サブ回線を契約しても、災害用の伝言板を覚えていても、スマホの電池が切れればすべて使えません。備えの優先順位としては、実は電源の確保がかなり上位に来ます。

とはいえ売り場に並ぶモバイルバッテリーは「10000mAh」「20000mAh」と数字が並ぶだけで、どれを買えばいいのか判断しづらいのが実情です。

先に結論をまとめます。

  • 必要量は自分の端末のバッテリー容量(mAh)を起点に逆算する
  • 表示容量のすべてが充電に回るわけではないので、単純な割り算より少なめに見積もる
  • 飛行機に持ち込むなら基準は mAh ではなく Wh。2026年4月24日からルールが変わった
  • 選ぶときはPSEマークの有無を必ず確認する(表示のない製品は販売できない)
  • 事故は高温環境で増える。車内放置・夏場の保管に注意

① まず自分のスマホの容量を調べる

「スマホ何回分か」を考える起点は、モバイルバッテリー側ではなく手持ちの端末側です。

Google公式のPixelヘルプには、機種ごとのバッテリー容量が掲載されています。たとえば次のとおりです。

機種バッテリー容量(標準)
Pixel 104,970mAh
Pixel 10 Pro4,870mAh
Pixel 10 Pro XL5,200mAh
Pixel 9a5,100mAh
Pixel 9 Pro XL5,060mAh

出典:Google Pixel ヘルプ「Google Pixel のハードウェア仕様」。同ページには「標準」容量と「最小」容量の両方が記載されています。上表は標準値です。

お使いの端末がPixel以外なら、メーカーの公式仕様ページで同じように確認できます。まずはこの数字をメモしてください。

② 「スマホ何回分」を単純な割り算で出さない

ここでやりがちなのが、こういう計算です。

10000mAhのバッテリー ÷ 5000mAhのスマホ = 2回分

この計算は実際より多く出ます。 モバイルバッテリーの表示容量は内部のセル基準の値で、スマホに充電する際には電圧変換などのロスが発生するためです。表示容量がまるごと相手の端末に移るわけではありません。

そのため、実用上は表示容量から計算した回数より少なくなる前提で選ぶのが安全です。カタログの「○回充電可能」という表記は、メーカーが自社の測定条件で出した値なので、条件も合わせて確認してください。

何日分を想定するか

首相官邸の防災ページでは、家庭の備蓄について最低3日分、南海トラフ地震のような広域災害では1週間以上を目安とする考え方が示されています。これは飲料水・食料についての目安で、電源についての基準ではありませんが、「停電が数日続く前提で考える」という点では同じ発想が使えます。

つまり、スマホ1台をフル充電1回分でしのぐ想定はかなり心もとないということです。家族の台数分も忘れずに数えてください。

③ 飛行機に持ち込むなら基準は「Wh」

旅行や帰省で持ち歩くなら、mAhではなく**Wh(ワットアワー)**の値が判断基準になります。

国土交通省の発表によると、2026年4月24日からモバイルバッテリーの機内持込みに次のルールが加わりました。

  • 機内持込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで
  • 機内でモバイルバッテリーへ充電しないこと
  • 機内でモバイルバッテリーから他の電子機器へ充電しないこと

また国土交通省は、預け入れ荷物にモバイルバッテリーを入れることを禁止しています。必ず手荷物として機内に持ち込む扱いです。

この変更は、機内でのリチウム電池火災の増加を受けたICAO(国際民間航空機関)の国際基準の緊急改訂に対応したものと説明されています。

個数や上限は今後も変更される可能性があります。搭乗前に利用する航空会社の案内を確認してください。

Wh表示の見方

Wh は本体や説明書に記載されていることが多いので、まずは表示を探すのが確実です。記載がない場合、Wh は「電圧(V)× 容量(mAh)÷ 1000」で概算できます。ただし製品によって基準電圧の表記が異なるため、自己判断の概算値ではなく本体表示を優先してください。

④ 安全な製品を選ぶ:PSEマークを確認する

国民生活センターの解説によると、2019年2月1日以降、PSEマーク表示のないモバイルバッテリーは販売できません。違反した場合は罰則の対象となる可能性があるとされています。

つまり、PSEマークがない製品が売られていること自体が異常です。フリマアプリや海外通販で古い在庫を買うときは特に注意してください。

同センターは、使用上の注意として次の点を挙げています。

  • 製品に傷をつけない
  • 使用時に液体をかけない
  • 発熱・発煙・異臭がする場合は使用を中止する
  • 分解・改造をしない

トラブルが起きたときの相談先として、消費者ホットライン 188 が案内されています。

⑤ 事故は「夏」と「高温」で増える

製品評価技術基盤機構(NITE)は2026年7月15日、リチウムイオン電池搭載製品の事故についての注意喚起を発表しています。

  • 2021年から2025年までの5年間で2,140件の事故が報告されている
  • モバイルバッテリーが最多
  • 事故は春から夏にかけて増加し、8月がピーク

NITEは事故防止のポイントとして「3つのC」を示しています。

ポイント内容
①賢く選ぶ販売事業者の連絡先・製品情報・リコール情報を確認し、表示マークが適切か確認する
②丁寧に使う高温となる場所で使用・保管しない/強い衝撃や圧力を加えない/異常を感じたら使用中止
③正しく捨てる廃棄時にリチウムイオン電池の有無を確認し、メーカー回収や自治体の区分に従う

防災用として「車に積みっぱなし」「玄関に置きっぱなし」は、この①②に真っ向から反します。 夏の車内は高温になるため、保管場所は室内の温度が上がりにくい場所を選んでください。

なお、古いスマホを予備端末として保管する場合も同じ話が関係します。詳しくは古いスマホを災害用の予備端末にする方法で、Apple公式が示す長期保管の推奨(50%充電・電源オフ)とあわせて解説しています。

⑥ 買う前のチェックリスト

  • 自分(と家族)の端末のバッテリー容量を公式仕様で確認した
  • 表示容量の全部は使えない前提で、少し余裕を持たせた
  • 飛行機に持ち込む可能性があるなら、本体のWh表示を確認した
  • PSEマークが表示されている製品を選んだ
  • 販売事業者の連絡先が確認でき、リコール対象でないか調べた
  • 高温にならない場所に保管することにした
  • 半年に1回は充電残量を確認する、と決めた

最後の項目が意外と抜けます。充電されていないモバイルバッテリーは、ただの重りです。 防災リュックに入れたまま数年放置していないか、この機会に確認してみてください。

そして、停電が長引けばモバイルバッテリー自体も使い切ります。その先の充電手段(電動車からの給電、住宅用太陽光の自立運転、避難所や携帯ショップの無料充電)と、発電機の屋内使用という命に関わるNGは停電中にスマホをどう充電する?にまとめました。

モバイルバッテリーの複数持ちでは足りず、ポータブル電源まで検討する場合は、比較する単位が mAh から Wh に変わり、さらに「その機器が動くか」を決める**定格出力(W)**という別の指標が加わります。選び方は災害用ポータブル電源の選び方にまとめました。

まとめ

モバイルバッテリー選びは「大きい数字を買えばいい」という話になりがちですが、実際には自分の端末の容量・想定する日数・保管環境の3つで決まります。そして安全面では、PSEマークの確認と高温を避けることが要点です。

バッテリーを用意したうえで、端末側の設定で持ちを延ばす方法は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定にまとめました。省電力モードは有効ですが、オンにすると止まる機能がある点に注意が要ります。

電源の準備ができたら、次は「つながらなくなったとき何ができるか」です。お金をかけずにできる備えは災害時の連絡手段まとめに、回線をもう1本持っておく方法はpovo2.0を災害用のサブ回線にするにまとめています。

サブ回線を契約した場合の端末側の設定は、iPhoneでデュアルSIM(eSIM)を設定する手順PixelでデュアルSIMを設定する手順で解説しています。

家族の端末をテザリングでつなぐ場合は、親機の電池が全員分の通信を背負うことになります。Google公式も「テザリング中はデバイスを電源に接続し」と案内しており、モバイルバッテリーの容量はここでも効いてきます(災害時に1本の回線を家族で分け合う)。


この記事の情報について:本記事は国土交通省の報道発表(令和8年4月14日「モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて」)、製品評価技術基盤機構(NITE)の注意喚起(令和8年7月15日)、国民生活センターの消費者トラブル解説、Google Pixel ヘルプ「Google Pixel のハードウェア仕様」、首相官邸の防災ページの各情報をもとに、2026年7月21日時点で確認した内容です。製品仕様・規制・航空会社の取扱いは変更される場合があります。搭乗前や購入前には、必ず最新の公式情報をご確認ください。