災害用伝言板の使い方を調べ、サブ回線を契約し、モバイルバッテリーも買った——それでも、家族と連絡が取れないことがあります

理由は単純で、手段をそろえても「どれをどう使うか」を家族で決めていないからです。自分がweb171に登録しても、家族がweb171を見に行かなければ意味がありません。集合場所を「小学校」とだけ決めていても、体育館の前と校門前ですれ違えば会えません。

先に結論です。事前に決めるのは次の6つだけです。

  1. 171・web171のキーにする電話番号を1つ決める
  2. 連絡手段を第1〜第3まで順番で決める
  3. 遠隔地の中継役を決める(内閣府のいう「三角連絡法」)
  4. 集合場所を「施設名+入口」まで決める
  5. 会えないときにどうするかを決める
  6. 決めた内容を紙で持つ

順に見ていきます。

① キーにする電話番号を1つ決める

災害用伝言ダイヤル(171)も災害用伝言板(web171)も、電話番号をキーにして伝言を出し入れする仕組みです。家族がそれぞれ違う番号をキーにすると、伝言は同じ場所に集まりません。

NTT東日本は171の注意事項として、次のように書いています。

災害用伝言ダイヤル(171)は、被災地の自宅などの固定電話や携帯電話・PHS、IP電話の番号で伝言の録音・再生を行います。家族・親戚・友人間でどの電話番号にするか予め決めておくことが大切です。

決めるときの注意が1つあります。171に登録できるのは被災地の電話番号だけです。遠方に住む親の番号を家族共通のキーにしていると、自分が被災した側になったときに使えない可能性があります。自宅の固定電話番号か、同居家族の携帯番号から選んでください。固定電話の番号は市外局番から入力します。

操作手順や30秒・20件といった条件は災害用伝言ダイヤル(171)の使い方に、携帯4社の伝言板との違いは携帯4社の災害用伝言板の使い方にまとめています。

② 連絡手段を「第1・第2・第3」まで決める

災害時は、手段を1つ決めても、その手段が使えるとは限りません。順番で決めておくのが実務的です。

決め方の考え方はこうです。

順番使う場面
第1ネットが使えるLINE等のメッセージアプリ
第2ネットが不安定・混雑web171(テキスト)
第3ネットが使えない/スマホが使えない171(音声)、公衆電話

第1をメッセージアプリにするのには理由があります。大きな災害の直後は、アンテナが立っていても電話だけがつながらない状態が起こります。携帯各社は音声通話とパケット通信を分けて制御しているため、そのとき比較的通りやすいのはデータ通信側です。仕組みは災害時に電話だけつながらないのはなぜ?で解説しています。

第2をweb171にするのは、171とweb171が相互に連携しているためです。web171にテキストで登録した伝言は、音声変換されて171側でも聞けます。つまり家族の誰かがネットしか使えず、別の誰かが電話しか使えなくても伝言はつながります。「うちはweb171」と決めておいて損がないのはこのためです。

第3の公衆電話は、スマホ自体が使えなくなったときの手段です。停電時に何ができるかや機種ごとの操作は災害時の公衆電話の使い方にまとめました。

自宅の回線もモバイル回線も止まったときは、災害時に無料開放される公衆Wi-Fi「00000JAPAN」が選択肢になります。ただし通信が暗号化されないという前提があるので、00000JAPANの安全な使い方を先に読んでおいてください。

「発信する側」も決めておく

NTT東日本は、これまでの171の運用実績について、登録された伝言のほとんどが被災地外からの問い合わせで、被災地内からの発信が非常に少なかったと指摘しています。全員が「確認する側」に回ると、肝心の安否情報が入りません。

被災地にいる人が先に登録する——これを家族のルールにしてください。

③ 遠隔地の中継役を決める(三角連絡法)

内閣府「防災情報のページ」は、三角連絡法という方法を紹介しています。

離れた場所に住む家族や親戚、知人の家を連絡先に決め、そこを中継点にして家族の安否確認や連絡をとる方法です。

被災地の中では回線が混み合いますが、被災地の外との通信は比較的通りやすいことがあります。全員が中継役に自分の状況を伝え、中継役がそれを取りまとめる形にすれば、家族どうしが直接つながらなくても状況を共有できます。

決めるときのポイントは2つです。

  • 住んでいる場所を分ける — 同じ市内の親戚では、同時に被災して中継役として機能しません。都道府県をまたいだ相手を選んでください
  • 事前に本人に頼んでおく — 当日いきなり連絡が集中しても、相手は中継役だと知りません。「災害のときはここに集まる連絡を受けてほしい」と伝えておきます

なお、②で決めた171・web171のキー番号と中継役は別物です。中継役は「人」、キー番号は「伝言を置く場所」です。混同しないでください。

④ 集合場所は「施設名+入口」まで決める

消防庁の防災危機管理eカレッジは、集合場所についてこう書いています。

あらかじめ家族がバラバラになった時の避難場所や連絡方法を確認しておきましょう

具体的な場所、例えば体育館の入り口で待ち合わせするなどの打ち合わせもいざというときは役立ちます

「○○小学校」では足りません。校庭なのか、体育館の入口なのか、正門なのかまで決めてください。災害時の学校には大勢が集まり、しかも電話で「今どこ?」と確認できない前提です。

「避難場所」と「避難所」は別物

もう1つ、決める前に知っておきたい区別があります。内閣府は次のように定義しています。

種別位置づけ
指定緊急避難場所災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所。市町村長により、洪水、崖崩れ・土石流・地滑り、地震、津波、大規模な火事等の災害種別ごとに指定される
指定避難所災害の危険に伴い避難をしてきた被災者等が一定期間滞在するための施設等。市町村長により、災害種別に限らず指定される

つまり、洪水のときの避難場所と地震のときの避難場所は違うことがあります。同じ施設が両方に指定されていることもありますが、そうでないこともあります。家族で決めるときは、自治体のハザードマップで災害種別ごとに確認してください。

消防庁は、休日に家族で避難場所や避難経路を下見しておくことも勧めています。

道順の確認には地図アプリを使うことになりますが、圏外では検索も経路案内も止まります。事前のダウンロード方法は圏外でも地図を見るには?にまとめました。

⑤ 会えないときにどうするかを決める

集合場所を決めても、そこにたどり着けないことがあります。ここを決めていない家庭がいちばん多いところです。

決めておきたいのは次の3つです。

  • 待つ時間の上限 — 「30分待って会えなければ第2集合場所へ」「その日は動かず、伝言に状況を残す」など
  • 第2集合場所 — 第1が使えない(浸水・倒壊・満員)ときの行き先
  • 次に確認する時刻 — 「毎日朝8時と夜8時に伝言を確認する」と決めておくと、すれ違いが減ります

特に**「探しに動かない」と決めておくこと**が重要です。お互いが相手を探して移動すると、いつまでも会えないうえ、危険な場所に入り込む可能性があります。内閣府は大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドラインで、災害直後の一斉帰宅を抑制し「むやみに移動を開始しない」よう呼びかける方針を示しています。

時刻を決めるときは、電池のことも一緒に決めてください。1日中スマホを気にしていると、確認したい時刻の前に電池が尽きます。省電力設定で止まる機能(Androidでは緊急SOSが機能しなくなる、など)は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定に、必要な容量の考え方は災害用モバイルバッテリーの容量はどう選ぶ?にあります。

⑥ 決めた内容は紙で持つ

ここまで決めたことをスマホのメモアプリにだけ入れているなら、それは災害時に読めない可能性があります。電池切れ、水没、落として画面が割れる——スマホが使えない状況こそ、このルールが必要になる場面です。

財布や防災リュックに入る紙のカードにして、家族全員が同じものを持ってください。 書く内容は次のとおりです。

項目記入例
171・web171のキー番号03-XXXX-XXXX(自宅)
連絡手段の順番①LINE ②web171 ③171・公衆電話
遠隔地の中継役○○おじさん 090-XXXX-XXXX(△△県)
第1集合場所○○小学校 体育館入口
第2集合場所○○公園 時計台前
会えないときの行動30分待つ→第2へ→動かず毎日8時・20時に伝言確認
家族の携帯番号全員分

家族の電話番号を暗記していない人がほとんどだと思います。公衆電話や他人の電話を借りるときに困るので、番号は必ず紙に書いてください。ただし、紛失したときのことを考えて住所や氏名フルネームは書かないなど、持ち歩き方には配慮してください。

年2回、練習する日を決める

決めたルールは、一度も試さないと当日に動きません。171とweb171には体験利用日があります。

期間時間
毎月1日、15日00:00〜24:00
正月三が日1月1日00:00〜1月3日24:00
防災週間8月30日9:00〜9月5日17:00
防災とボランティア週間1月15日9:00〜1月21日17:00

次の防災週間は8月30日9:00からです。 防災週間と防災とボランティア週間で年2回、家族で試す日にしてしまうのが続けやすいと思います。災害が発生した際には体験利用ができない場合がある、とも注記されています。

試すときのチェック項目です。

  • 決めたキー番号で、全員が録音・再生できたか
  • 30秒に言いたいことが収まったか
  • 遠隔地の中継役に、今年も引き受けてもらえるか確認したか
  • 紙のカードの電話番号が最新か(機種変更・引っ越しで変わります)
  • 子どもが一人でも操作できるか

NTT東日本が例として挙げている伝言の型は次のとおりです。名前・状況・居場所・次の連絡予定で30秒に収まります。

よう子です。家族は皆無事で、中央小学校に避難しました。落ちついたら連絡します。

ルールが決まったら、手段を足す

6項目が決まると、自分の家庭に足りない手段が見えてきます。

手段を先に買うと、使わない備えが増えます。ルールを決めてから、足りないものを足す順番のほうが無駄がありません。手段の全体像は災害時の連絡手段まとめにあります。

まとめ

  • 決めるのは6つ:キー番号・手段の順番・遠隔地の中継役・集合場所・会えないときの行動・紙で持つ
  • 171/web171のキー番号は被災地側の番号にする。遠方の親の番号は不可
  • 手段は第1〜第3まで順番で。被災地にいる人が先に登録する
  • 中継役は都道府県をまたいだ相手に、事前に頼んでおく
  • 集合場所は**「施設名+入口」**まで。避難場所と避難所は別物で、災害種別ごとに指定される
  • 会えないときは探しに動かない。次に確認する時刻を決めておく
  • 年2回(防災週間・防災とボランティア週間)に練習する。次は8月30日9:00から

備えの中で、このルール作りだけは費用がゼロです。家族で30分話すだけで終わります。手段をそろえる前に、先にここを決めてしまってください。


この記事の情報について:本記事は、内閣府「防災情報のページ」(広報ぼうさい 特集 家族で防災)、内閣府「避難場所に関すること」、消防庁「防災危機管理eカレッジ 5.災害時の連絡方法や避難場所の確認」、NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」「災害用伝言ダイヤル(171)Q&A」「災害用伝言ダイヤル(171)概要とご提供のしくみ」、NTT西日本「体験利用のご案内 災害用伝言ダイヤル(171)」の各公式情報をもとに、2026年8月12日時点で確認した内容です。171・web171の体験利用日程および提供条件は変更される場合があります。また、171の提供開始条件や伝言の録音時間・蓄積数などの運用条件は災害の状況に応じてNTTが設定し、テレビ・ラジオ・各社公式ホームページを通じて案内されます。指定緊急避難場所・指定避難所の指定内容は市町村ごとに異なるため、お住まいの自治体の公表情報とハザードマップをご確認ください。緊急時は自治体・消防・警察等の公的な案内に従ってください。