山の中や災害で基地局が停止したとき、スマホは圏外になります。そんな場所でもLINEのメッセージが送れる——それが衛星と直接つながる通信サービスです。

「でも、自分は格安SIMだから関係ないよね?」と思った方に、先に結論をお伝えします。

格安SIM(MVNO)の契約そのものでは使えません。ただし、KDDIが提供している「au以外の回線を使っている人向けのプラン」を別途契約すれば、格安SIMユーザーでも利用できます。

povoやUQ mobileも同じ扱いです。以下、キャリアごとに整理していきます。

そもそも「衛星モード」とは#

スマホが低軌道衛星と直接通信する仕組みです。地上の基地局が届かない場所でも、空が見えていれば通信できます。

LINEヤフーは、衛星通信の環境で使える専用の画面「衛星モード」をLINEに用意しています。通信速度が非常に限られるため、使える機能は絞られています。

できることできないこと
テキストメッセージの送受信音声通話・ビデオ通話
位置情報の共有画像・動画の送受信
緊急速報メールの受信スタンプ・リアクション

「安否を伝える」「今どこにいるかを知らせる」という災害時に本当に必要な用途に絞られていると考えるとイメージしやすいと思います。

なお、ソフトバンクの公式ページには「通話および緊急通報は利用不可」と明記されています。110番・119番が衛星でそのままかけられるわけではない点は誤解しやすいので注意してください。

ただしauについては、2026年5月にこの前提を一部補う仕組みが追加されました。詳しくは後述のauの項で解説します。

キャリア別の対応状況#

ドコモ#

「docomo Starlink Direct」を2026年4月27日から提供しています。

  • 月額利用料:無料、SMS利用料も無料
  • 対象は「ahamo」を含む全ての料金プラン(ドコモ回線の契約者は申し込み不要)
  • ただしahamoは、ドコモショップでの無料ソフトウェアアップデートサポートの対象外。 対応機種であっても、最新ソフトへの更新は自分で行う必要がある
  • 対応機種は98機種(2026年9月1日時点。iPhone 13以降、Pixel、Galaxy、AQUOSなど)

ahamoの災害時の対応状況(伝言板・エリアメール・店頭サポートの費用まで)はahamoは災害時に強い?で個別に整理しています。

ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMO#

「SoftBank Starlink Direct」を2026年4月10日から提供しています。ここはプランによって扱いが分かれます。

契約扱い
ソフトバンク(スマホ向け料金プラン)追加料金なし・申し込み不要
ワイモバイル シンプル/シンプル2/シンプル3追加料金なし・申し込み不要
ワイモバイル スマホプラン・4G-Sプラン2026年7月1日10時以降は月額1,650円のオプション申し込みが必要
LINEMO ベストプラン/ベストプランV2026年9月1日から定額料1,650円が全額割引(オプション申し込みは必要)。2026年冬(予定)以降は申し込み不要・追加料金なし
LINEMO スマホプラン・ミニプラン月額1,650円のオプション申し込みが必要(割引の対象外)

ワイモバイルの災害時の対応状況(伝言板・緊急速報メール・衛星経由で使えない機能まで)はワイモバイルは災害時に強い?で個別に整理しています。

2026年9月1日、LINEMOの扱いが変わりました

LINEMOは2026年6月30日まで申し込み不要・無料で使え、2026年7月1日からは月額1,650円のオプション契約が必要になっていました。

ところがソフトバンクは2026年8月7日、LINEMOベストプラン・ベストプランVでSoftBank Starlink Directを追加料金なしで使えるようにすると発表し、2026年9月1日から拡充されました。公式の発表では次の2段階になっています。

  • 2026年9月1日〜2026年冬(予定):オプションサービスに申し込むことで利用可能。定額料1,650円(税込)を全額割引
  • 2026年冬(予定)以降:申し込み不要・追加料金なしで利用可能(料金は対象プランの基本使用料に含まれる)

注意点は、当面はオプションの申し込み手続きが必要だということです。「無料になった」と聞いて何もしないでいると、割引以前に衛星通信が使えません。LINEMOのベストプラン系をお使いなら、平常時のうちに申し込みを済ませておいてください。

一方、LINEMOのスマホプラン・ミニプランは今回の対象外で、利用するには月額1,650円のオプションが必要なままです。

申し込みの手順や、同時に発表された海外データ通信の条件はLINEMOの衛星通信が2026年9月1日から実質無料にで詳しく整理しています。

端末側の条件として、iPhoneはiOS 26.4以上、AndroidはAndroid 15以上が必要とされています。

au#

KDDIは「au Starlink Direct」を2025年4月に商用サービスとして提供開始しました。日本国内での先行事例です。auの回線契約者は追加の月額料金なしで利用できます。

auの公式FAQには、衛星モードでの緊急通報について次のように記載されています。

衛星モードでは、緊急SOS(電話発信)/緊急SOSメッセージや緊急通報は対応しておりません。

つまり衛星経由で110番・119番に「電話をかける」ことはできません。この点は他社と同じです。

ただしKDDIは2026年5月28日から「au Starlink Direct SOSセンター」の運用を開始しました。公式FAQには次のように記載されています。

一部アプリでは「衛星SOS」ボタンをタップすることで、「au Starlink Direct SOSセンター」を通して、緊急通報受理機関へメッセージで通報できます。

圏外から送られた救助要請をSOSセンターが24時間365日体制で受け、内容に応じて緊急通報受理機関へ連携する仕組みです。対応アプリはKDDIの「auナビウォーク」「auカーナビ」などから順次拡大するとされています。

電話による緊急通報の代わりになるものではなく、対応アプリを事前に入れておく必要がある点には注意してください。それでも、圏外で救助を求める手段がひとつ増えたことになります。

対応アプリの一覧と、圏内にいるあいだに済ませておく事前準備(位置情報・RCSの設定)はau Starlink Direct SOSとはにまとめました。

UQ mobile・povo・その他の格安SIM#

ここが本題です。

KDDIは、au以外の回線を使っている人向けのプランを用意しています。現在の名称は「au Starlink Direct専用プラン+」です。

経緯を整理すると、2025年5月7日に提供が始まった「au Starlink Direct(他社・UQ mobileの方向け)専用プラン」は2025年8月31日で新規受付を終了し、翌2025年9月1日から後継の「専用プラン+」の新規受付が始まりました。これから申し込む場合は「専用プラン+」が対象になります。

auの公式FAQには次のように明記されています。

「au Starlink Direct専用プラン+」は、au以外をご契約のお客さま向けのサービスです。UQ mobile/povo2.0のほか、他社回線をご契約中のお客さまもご利用いただけます。

つまり、UQ mobileでもpovoでも、他社の格安SIMでも、このプランを別途契約すれば衛星通信が使えるということです。「格安SIMだから絶対に無理」ではありません。UQ mobileで契約する場合の手順や注意点(新しい電話番号の回線が増える、デュアルSIM対応機種が必要など)はUQ mobileは災害時に強い?にまとめています。

月額料金は、どの回線を使っているかで3段階に分かれます(2026年10月1日時点の公式サイト記載)。

契約している回線月額料金
UQ mobile「コミコミプランバリュー」「トクトクプラン2」0円(1,650円/月の割引が適用)
UQ mobile 上記以外の料金プラン申し込み当月から3カ月0円、4カ月目以降550円(1,100円/月の割引が適用)
povo2.0・その他の他社回線申し込み当月から3カ月0円、4カ月目以降1,650円

povo2.0は「他社回線」の扱いです

以前は公式の料金表にpovo2.0の区分が明記されておらず、この記事でも断定を避けていました。「au Starlink Direct専用プラン+」の公式ページには、料金表の注記として次のように記載されています(2026年9月1日に確認、10月1日にも掲載が続いていることを確認)。

「他社をご利用中」には、povoを含みます。

つまり、povo2.0で申し込む場合はUQ mobile向けの割引は適用されず、他社回線と同じ「3カ月0円→月1,650円」になります。povo2.0本体は年500円程度で維持できますが、そこに衛星通信を足すと年間約2万円の負担になる計算です。ここは事前に把握しておいたほうがよい差だと思います。

UQ mobileの割引を受けるには、専用プラン+の回線とUQ mobile回線のau IDが同一である必要があるとされています。

また、契約時に契約事務手数料がかかります。通常4,950円、au Online Shopからの申し込みで3,850円ですが、公式サイトには相当額をau PAY残高として還元する特典(実質無料)の記載があります。

利用にはデュアルSIM対応機種が必要で、衛星通信用に専用のSIM/eSIMが提供される形になります。au Starlink Directの対応機種は、公式サイトに107機種(2026年9月時点)と記載されています。申し込み前に必ず公式の対応機種一覧で自分の端末を確認してください。

なお2026年8〜9月には、ドコモ・au・ソフトバンクの3社とも、衛星との直接通信を海外(米国・カナダなど)でも使えるようにすると相次いで発表しました。国・機種・料金の条件は各社で異なるため、スマホの衛星通信は海外でも使える?3社の対応国と条件に整理しています。

楽天モバイル#

楽天モバイルは米AST SpaceMobile社の衛星を使った「Rakuten最強衛星サービス」を、2026年第4四半期(10〜12月)に提供開始する予定とされています。

まだ開始前のサービスです。予定は変更される可能性があるため、現時点で「使える」と考えて契約を判断するのは避けたほうがよいと思います。現時点でわかっていることは楽天モバイルの衛星サービスはどうなる?で詳しく整理しています。

一覧で整理すると#

回線衛星通信の使い方追加料金
ドコモ(ahamoを含む全プラン)そのまま使える無料
ソフトバンクそのまま使える無料
ワイモバイル シンプル系そのまま使える無料
LINEMO ベストプラン/ベストプランVオプション申し込みが必要(2026年冬から不要の予定)2026年9月1日から全額割引で実質0円
LINEMO スマホプラン/ミニプランオプション申し込みが必要月1,650円
auそのまま使える無料
UQ mobile(コミコミプランバリュー/トクトクプラン2)専用プラン+に加入0円
UQ mobile(上記以外)専用プラン+に加入3カ月0円→月550円
povo2.0専用プラン+に加入(他社回線の扱い)3カ月0円→月1,650円
その他の格安SIM・他社回線専用プラン+に加入3カ月0円→月1,650円
楽天モバイル2026年Q4開始予定未定

まとめ:格安SIMでも「打つ手はある」#

格安SIMを使っていると、衛星通信は自分に関係ない話だと感じるかもしれません。でも実際には、KDDIが他社回線ユーザー向けの受け皿を用意しているため、端末が対応していれば選択肢に入ります。

一方で、回線によっては月額料金がかかること、対応機種が限られること、そして衛星モードでは音声通話ができず、110番・119番に電話をかけることもできないことは、あらかじめ知っておくべき制約です(auでは2026年5月から、対応アプリ経由でメッセージによる救助要請ができる「au Starlink Direct SOS」が追加されています)。音声通話については、KDDIが2027年内、ドコモが2028年度中の提供開始をそれぞれ目指すと発表していますが、まだ予定の段階です(衛星経由の音声通話はいつ使える?)。

なお、緊急通報については別の選択肢があります。iPhone 14以降をお使いの場合、この記事で扱ったキャリアの衛星サービスとは別に、Apple独自の衛星機能が日本でも提供されており、こちらは圏外から緊急通報サービスへテキストで通報できるものです。キャリアの衛星オプションに加入していなくても使える系統の機能なので、格安SIMユーザーこそ知っておく価値があります。詳しくはiPhoneの衛星機能は格安SIMでも使える?で解説しています。衛星通信以外の備えは災害時の連絡手段まとめにまとめています。衛星通信は「これさえあれば安心」というものではなく、備えのひとつと位置づけるのが現実的だと思います。

また、そもそも圏外になる原因が衛星の有無ではなく、使っている端末が回線元のプラチナバンドに対応していないことにある場合もあります。衛星サービスの契約を検討する前に、山・地方で圏外になりやすいのはなぜ?対応バンドとエリアの確認方法で自分の端末と回線元の組み合わせを確認しておくと、費用をかけずに改善することがあります。

もう少し安く災害用の備えを持ちたい場合は、サブ回線をもう1本持っておくという方法もあります。povo2.0なら初期費用0円で契約でき、維持費も年間数百円に抑えられます。詳しくはpovo2.0を災害用のサブ回線として維持する方法で解説しています。

また、衛星通信もサブ回線も使わずにできる備えもあります。2026年4月には、契約中の回線がダウンしたときに他社の電波を借りられる「JAPANローミング」も始まりました。実際に提供された事例と、格安SIM契約者がどこまで使えるかはJAPANローミングは実際に発動したにまとめています。