サブ回線を用意しても、モバイルバッテリーを備えても、災害時に「スマホがまったく使えない」状況は起こり得ます。基地局の停止、端末の水没、電池切れ——理由はさまざまです。

そのときに残る手段が公衆電話です。格安SIMかキャリアかは関係ありません。契約も端末も不要で、硬貨さえあれば使えます。

ただし、いざ目の前にしたときに「どう操作するのか分からない」「小銭を持っていない」では意味がありません。この記事では公式情報をもとに、災害時の公衆電話の使い方と、いま準備できることを整理します。

結論:先に押さえる5点

  • 公衆電話は災害時に電話が混み合って通信規制がかかっても、規制の対象外として優先的に扱われる(総務省資料)
  • 停電時でも硬貨での発信・緊急通報はできる。テレホンカードでの発信はできない(NTT西日本の停電時対応表)
  • 110・118・119は硬貨やカードなしでかけられる。ただし機種によって「緊急通報ボタン」を押す必要がある
  • 大規模災害では通話料が無料化されることがある。無料化時の操作も機種によって異なる
  • 避難所などには**無料で使える災害時用公衆電話(特設公衆電話)**が事前配備されており、設置場所は公開されている

以下、それぞれ具体的に見ていきます。

なぜ災害時に公衆電話が強いのか

総務省の資料では、公衆電話は**「災害時優先電話」**として位置づけられています。災害などの緊急時に電話が混み合い通信規制が実施される場合でも、公衆電話は規制の対象外として優先的に取り扱われます。

大きな災害の直後、携帯電話がつながりにくくなるのは端末や回線の故障だけが理由ではなく、輻輳(ふくそう)を避けるための通信規制がかかるためでもあります。手持ちのスマホが「圏内なのにつながらない」状態でも、公衆電話なら通話できる可能性があるわけです。

この輻輳と通信規制がどういう仕組みで、そのとき携帯側では何が通りやすいのかは災害時に電話だけつながらないのはなぜ?で詳しく整理しています。

自分の回線が使えない原因が障害なのか端末側なのかを切り分ける手順は、通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。

使い方は「緊急通報ボタンの有無」で変わる

NTT西日本の案内では、公衆電話機は緊急通報ボタン(赤いボタン)があるタイプないタイプに分けて説明されています。操作手順が違うので、目の前の機種がどちらかをまず見てください。

緊急通報ボタンがある機種

場面操作
通常時①受話器を上げる ②テレホンカードを挿入するか硬貨を投入すると発信音(ツー)が聞こえる ③ダイヤルする
緊急通報(110・118・119)①受話器を上げる ②緊急通報ボタン(赤いボタン)を押すと発信音が聞こえる ③緊急通報番号をダイヤルする
災害等にともなう無料化の実施時①受話器を上げる ②硬貨を投入するかテレホンカードを挿入すると発信音が聞こえる ③ダイヤルする(通話終了後、硬貨はそのまま戻ります

無料化されていても、このタイプはいったん硬貨やカードを入れる必要がある点に注意してください。硬貨は通話後に戻ります。

緊急通報ボタンがない機種

場面操作
通常時①受話器を上げると発信音が聞こえる ②テレホンカードを挿入するか硬貨を投入する ③ダイヤルする
緊急通報(110・118・119)①受話器を上げる ②発信音が聞こえる ③緊急通報番号をダイヤルする(硬貨・カード不要
災害等にともなう無料化の実施時①受話器を上げると発信音が聞こえる ②そのままダイヤルする

いずれの機種でも、緊急通報には硬貨もカードも要りません。小銭がなくても110番・119番はかけられます。

格安SIMのスマホから緊急通報がかけられるかどうかについては、格安SIMで110番・119番はかけられる?で契約形態別に整理しています。

停電したときに何ができるか

ここが公衆電話の要です。NTT西日本が公開している停電時の対応表では、次のように整理されています。

機能ディジタル公衆電話(グレーまたは緑色)アナログ公衆電話(緑色)
通話(硬貨発信)○(注)
通話(カード発信)××
緊急通話(110・118・119)
無料通話
ディスプレイ表示×
受話音量調節×
音声ガイダンス××

停電時にテレホンカードは使えません。 硬貨は使えます。ここを取り違えると、カードだけ持っていても発信できないことになります。

注意点が2つあります。

  1. ディジタル公衆電話について、NTT東日本のよくあるご質問には**「ディジタル公衆電話のバッテリにて稼働しますが、バッテリが切れるとご利用できません」**という記載があります。停電が長引けば使えなくなる可能性があります
  2. NTT西日本の案内によると、通話中に停電が発生した場合は一度通話が切断され、カードまたは硬貨が戻るため、かけ直しが必要になります

備えとしては、10円硬貨を多めに防災用品に入れておくのが無難です。硬貨の種類やつり銭の扱いは機種・条件によって案内が異なるため、少額硬貨をまとめて持っておくほうが確実です。

停電そのものへの備え、つまりスマホの電源をどう確保するかは災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?で解説しています。

通話料が無料になるのはどんなとき?

NTT西日本の公衆電話インフォメーションでは、無料化の条件が次のように説明されています。

災害救助法の適用が想定される規模の災害によって、交通機関の遮断等の社会的混乱が発生し(中略)必要と判断される場合には、公衆電話から発信する際の通話料等が無料となる

つまり自動的に常に無料になるわけではなく、事業者の判断で実施される措置です。「災害が起きたら公衆電話はタダ」と覚えてしまうと、小銭を用意しないまま被災することになります。無料化されていない前提で硬貨を準備しておくのが安全です。

避難所の「災害時用公衆電話(特設公衆電話)」

もうひとつ知っておきたいのが、**災害時用公衆電話(特設公衆電話)**です。

NTT東日本・西日本は、災害時の通信手段を確保するため、避難所となる施設などにあらかじめ電話回線と電話機を配備しています。特徴は次のとおりです。

  • 被災者が無料で利用できる
  • 通常時は利用できない(災害発生時などに運用が開始される)
  • 事前配備されている設置場所は公開されており、事前に検索できる

設置場所は、NTT東日本管内は「災害時用公衆電話設置場所」の検索ページ、NTT西日本管内は災害の備え・対策サイトの災害時用公衆電話ページから確認できます。自分の避難先に配備があるかどうかを、平時に一度見ておくと安心です。

電話をかける前に「番号」がないと意味がない

公衆電話にたどり着いても、かける相手の電話番号を覚えていないという問題があります。スマホの電池が切れていれば連絡先も見られません。

対策はアナログですが確実です。

  • 家族・職場・学校の電話番号を紙に書いて財布や防災ポーチに入れておく
  • 子どもにも公衆電話の使い方と、かける番号を教えておく

あわせて、災害用伝言ダイヤル(171)は公衆電話からも利用できます。NTT東日本の案内では、171は固定電話・携帯電話・PHSのほか公衆電話からも利用できるサービスとして案内されています。家族が電話に出られなくても、伝言を残すことはできます。171にかけたあとの操作手順(1で録音・2で再生)や、登録できる電話番号の条件は災害用伝言ダイヤル(171)の使い方にまとめました。

伝言板・伝言ダイヤルの使い分けと、格安SIMだと登録できないケースについては携帯4社の災害用伝言板の使い方にまとめました。家族での取り決め方も含めて、事前に一度読んでおくと本番で迷いません。

今日できることチェックリスト

  • 自宅・職場・子どもの学校の近くにある公衆電話の場所を設置場所検索で確認する
  • 避難先に**災害時用公衆電話(特設公衆電話)**の事前配備があるか確認する
  • 10円硬貨を防災ポーチ・財布に入れておく
  • 家族の電話番号を紙に書いて持ち歩く
  • 子どもに公衆電話の使い方(受話器を上げる→硬貨を入れる→ダイヤル)を教える
  • 停電時はテレホンカードが使えないことを覚えておく
  • 安否確認の方法(171・web171)を家族で決めておく

まとめ

公衆電話は、契約している回線が格安SIMでもキャリアでも関係なく使える、災害時の共通の逃げ道です。

  • 通信規制の対象外として優先的に扱われる
  • 停電時も硬貨なら発信できる。カードは不可
  • 緊急通報は硬貨・カード不要(機種により緊急通報ボタンを押す)
  • 無料化は自動ではない。小銭は自分で用意しておく
  • 避難所の特設公衆電話は無料、設置場所は事前に調べられる

スマホの備えと公衆電話は競合しません。回線・電源・最終手段の3段構えで考えるのが現実的です。災害時の連絡手段全体の整理は災害時の連絡手段まとめを、自分の回線が使えないときのWi-Fiについては00000JAPANの安全な使い方をあわせてご覧ください。

なお、公衆電話を最終手段として使うには家族の電話番号を紙で持っている必要があります。番号を暗記している人はほとんどいません。紙に何を書いておくかを含め、事前に決めておくことは家族の安否確認ルールの決め方にまとめました。


この記事の情報について:本記事は、NTT西日本「公衆電話の種類と利用方法について(公衆電話インフォメーション)」、NTT西日本「災害対策(公衆電話インフォメーション)」、NTT東日本「公衆電話インフォメーション」および「お問合せ(よくあるご質問)」、NTT東日本「事前配備の災害時用公衆電話(特設公衆電話)の設置場所」「災害時における避難所への災害時用公衆電話(特設公衆電話)の設置」、NTT西日本「災害時用公衆電話概要」、NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」、総務省「公衆電話の特徴と使用方法」の各情報をもとに、2026年7月30日時点で確認した内容です。公衆電話の機種によって操作・機能は異なり、無料化の実施は事業者の判断によります。提供条件は変更される場合がありますので、最新の情報は各社の公式サイトでご確認ください。緊急時は自治体・消防・警察等の公的な案内に従ってください。