(一般送配電事業者)へ連絡する
  3. 近所は電気がついていて自宅だけなら、ブレーカーの状況を確認する
  4. 停電の範囲・復旧状況は、地域の一般送配電事業者のホームページ・アプリ・SNSで確認する

各エリアの一般送配電事業者は停電情報をホームページやアプリで公開しています。自分の地域の事業者名と停電情報ページを、平常時に調べてブックマークしておくとスムーズです。

今日できるチェックリスト

  • モバイルバッテリーを満充電にしておく(容量の選び方
  • 省電力モードの副作用を把握しておく(電池を長持ちさせる設定
  • 電動車に乗っているなら、取扱説明書で給電手順を確認し、一度試しておく
  • 車に積むUSBケーブル・カーチャージャーを常備しておく
  • 自宅に太陽光発電設備があるなら、自立運転機能の有無と切り替え手順を確認しておく
  • 自分の地域の一般送配電事業者と停電情報ページを調べておく
  • 発電機を持っているなら「屋内・車内・テント内で使わない」を家族全員で共有しておく
  • 避難時にブレーカーを切ることを家族で決めておく

まとめ

停電中の充電手段は、事前のモバイルバッテリー → 車(電動車)→ 太陽光の自立運転 → 携帯ショップ・避難所の無料充電という順で考えると整理しやすくなります。

そして共通しているのは、どれも「その場で調べる」では間に合わないということです。電動車の給電手順も、太陽光の自立運転も、平常時に一度試しておくかどうかで結果が変わります。

また、停電中に止まるのはスマホの充電手段だけではありません。自宅のWi-Fiとひかり電話も同時に止まります。NTT東日本は「停電時は緊急通報を含む通話ができません」と明記しており、この前提でスマホ側を用意しておく必要があります。詳しくは停電すると自宅のWi-Fiと固定電話は止まるにまとめました。

電源を確保できたら、次は連絡手段です。災害時に何が使えるかは災害時の連絡手段まとめに、家族の安否確認の具体的な方法は携帯4社の災害用伝言板の使い方にまとめています。

充電できる端末を増やすという意味では、引き出しに眠っている古いスマホも戦力になります。SIMなしでできることは古いスマホを災害用の予備端末にするで解説しました。

それでも端末が使えなくなった場合の最終手段は公衆電話です。停電時でも硬貨でかけられる仕組みは災害時の公衆電話の使い方にまとめています。


この記事の情報について:本記事は資源エネルギー庁「あらためて学ぶ、『停電』の時にすべきこと・すべきでないこと」および「災害時には電動車が命綱に!?xEVの非常用電源としての活用法」、消費者庁「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!~災害をきっかけにした製品事故を防ぎましょう~」(消費者庁・経済産業省・NITE、2023年8月29日)、総務省「令和5年版 情報通信白書」、NTTドコモ「災害時に知っておきたいこと」および報道発表「令和6年能登半島地震に伴う支援措置について」(2024年1月2日)、JAFユーザーテスト「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意」をもとに、2026年7月31日時点で確認した内容です。支援措置の実施条件や設備の仕様は変更される場合があります。緊急時は自治体・消防・警察等の公的な案内に従ってください。