災害用伝言板の使い方を調べると、たいてい「電話番号を入力して検索する」と書かれています。ここで見落とされがちなのが、電話番号を知らない相手は、伝言板では探せないという点です。

親戚、実家の近所の人、子どもの友人の家族。連絡先アプリに番号が入っていない相手は少なくありません。

先に結論です。

  1. 携帯4社の伝言板もweb171も、登録・確認のキーは電話番号。名前では引けない
  2. 名前をキーに探せる公開サービスは、現状Googleパーソンファインダーが中心
  3. かつて名前検索の入口だった「J-anpi」は2023年9月30日に運営終了している。古い記事の案内は使えない
  4. パーソンファインダーは入力内容がすべて公開される。書く内容は選ぶ必要がある
  5. 自分の側の備えとしては、連絡先のバックアップで相手の番号を失わないことが先

順に見ていきます。

① 伝言板の検索キーは電話番号#

まず、既存の安否確認サービスが何をキーにしているかを整理します。

NTT東日本・西日本の災害用伝言板(web171)について、公式では次のように説明されています。

被災地域(避難所等含む)の居住者がインターネットを経由して伝言板サイトにアクセスし、電話番号をキーとして伝言情報(テキスト)の登録が可能なサービスです。登録された伝言情報は、電話番号をキーとして全国(海外も含む)から閲覧、追加伝言登録が可能となります

キーにできる電話番号は、加入電話・ISDN・ひかり電話・携帯電話・PHS・IP電話の番号です(固定電話は市外局番から入力)。

携帯電話会社側も同じです。NTTドコモの災害用伝言板は、公式ページで「登録された安否情報を、携帯電話番号を入力して検索・閲覧できます」と案内されています。

つまり、伝言板は「番号は知っているが連絡がつかない相手」を探す道具です。番号そのものを知らない相手には使えません。各社の伝言板の違いと、格安SIMだと自分の安否を登録できない場合がある点は携帯4社の災害用伝言板の使い方にまとめています。音声で残す災害用伝言ダイヤル(171)も、キーは電話番号です。

② 名前検索の入口だった「J-anpi」は終了している#

2012年から提供されていた「J-anpi 〜安否情報まとめて検索〜」は、氏名や電話番号で複数の提供元の安否情報をまとめて検索できるサービスでした。名前で探せる数少ない入口として紹介されることが多かったのですが、すでに運営を終了しています。

NTTの公式告知によると、終了は2023年9月30日(土)15時。理由は次のように説明されています。

通信キャリア各社の災害伝言板の連携が進んだことで、「J-anpi」を介さずに災害伝言板同士の横断検索が実現していることから、「J-anpi」運営開始当初の役割は果たされた

終了後の案内先として挙げられているのは、NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンク/ワイモバイル・楽天モバイルの各災害用伝言板と、NTT東日本・西日本のweb171です。

ここで注意したいのは、代替として案内されているのはいずれも電話番号キーのサービスだという点です。伝言板同士が横断検索できるようになったのは事実ですが(この仕組みは携帯4社の災害用伝言板の使い方で解説しています)、それによって「名前で探せるようになった」わけではありません。

防災系の古い記事には、いまだにJ-anpiを前提とした手順が残っています。災害が起きてから開いてつながらない、という事態を避けるため、ブックマークや家族向けのメモにJ-anpiが入っていないか確認しておくといいでしょう。

③ 名前で探すならGoogleパーソンファインダー#

現在、名前をキーに安否情報を検索できる公開サービスとして中心的なのが、Googleパーソンファインダーです。Googleのヘルプでは次のように説明されています。

個人が、災害の影響を受けた親類や友人の状況を掲示したり検索することができるウェブアプリケーション

日本向けのページは https://www.google.org/personfinder/japan です。画面は「人を探している」「安否情報を提供する」の2択から始まり、探す側の入力欄は「名前(必須)」です。電話番号ではなく名前が必須項目になっている点が、伝言板との決定的な違いです。

覚えておきたい性質が3つあります。

1. 情報はすべて公開される

パーソンファインダーのページには、次の注記が出ています。

注: 入力したデータはすべて公開され、誰でも使用できます。Google では、データの正確性の確認は行っていません。

さらに「Google は、災害対応の取り組みに参加している公的機関や民間団体とデータを共有することがあります」とも記載されています。伝言板のように「番号を知っている人だけが見る」仕組みではないため、住所や勤務先など、そこまで書く必要のない情報は書かないという判断が要ります。

災害時は安否情報に見せかけた詐欺やデマも出回ります。公開されている情報を手がかりにした連絡には注意が必要で、この点は災害時のデマ・詐欺SMSへの対処もあわせて確認しておくと判断しやすくなります。

2. 正確性はGoogleが保証しない

上の注記のとおり、Googleは内容を検証しません。見つかった記録が本人のものとは限らず、第三者が善意で登録したものも混ざります。「見つかった=確定」ではないという前提で扱うものです。

3. 記録は永久には残らない

Googleのヘルプでは、レコードの有効期限について次のように説明されています。

ユーザーがレコードを作成する際に、そのレコードの有効期限を設定するようにお願いしています

設定された日付でレコードは期限切れとなり、閲覧も検索もできなくなります。ユーザー自身が期限の延長や削除をいつでも行えます。また、災害が沈静化するとGoogleはそのリポジトリ自体を取り下げるため、実質的にすべてのレコードが期限切れになります。あとから見返せる記録ではないということです。

④ デモ版で操作を試しておける#

伝言板に毎月1日・15日などの体験利用日があるのと同じで、パーソンファインダーにも試せる場所があります。デモ用のリポジトリです。

デモ画面には次の案内が出ています。

現在、体験版としてサービス提供中です。体験版では、24 時間以上が経過した記録は削除されます。

実際の災害用リポジトリを汚さずに、検索と登録の流れを一度なぞっておけます。災害時に初めて触る画面を減らしておくという意味では、伝言板の体験利用日と同じ価値があります。

ただし体験版も「入力したデータはすべて公開され、誰でも使用できます」という条件は同じです。練習のつもりで本名や実際の連絡先を入れないようにしてください。

⑤ 結局、いちばん効くのは「番号を失わないこと」#

ここまで見てきたとおり、名前で探す手段は存在はするものの、確実性は高くありません。情報が登録されていなければ見つからず、見つかっても正確とは限らないからです。

現実的な優先順位は、こうなります。

  1. 相手の電話番号を持っておく。番号さえあれば伝言板・171という確実な経路が使える
  2. 番号をスマホ以外にも残す。端末が壊れる・水没する・電池切れになると連絡先ごと失う
  3. その上で、番号のわからない相手を探す最後の手段としてパーソンファインダーを知っておく

1と2は事前にしかできません。連絡先をクラウドと紙の両方に残しておく方法は災害に備えた連絡先のバックアップにまとめています。端末が水没した場合の復旧手順はスマホが水没したときの対処が参考になります。

また、家族については「誰がどこに登録するか」を先に決めておくほうが、探す手間そのものが減ります。家族の安否確認ルールの決め方で具体的な決め方を整理しています。位置情報の共有を併用する場合は災害前に家族と位置情報を共有しておくもあわせてどうぞ。

⑥ 今日やっておくチェックリスト#

  • 家族・親戚の電話番号がスマホ以外にも残っているか確認する
  • 防災メモやブックマークにJ-anpiが残っていないか確認し、残っていれば消す
  • パーソンファインダー(日本)をブックマークしておく
  • デモ版で検索と登録の画面を一度見ておく(本名・実際の連絡先は入れない)
  • 自分の安否はweb171か契約先の伝言板に登録すると家族で決めておく

まとめ#

  • 携帯4社の伝言板もweb171も、キーは電話番号。名前では引けない
  • 名前検索の入口だったJ-anpiは2023年9月30日に運営終了。古い手順は使えない
  • 名前で探せるのはGoogleパーソンファインダー。ただし全内容が公開され、Googleは正確性を検証しない
  • レコードには有効期限があり、災害が収まればリポジトリごと取り下げられる
  • 最も効くのは相手の電話番号を事前に失わないこと

格安SIMかどうかに関係なく、ここは全員に共通する話です。回線の備えを整える前に、連絡先のバックアップを済ませておくほうが効果は大きいはずです。