災害や山間部で圏外になったときの衛星通信というと、ドコモやauが提供する「Starlink Direct」のようなキャリアのサービスが思い浮かぶと思います。格安SIMを使っていると、そこで話が終わってしまいがちです。

ただ、iPhoneにはもうひとつ別の系統の衛星機能があります。キャリアが提供するものではなく、Appleが提供している衛星通信機能です。先に結論をまとめます。

iPhone 14以降には、キャリアの衛星プランとは別に、Apple提供の衛星機能があります。日本で使えるのは「緊急SOS」「メッセージ」「探す」の3つ。アクティベーションから2年間は無料ですが、「メッセージ」と「探す」には有効なSIMが必要だとAppleが明記しています。

以下、公式情報にもとづいて整理します。

iPhoneの衛星通信には2種類ある

まず、ここを分けて理解しておくと混乱しません。Appleのサポートページ「iPhoneで通信事業者が提供する衛星通信機能について」は、2つを別のものとして説明しています。

Appleが提供する衛星機能通信事業者が提供する衛星機能
提供元Apple(衛星網はGlobalstar等)ドコモ・au・ソフトバンクなど
対応機種iPhone 14以降(全モデル)iPhone 13以降(全モデル)※Appleの記載
契約の条件Appleは「有効なSIM」を要件に挙げる機能あり対応する通信事業者との契約。事業者によっては対象プランが必要
画面表示接続アシスタントから利用ステータスバーに「SAT」と表示される
主な用途緊急SOS・メッセージ・「探す」事業者のサービス内容による

同ページには、通信事業者側の衛星機能が使える場合でも、電波が届かない場面では一部の地域でAppleの衛星機能を引き続き利用できるという趣旨の記載があります。どちらか一方しか持てない、という関係ではありません。

キャリア側の衛星サービス(docomo Starlink Direct、au Starlink Direct、SoftBank Starlink Directなど)と、格安SIMユーザーがそれを使う方法については、LINEの衛星モードは格安SIMで使える?キャリア別の対応状況まとめで別途整理しています。この記事はもう一方、Apple提供の衛星機能の話です。

日本で使えるのは3つ、使えないのは1つ

Appleの衛星機能は4種類ありますが、提供状況は国・地域ごとに違います。2026年8月6日時点で日本の対応状況は次のとおりです。

機能日本での提供最低iOSバージョン(日本)
衛星経由の緊急SOSありiOS 17.6以降
衛星経由のメッセージありiOS 18以降
衛星経由の「探す」あり
衛星経由のロードサービスなし

ロードサービス(キーの閉じ込み、パンク、燃料切れなどでの救援手配)の公式ページには、利用可能な地域として「オーストラリア、米国(プエルトリコを含む)、英国」とだけ記載されています。日本は対象外です。車で移動する備えとして期待しないでください。

いずれの機能も、Appleのサポートページには「iPhone 14以降(全モデル)のアクティベーション後2年間は無償で利用できます」と記載されています。なお2025年12月のApple公式発表には、iPhone 14・iPhone 15について、2025年9月9日(米国西部時間午前0時)より前にアクティベーションした場合は無料期間がさらに1年延長される旨の記載があります。

それぞれ何ができるのか

衛星経由の緊急SOS

圏外で緊急通報サービスにテキストで通報する機能です。日本では110・118・119が対象だとAppleのサポートページに記載されています。

使い方は、まず緊急通報番号に発信を試み、つながらない場合に画面に表示される衛星経由のオプションを選ぶ流れです。接続後は、症状や状況を選ぶ質問に答える形で情報が送られ、事前に設定していればメディカルIDや緊急連絡先、位置情報(高度を含む)、バッテリー残量も共有されます。

緊急連絡先には自動でSMSが届きます。相手がiOS 16.4以降のiMessageを使っていれば、やり取りの内容や地図を含む記録が共有されます。Apple製以外の端末や古いiOSの場合はSMSが届く形になり、日本では「0005990037」という番号から送信されると明記されています。この番号は見慣れないため無視されがちなので、家族には事前に伝えておくとよいと思います(最初のメッセージに48時間以内に「YES」と返信しないと、以降のメッセージは届きません)。

なお、衝突事故検出・転倒検出で本人が応答できない場合に、圏外であれば衛星経由で自動通報されることがある、という記載もあります。

「衛星経由でも電話はかけられない」という点は、キャリアの衛星モードと同じです。格安SIMでの緊急通報の可否そのものについては格安SIMで110番・119番はかけられる?にまとめています。

衛星経由のメッセージ

圏外から家族や友人にiMessageやSMSでテキストを送る機能です。米国・カナダ・メキシコ・日本で利用できると公式ページに記載されています。

できることは絞られています。テキスト、絵文字、Tapbackの送受信は可能ですが、グループメッセージ、写真、ビデオ、音声メッセージ、ステッカーの送受信はできません

緊急時にはこちらではなく緊急SOSを使うよう、Appleは公式ページで注意を促しています。安否連絡の手段であって、救助要請の手段ではありません。

衛星経由の「探す」

圏外から自分の位置情報を送る機能です。あらかじめ「探す」で位置情報を共有している相手にだけ送れます。送信は15分に1回まで、相手側は最新の位置情報を7日間まで確認できるとされています。相手の端末はiOS 16.1以降であればよく、iPhone 14以降である必要はありません。

格安SIMで使えるのか — 公式に確認できる範囲

ここが本題です。公式ページの記載を、確認できたことと確認できなかったことに分けて書きます。

確認できたこと

  • 「衛星経由のメッセージ」の必要なものとして、Appleは「有効なSIM」を挙げています
  • 「探す」の衛星経由の位置情報共有にも「利用するにはアクティブなSIMが必要です」と明記されています
  • 衛星経由のSMSについては「衛星経由のSMSメッセージを使うには、ご加入先の通信事業者が対応している必要があります」と条件が付いています。一方でiMessageにはこの条件が書かれていません
  • 2025年12月のApple公式発表には「通信事業者の契約プランが必要です」という記載があります

確認できなかったこと

Appleの公式ページには「有効なSIM」としか書かれておらず、それがMVNO(格安SIM)のSIMでもよいのか、大手キャリアの契約に限るのかは明示されていません。日本の通信事業者のうちどこが衛星経由のSMSに対応しているのかも、公式に一覧化された情報は見つけられませんでした。

したがって、この記事では「格安SIMでも問題なく使えます」とは書きません。現時点で言えるのは、Appleの衛星機能はキャリアの衛星オプションに加入していなくても使える系統の機能であり、ただし有効なSIMが入っていることが前提になる機能がある、というところまでです。

実機で確かめる方法はあります。設定アプリ >「アプリ」>「メッセージ」>「衛星通信接続デモ」、または設定アプリ >「緊急SOS」からデモを起動できます。デモは実際の緊急通報を行わずに接続を試せるもので、圏外に行く前に自分の環境で動くかを確認できます。契約を検討するより先に、これを一度試しておくのが確実です。

なお「有効なSIMが必要」と明記されている機能がある以上、SIMを入れずに保管している予備のiPhoneで衛星機能をあてにするのは避けたほうがよいと考えられます。予備端末の活用方法は古いスマホを災害用の予備端末にするにまとめています。

圏外に出る前にやっておくこと

Appleの公式ページが挙げている準備は、どれも電波があるうちにしかできません。

  1. iOSを最新にしておく — 「衛星通信で接続するには、iPhoneに互換性のあるソフトウェアが必要です」と記載されています
  2. デモを一度試しておく — 接続の作法(空の見通し、端末の向け方)は慣れが必要です
  3. iMessageをオンにしておく — 衛星経由でiMessageを使うには、圏外に出る前にオンにしておく必要があるとされています
  4. メディカルIDと緊急連絡先を設定しておく — ヘルスケアアプリで設定します。緊急SOS利用時に自動で共有される情報です
  5. 「探す」で家族と位置情報を共有しておく — 共有済みの相手にしか衛星経由では送れません(設定手順は災害前に家族と位置情報を共有しておく
  6. 家族に「0005990037」からのSMSがあり得ることを伝えておく

使うときの制約

公式ページに書かれている制約のうち、知っておくと落胆しないものを挙げます。

  • 空への視界が開け、地平線が見通せる屋外にいる必要がある。密生した木の下、丘や山、峡谷、高い建物は接続を妨げる
  • 理想的な条件で送信に30秒ほど、葉が茂っていない木の下でも1分以上かかることがある
  • iPhoneは普通に手に持てばよく、腕を上げて掲げる必要はない。ただしポケットやリュックの中に入れたままではいけない
  • 緯度62度より高い場所では機能しない場合がある(日本国内では該当しません)
  • アルメニア、ベラルーシ、中国本土、キルギスタン、カザフスタン、ロシアで購入したiPhoneは衛星接続の対象外。香港・マカオで購入した場合はiPhone 16e以降のみ

接続に数十秒から数分かかるということは、その間ずっと画面を表示して立っているということです。バッテリーが残っていることが前提になります。電池を持たせる設定は災害時にスマホの電池を長持ちさせる設定で解説しています。

Androidはどうか

Google Pixelにも「衛星SOS」があります。Google公式ヘルプによれば、**Pixel 9以降のすべてのPixel(Pixel 9aを除く)**で利用でき、Googleメッセージを既定のメッセージアプリにしておく必要があります。

ただし、公式ヘルプの「衛星SOSを利用できる地域」の一覧(2026年8月6日時点、日本語版で確認)には、オーストラリア、カナダ、欧州各国、英国、米国などが挙げられている一方で、日本の記載はありません

つまり2026年8月時点では、端末メーカー提供の衛星機能を日本で使えるのはiPhone側ということになります。Androidをお使いの場合は、キャリア提供の衛星サービス(Starlink Direct系のまとめ)が主な選択肢になります。

まとめ

  • iPhoneの衛星通信には「Apple提供」と「通信事業者提供」の2系統があり、別のもの
  • Apple提供の機能はiPhone 14以降で、アクティベーションから2年間無料
  • 日本で使えるのは**緊急SOS・メッセージ・「探す」**の3つ。ロードサービスは対象外
  • 「メッセージ」と「探す」には有効なSIMが必要とAppleが明記している。MVNOでの可否は公式に明示がないため、デモ機能で自分の環境を確かめるのが確実
  • Androidは、Google公式の対応地域一覧に日本の記載がない(2026年8月6日時点)

衛星機能は「圏外でも安心」という万能の備えではありません。空が見えないと接続できず、送れるのはテキストだけで、電池も食います。それでも、契約を増やさずに手元のiPhoneで使える圏外時の手段が3つあるという事実は、知っているかどうかで差が出ます。

そもそも圏外になる原因が端末の対応バンドにある場合もあります。衛星の前に確認しておきたいことは山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?に、衛星通信以外の備えは災害時の連絡手段まとめにまとめています。楽天モバイルが準備している衛星サービスについては楽天モバイルの衛星サービスはどうなる?をご覧ください。


この記事の情報について:本記事はApple公式サポート(「iPhoneで衛星通信に接続する」「衛星経由のメッセージについて」「iPhoneで衛星経由の緊急SOSを使用する」「iPhoneで衛星経由のロードサービスを利用する」「iPhoneで通信事業者が提供する衛星通信機能について」「iPhoneの『探す』を使用して衛星通信経由で位置情報を送信する」)、Apple公式発表(2024年7月30日、2025年12月9日)、およびGoogle Pixelヘルプ「Google Pixelから衛星経由で緊急時に救援を求める」をもとに、2026年8月6日時点で確認した内容です。提供状況・対応機種・無料期間は変更される場合があります。実際に備える際は、各社の公式サイトで最新の条件をご確認ください。