災害時の通信の備えというと「つながるかどうか」に目が行きますが、スマホそのものを失うケースも現実的です。避難の途中で落とす、津波や浸水で流される、倒壊した家屋に残してくる——どれも起こりえます。

このとき必要になるのが、契約先で回線を止める手続きです。そして、この手続きの受け付け方は契約先によってかなり違います。先に結論です。

  1. 大手キャリアは電話とWebで24時間受け付ける。ただし解除(再開)は受付時間が限られる会社がある
  2. povo2.0には電話窓口がない。チャットのみで、時間外は「盗難・紛失の停止・解除のみ」に絞られる
  3. MVNO(格安SIM)は会員ページからの手続きが中心。手元にスマホがない状況で会員ページに入れるかを、平常時に確かめておく

順に見ていきます。

この記事が合わない人へ(先に確認)#

そもそも、災害でなくしたスマホは止めるべきか#

止める理由は、第三者に音声通話やSMSを使われるのを防ぐためです。IIJmioは「音声通話SIMを利用中の端末を紛失された場合、第三者に音声通話を利用される可能性があります。早急に回線の中断を行ってください」と案内しています。

一方で、災害時には迷う場面もあります。

  • 家族が自分の番号にかけてくる可能性がある:回線を止めれば、その着信も届かなくなります
  • 端末を「探す」で追える場合がある:iPhoneの「探す」やAndroidの「デバイスを探す」は、端末側の条件を満たしていれば位置がわかることがあります
  • 止めた番号にはSMSの認証コードが届かない:別の端末でLINEや銀行アプリにログインし直すときに詰まります。SMSに頼らない認証手段は災害時に「SMS認証コードが届かない」とログインできないにまとめています

そのため、まずは端末の位置を確認できないかを試し、取り戻せる見込みがない/第三者の手に渡った可能性があると判断した時点で回線を止める、という順序になります。「探す」機能の事前設定は災害前に家族と位置情報を共有しておくにまとめています。

なお、回線を止めても家族との連絡手段が消えるわけではありません。災害用伝言ダイヤル(171)や災害用伝言板は、契約先の回線が止まっていても他の電話・端末から使えます(災害用伝言ダイヤル(171)の使い方)。連絡経路を先に決めてあれば、止める判断はしやすくなります。

各社の受付方法と受付時間#

公式ページで確認した内容を整理します。

契約先受付方法停止の受付時間
ドコモオンライン手続き/電話/ドコモショップ・d gardenオンラインは24時間(システムメンテナンス時を除く)
auMy au/電話(0077-7-113、または0120-925-314)24時間365日
ソフトバンクMy SoftBank/電話(ショップでの受付は不可)停止は24時間、解除は9時~20時
楽天モバイルmy 楽天モバイル/電話(0800-600-0500)電話は24時間・年中無休
povo2.0チャットのみ(電話窓口なし)チャットは9:00~19:00。19:00~翌9:00は盗難・紛失による通話停止・解除の対応のみ
mineoマイページ/問い合わせフォーム/電話(0120-977-384)サポートダイヤルは通常9:00~18:00だが、盗難・紛失・障害情報のみ24時間対応
IIJmio会員専用ページ(回線の一時中断・再開)―
日本通信SIMマイページ/日本通信アプリの「緊急一時中断」ボタン―

出典:ドコモ|紛失・盗難などによる利用中断・再開、au|緊急通話停止・解除、ソフトバンク|紛失・盗難にあったとき、楽天モバイル|楽天回線を一時停止する・不正利用を防ぐ、povo2.0|盗難・紛失でお困りのとき、mineo|お問い合わせ、IIJmio|SIM・端末を紛失した場合の手続き、日本通信SIM|SIMを盗難・紛失してしまった際は

この表から読み取れることが3つあります。

1. povo2.0には電話窓口がない#

povo2.0の問い合わせはチャットで完結する設計です。KDDI・沖縄セルラーは2025年10月1日にpovoサポート(チャット窓口)の営業時間を9:00~19:00(全日)に変更し、19:00~翌9:00は盗難・紛失による通話停止・解除対応のみとしています。

つまり紛失の停止だけは時間外も受け付けられる設計ですが、入口はあくまでチャットです。深夜に「電話一本で止める」ことはできません。

povoを災害用のサブ回線として持っている人は多いはずです(povo2.0を災害用のサブ回線に)。サブ回線側を失った場合も同じ手続きが必要になる点は、知っておいて損はありません。

2. povoは警察などへの届出が前提#

povo2.0は「盗難、紛失の際は、警察または消防署など公的機関に届出の上でご連絡をお願い致します」とし、受付時に届出先の機関名、届出年月日、受理番号を確認すると案内しています。

災害直後に警察へ届け出るのは簡単ではありません。すぐには止められない可能性があることを前提に、パスコード設定や遠隔ロックなど端末側の防御を先に固めておくほうが実務的です。

3. 「止める」と「戻す」で受付時間が違う会社がある#

ソフトバンクは停止が24時間受付なのに対し、解除は9時~20時と案内しています。避難先で端末が見つかっても、夜間ならその場では戻せません。

auはさらに期限があります。緊急通話停止の翌月から起算して3カ月目の月末までに解除されなかった場合、回線は一時休止となり、一時休止中は月額409円の情報保管料などが請求されます。災害後の混乱で手続きを忘れると、この状態に移ることになります。

止めても、料金は止まらない#

見落としやすい点です。各社とも、停止中の月額料金は発生し続けると明記しています。

  • ドコモ:「利用中断中も、基本使用料・オプションサービスの使用料などはお支払いいただきます」
  • au:停止中も「基本使用料・オプションサービスの使用料などのご請求が発生します」
  • 楽天モバイル:「利用停止してもそれ以降の利用料金は引き続き発生します」
  • 日本通信SIM:「月額基本料、音声オプションサービス料、フィルタリングサービス利用料、ユニバーサルサービス料および電話リレーサービス料は発生します」
  • mineo:緊急停止期間中もオプション等の各種費用は請求されます

回線停止は不正利用を止める手続きであって、契約を止める手続きではありません。手続きそのものの手数料は、ドコモ・auとも無料と案内されています。

SIM再発行はいくらかかるか#

端末とSIMをまとめて失った場合、新しい端末で同じ番号を使うにはSIM(またはeSIMプロファイル)の再発行が必要です。

契約先SIMカード再発行eSIM
ドコモドコモUIMカード/ドコモeSIMカード/eSIMの再発行はカード発行手数料4,950円(税込)同左
IIJmio再発行手数料2,200円(税込)+SIMカード発行手数料(タイプD 433.4円/タイプA 446.6円)―
mineo変更事務手数料2,200円(税込)+SIMカード発行料440円(税込)eSIMプロファイル発行料440円(税込)
日本通信SIM3,300円1年に3回まで無料(4回目以降は1,100円)

出典:ドコモ|ドコモUIMカード/ドコモeSIMカード/eSIMについて、IIJmio|SIMカードが故障した場合、mineo|各種事務手数料、eSIMプロファイル発行料改定について、日本通信SIM|SIMを盗難・紛失してしまった際は

なおmineoは、2026年10月1日以降の申し込み分から契約事務手数料が3,300円→3,850円、SIM交換手数料が2,200円→2,750円に改定され、eSIMプロファイル発行料は440円→0円になると案内しています。

IIJmioは店舗(BIC SIMカウンター、ヨドバシカメラ)での申し込みで即日発行手数料1,100円が別途かかるとしています。裏を返せば、Web申し込みだと手元に届くまで待つ時間があるということです。

このあたりの「再発行の速さ」は、eSIMと物理SIMのどちらで持つかによっても変わります。判断材料は災害用のサブ回線はeSIMと物理SIM、どちらで持つ?に整理しました。

災害時ならではの落とし穴#

手続きをするための通信手段がない#

回線を止めるには、Web手続きにせよチャットにせよ電話にせよ、別の通信手段が要ります。手元のスマホを失っているのですから当然ですが、意外と見落とされます。

現実的な代替は次のとおりです。

povoのようにチャットしか窓口がない場合、公衆電話では手続きできません。インターネットにつながる手段が必須になります。ここはサブ回線を別の回線網で持っておく意味が効いてくる場面です(サブ回線の最低維持費を比較)。

回線停止にかぎらず、オンライン専用プランは故障や設定の相談も店頭に持ち込めません。3社の店頭対応の実態はpovo・ahamo・LINEMOは災害時に「店に駆け込む」ができないにまとめています。

本人確認の情報を思い出せない#

ドコモは手続きに契約者電話番号とネットワーク暗証番号(4桁)が必要と案内しています。日本通信SIMはマイページにアクセスできない場合、契約者名・電話番号・住所・カード有効期限を伝える必要があるとしています。

スマホのパスワード管理アプリにしか控えがない場合、そのスマホを失った時点で参照できません。紙のメモを自宅外(職場のロッカーや実家など)に置く、家族と共有しておくといった備えが効きます。

つながらないのが紛失のせいとは限らない#

「電話が通じない」「圏外のまま」という状態は、端末を失っていなくても起こります。通信障害・輻輳・エリアの問題を切り分けてから動くほうが無駄がありません。手順は通信障害かも?と思ったらまず確認することにまとめています。

災害救助法が適用された場合#

災害救助法が適用される規模になると、携帯各社から支援措置(データの追加提供、料金支払期限の延長など)が案内されることがあります。手数料の扱いは災害ごと・会社ごとに異なるため、そのときの公式発表を確認するのが確実です。過去の実例と確認先は災害救助法が適用されると、通信各社は何をしてくれる?に整理しています。

今日できる準備リスト#

  • 契約先の紛失・盗難時の窓口ページをブックマークしておく(家族の端末からも開けるようにする)
  • ネットワーク暗証番号や契約者情報の控えを、スマホの外に置く
  • スマホにパスコードと生体認証を設定しておく(止めるまでの時間を稼ぐ)
  • SIM PINを使うなら、PINとPUKコードの控えもスマホの外に置く(SIMの「PINロック」で予備スマホが使えなくなる?)
  • iPhoneの「探す」/Androidの「デバイスを探す」をオンにしておく
  • 会員ページ(マイページ)に別端末からログインできるかを一度試しておく
  • 予備端末とサブ回線を用意しておく(手続きのための通信手段になる)

サブ回線は音声通話付きにしておくと、緊急通報の面でも意味が変わります(格安SIMで110番・119番はかけられる?)。

まとめ#

災害でスマホを失ったときの回線停止は、契約先によって入口が違う手続きです。大手キャリアは電話とWebで24時間受け付けますが、ソフトバンクは解除が9時~20時、auは3カ月目の月末を過ぎると一時休止に移ります。

格安SIM側では、povo2.0が電話窓口を持たずチャットのみで、しかも警察等への届出を前提としている点が大きな違いです。MVNOは会員ページからの手続きが中心なので、別端末からログインできる状態を平常時に作っておくことが、そのまま備えになります。

止めても料金は止まらず、再発行には数千円がかかります。だからこそ、失ったあとの手続きを速くするより、失っても手続きができる手段(予備端末とサブ回線、暗証番号の控え)を先に持っておくほうが効きます。