災害のあと家族と連絡が取れないとき、「今どこにいるか」がわかるだけで動き方は変わります。位置情報の共有は、そのための手段のひとつです。

ただしこの機能は、設定してあるかどうかがすべてです。連絡が取れなくなってから相手に共有を頼むことはできません。

先に結論です。

  1. 位置情報の共有は通信事業者ではなくApple ID/Googleアカウントの機能。格安SIMでも扱いは変わらない
  2. ただし相手の端末が通信できなくなった時点で更新は止まる。表示されるのは「最後に確認された位置」
  3. 通信が切れても位置がわかることがあるのは、「人の共有」ではなく「デバイスを探す」側の仕組み
  4. だから位置情報の共有は、災害用伝言板171代わりにはならない。併用するもの

順に見ていきます。

① 位置情報の共有は「回線」ではなく「アカウント」の機能

まず、格安SIMユーザーが気にしがちな点から整理します。

iPhoneの「探す」はApple ID、Googleマップの現在地の共有はGoogleアカウントに紐づく機能です。どちらもApple・Googleの公式サポートでは契約している通信事業者による可否の区別は案内されていません。ドコモでもpovoでもIIJmioでも、設定手順は同じです。

この点は、携帯4社の災害用伝言板が契約先によって使える・使えないが分かれるのとは対照的です。安否確認の手段としては、契約先を問わずに使える数少ない選択肢といえます。

ただし例外がひとつあります。iPhone 14以降の衛星経由の「探す」には有効なSIMが必要だとAppleが明記しており、こちらは回線の状態が関係します。詳しくはiPhoneの衛星機能は格安SIMでも使える?にまとめました。この機能も「あらかじめ位置情報を共有している相手にしか送れない」ため、結局は平常時の設定が前提になります。

② iPhone:「探す」の「人を探す」で共有する

iPhone・iPadでは「探す」アプリを使います。Appleのパーソナルセーフティガイドでは、共有している相手の確認方法として、画面下部の**「人を探す」**をタップすると位置情報を共有している人の一覧が表示される、と案内されています。

ファミリー共有を使う場合の注意

ファミリー共有を設定している家族なら、まとめて共有できます。ただしAppleは次のように明記しています。

ファミリー共有を設定して位置情報の共有を使用すると、家族が自動的に「人を探す」タブに表示されますが、家族も自分の位置情報をあなたと共有する必要があります

つまり共有は片方向です。自分が設定しただけでは相手の位置は見えません。家族それぞれの端末で設定してもらう必要があります。ここが最もつまずきやすいところで、「設定したつもりで実は片側だけ」という状態は珍しくありません。設定した日に、お互いの端末で相手が表示されるか確認するまで済ませてください。

共有期間の選択

「探す」から位置情報を送るときは、共有を続ける期間を選べます。Appleのユーザガイド(英語版)では、1時間・その日の終わりまで・無期限の3つから選ぶ、と案内されています。

災害の備えとして家族と共有するなら、期限のない設定にしておかないと意味がありません。「1時間だけ共有して、そのまま忘れる」というのがいちばん多い失敗です。

共有を止めるとき

Appleのパーソナルセーフティガイドでは、停止の手順が2通り案内されています。

やりたいこと手順
特定の相手だけ止める「探す」>「人を探す」>相手の名前>「位置情報の共有を停止」
全員との共有を止める「探す」>「自分」>**「自分の位置情報を共有」**をオフ

あわせて、**「位置情報の共有を停止すると、以前に共有した人は共有が停止されたことに気付く可能性があります」**という注意も書かれています。相手に知られずに止められる機能ではない、という前提で扱ってください。

③ Android:Googleマップの「現在地の共有」

Androidでは、Googleマップの「現在地の共有」を使います。Googleマップヘルプで案内されている手順は次のとおりです。

  1. Googleマップアプリを開く
  2. プロフィール写真またはイニシャルをタップ
  3. **[現在地の共有]→[新たに共有]**をタップ
  4. 共有期間を指定して相手を選ぶ

停止するときは、同じ**[現在地の共有]から相手を選んで[停止]**をタップします。共有状況はGoogleアカウント側(myaccount.google.com の「情報共有と連絡先」>「現在地の共有」>「現在地の共有を管理」)からも管理できると案内されています。

相手に見える情報

Googleマップヘルプでは、共有相手が確認できる内容として次が挙げられています。

  • 名前と写真
  • デバイスの最近の位置情報
  • デバイスのバッテリー残量、および充電中かどうか
  • 到着時刻と出発時刻(通知を有効にしている場合)

災害時に効いてくるのが2つ目と3つ目です。相手のバッテリーが残っているかどうかが見えるため、「返信がないのは電池切れなのか、それとも別の理由なのか」の判断材料になります。電池を持たせる設定は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定、電源の備えはモバイルバッテリーの容量の考え方にまとめています。

なお到着・出発の通知は「ユーザーが特定の場所に到着したときに通知を受け取ります」「ユーザーが特定の場所を出発したときに通知を受け取ります」という機能で、避難所や自宅への到着を知る用途にも使えます。

「リンクで共有」は最長24時間

共有相手の指定方法には、Googleアカウントを持つ相手を選ぶ方法と、リンクを送る方法があります。このうちリンクによる共有には時間の上限があり、Googleマップヘルプには「このリンクを受け取ったユーザーと最長で24時間共有できます」と記載されています。

家族との常時共有を意図しているなら、リンク共有ではなくアカウントを指定した共有を選び、期間も「無効にするまで」を選んでおく必要があります(期間の選択肢として「1時間」「無効にするまで」といった表記が案内されています)。

④ ここが本題:「人を探す」は通信が切れると止まる

位置情報の共有について、いちばん誤解されているのがこの点です。

相手の端末が圏外になったり電池が切れたりすると、位置情報の更新は止まります。 見えるのは最後に届いた位置だけです。「共有しているから居場所は常にわかる」という前提で備えると、いざというときに古い地点を頼りに動くことになります。

災害直後は、輻輳による通信規制や基地局の停波でこの状態になりやすく、まさに位置を知りたいタイミングで更新が止まります。

一方、「デバイスを探す」は通信がなくても働くことがある

ここが「人の位置共有」と決定的に違うところです。

Appleの「探す」ネットワークは、Appleのセキュリティガイドで次のように説明されています。

付近で使用されているAppleデバイスで検出できる近距離Bluetooth信号を紛失したデバイスから送信することで、オフラインでも機能

つまり紛失した端末がインターネットにつながっていなくても、そばを通った他人のiPhoneがBluetoothで信号を拾い、暗号化した位置情報をリレーする仕組みです。約15分ごとに公開鍵が更新される設計で、Appleは「探知側で暗号化された位置情報を読み取ることはできません」としており、誰が見つけたかも持ち主にはわかりません。

ただし制約もあります。同ガイドには**「ユーザはオフラインデバイスでサウンドを鳴らしたりオフラインデバイスをリモート消去したりすることはできません」**と明記されています。できるのは位置の把握までです。

Androidの Find Hub(デバイスを探す)にも同様の仕組みがあります。Googleのヘルプでは、オフラインのアイテムを探すには端末にPIN・パターン・パスワードのいずれかを設定していることが必要で、あわせて「人通りの多い場所でのみネットワークを使用する」または「どこでもネットワークを使用する」の設定を選ぶ、と案内されています。

さらに対応機種(Google Pixel 8シリーズなど)では、**「デバイスのバッテリーが切れたりデバイスの電源がオフになったりしても、電源が切れてから数時間は Find Hub ネットワークでスマートフォンを探すことができます」**とされています。条件は、シャットダウン時にBluetoothと位置情報がオンになっていることです。

整理すると

人の位置情報共有デバイスを探す
iPhone「探す」>人を探す「探す」>デバイスを探す(探すネットワーク)
AndroidGoogleマップの現在地の共有Find Hub(デバイスを探す)
相手の通信が切れたら更新が止まる(最後の位置のみ)Bluetooth経由で位置がわかる場合がある
電源オフのとき更新されない対応機種なら数時間は探せる場合がある
主な用途家族の居場所の把握自分の端末の紛失対策

重要なのは、「デバイスを探す」が基本的に自分の端末を探すための機能だという点です。家族の端末をこの仕組みで探せるかどうかは、共有設定の有無に左右されます。Appleのパーソナルセーフティガイドには、ファミリー共有グループでは「あなたにデバイスの位置情報の表示を許可している共有グループのメンバーの持ち物が、持ち主の名前で区切って一覧表示」されるという記述があります。

⑤ 位置情報の共有だけに頼らないための組み合わせ

以上を踏まえると、位置情報の共有は「単独で成立する安否確認手段」ではありません。次のように役割を分けて考えると整理しやすくなります。

状況位置情報の共有併用する手段
通信が生きている有効。リアルタイムに近い位置がわかる通話・メッセージ
通信が不安定(輻輳)更新が遅れる/止まる災害用伝言板171
圏外・停波止まる。最後の位置のみ171(公衆電話から)、公衆電話
相手が電池切れ止まるあらかじめ決めた集合場所のルール

とくに4つ目が重要です。位置がわからなくなったときにどこで落ち合うかを決めていないと、機能が止まった瞬間に打つ手がなくなります。決めておくべき項目は家族の安否確認ルールの決め方にまとめました。

また、位置がわかっても地図が開けなければ移動できません。通信が止まると地図アプリは簡略表示になるため、生活圏のオフライン地図を事前にダウンロードしておくとセットで機能します。

位置情報の共有そのものは通信量が大きい機能ではありませんが、災害時は安否確認と情報収集でデータ容量が一気に減ります。使い切ったあとの速度と節約設定は災害時にデータ容量が尽きたら?を参考にしてください。

⑥ 今日やっておく設定チェックリスト

  • 家族それぞれの端末で位置情報の共有を設定する(片方向では見えない
  • 設定した日に、お互いの端末で相手が表示されるかを確認する
  • 共有期間を「1時間」ではなく期限なし/無効にするまでにする
  • Androidはリンク共有(最長24時間)ではなくアカウント指定で共有する
  • 「デバイスを探す」/Find Hubを有効にし、画面ロック(PIN・パターン・パスワード)を設定する
  • iPhoneは「探す」ネットワークを、AndroidはBluetoothと位置情報をオンにしておく
  • 通信が止まったときの集合場所と連絡ルールを決めておく

家族に高齢の親などがいる場合は、設定を本人任せにせず、帰省したときに一緒に設定して表示を確認するのが確実です。使っていない古い端末を渡している場合の扱いは古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめています。

まとめ

  • 位置情報の共有はApple ID/Googleアカウントの機能で、格安SIMでも扱いは変わらない
  • iPhoneは「探す」>「人を探す」、AndroidはGoogleマップの現在地の共有。ファミリー共有でも双方が共有設定をする必要がある
  • Androidのリンク共有は最長24時間。常時の備えにはアカウント指定で共有する
  • 相手の通信が切れれば更新は止まる。表示されるのは最後の位置
  • 通信なしでも位置がわかることがあるのは**「デバイスを探す」側**の仕組みで、事前に画面ロックとネットワーク設定が必要

位置情報の共有は「連絡が取れないときの補助線」です。これ1つで安否確認が完結するわけではないので、災害時の連絡手段まとめとあわせて、手段を複数持っておくのが現実的です。


この記事の情報について:本記事は、Appleサポート「『探す』と位置情報共有」「iPhone/iPadの位置情報の共有を停止する方法」(パーソナルセーフティガイド)、Appleプラットフォームセキュリティ「『探す』のセキュリティ」「見つからないデバイスの位置を特定する」、Appleユーザガイド「Share your location in Find My on iPhone」、Googleマップヘルプ「Googleマップでリアルタイムの位置情報を他のユーザーと共有する」「現在地の共有に関する通知を受け取る」、Googleアカウントヘルプ「現在地の共有設定を管理する」、Androidヘルプ「Androidデバイスを紛失した場合に見つけられるようにしておく」の各情報をもとに、2026年8月15日時点で確認した内容です。アプリの項目名や設定の場所は、OSのバージョンや機種によって異なる場合があります。実際に設定する際は、お使いの端末で公式サポートの最新の案内をご確認ください。