災害時の通信の備えというと「つながるかどうか」に目が行きがちですが、つながったのにログインできないという詰まり方があります。予備端末や家族のスマホからLINE・銀行・キャリアのマイページにサインインしようとして、SMSで届くはずの認証コードが届かない、というケースです。

先に結論です。

  • SMSは携帯電話回線に届くもの。Wi-Fiにつながっていても、電話番号の回線が圏外・停止中なら受け取れない
  • 圏外のあいだのSMSはセンターに保管され、受信できる状態になってから届く(ドコモの公式案内)。「届かない」のではなく「まだ来ない」だが、待てない場面では同じこと
  • データ専用の契約はSMS自体が使えない。povo2.0「データ専用」は「通話およびSMSの送受信はご利用いただけません」と明記。IIJmioのデータSIM/データeSIMもSMS機能なし
  • 対策は2つ。サブ回線をSMS付きで持つことと、SMSに頼らない認証手段(バックアップコード・認証アプリ・信頼できる電話番号の追加)を今日のうちに用意すること

「SMSが届かない」は通信障害の一種ではなく、契約と設定で事前に潰せる問題です。順に見ていきます。

SMSは「回線」に届く。Wi-Fiは関係ない#

まず仕組みの整理です。SMSは電話番号あてのメッセージで、携帯電話ネットワークに接続した端末にだけ届きます。Wi-Fiにつながっていても、その端末に入っている電話番号の回線が圏外なら受信できません。Appleが「SMSメッセージを送信するには携帯電話ネットワークへの接続が必要」と区別して説明している点は、圏外でもWi-Fiがあれば連絡できる?で詳しく扱っています。

では圏外のあいだに送られたSMSはどうなるのか。ドコモはSMSの注意事項で次のように案内しています。

SMSセンターに届いたメッセージは、すぐにお客さまのドコモ スマートフォン・タブレット・ケータイに送信されます。ただし、電源が入っていない場合や、圏外などで受信できない場合は、SMSセンターで保管します。

つまり、消えるわけではなく受信できる状態になった時点で届く仕組みです。ただし、認証コードには数分程度の有効期限が設定されていることが多く、圏内に戻ったときにはすでに期限切れ、ということは普通に起こります。「届く」と「間に合う」は別だと考えておいてください。

データ専用の契約は、SMSそのものが使えない#

もうひとつ、契約の段階で決まる問題があります。災害用のサブ回線を安く持とうとするとデータ専用の契約が候補に上がりますが、この種類の契約ではSMSが最初から使えません。

povo2.0「データ専用」#

povo2.0の「データ専用」プランは、公式の手続きページに次のように書かれています。

※通話およびSMSの送受信はご利用いただけません。 ※別途、SMS受信可能な音声通話ができる回線が必要です。

公式の比較表でも「音声通話・SMS」は通話+データが○、データ専用が×です。あわせて、データ専用はeSIMのみ、国内でのみ利用可能、MNPでの乗り換え不可、契約時に初回トッピング購入が必要という条件も明記されています。本人確認書類が不要で手軽な反面、「SMS受信可能な回線を別に持っていること」が前提のプランだ、ということです。

povo2.0を災害用に持つときの180日ルールや、通話+データとデータ専用のどちらで持つべきかはpovo2.0を災害用のサブ回線ににまとめています。

IIJmio:データSIMはSMS×、SMS SIMは音声×#

IIJmioは公式Q&Aで、ギガプランのSIMごとの機能を表にしています。

SIMの種類データ通信SMS音声通話
データSIM/データeSIM○××
SMS SIM/SMS eSIM○○×
音声SIM/音声eSIM○○○

2GBの月額(税込)は、公式Q&Aの料金表で次のとおりです。

SIMの種類2GBの月額
音声SIM/音声eSIM850円
SMS SIM/SMS eSIM820円
データSIM(タイプD)/データeSIM(タイプA)740円
データeSIM(タイプI・ドコモ網)440円

いちばん安い440円のデータeSIMにはSMSが付きません。SMS SIMとの差は月380円、音声SIMとの差は月410円です。「サブ回線でSMS認証を受けたい」なら、この差額が保険料になります。

なお、SMS SIMは音声通話ができないため、110番・119番は発信できません。この点は格安SIMで110番・119番はかけられる?で各社の公式案内を確認しています。

mineo:シングルタイプは「SMSあり/なし」を選ぶ#

mineoのシングルタイプ(データ通信のみ)は、申し込み時に「SMSなし」で契約しているとSMSは使えず、あとから「SMS付き」へのタイプ変更が必要だと公式Q&Aで案内されています。SMSの月額基本料(税込・シングルタイプ)は公式料金表で次のとおりです。

回線シングルタイプのSMS基本料
Aプラン(au回線)無料
Dプラン(ドコモ回線)132円/月
Sプラン(ソフトバンク回線)198円/月

デュアルタイプ(音声通話あり)は自動的にSMSが使えます。ひとつ注意があり、Dプランのシングルタイプで5G通信オプションを契約中の場合はSMSが使えないと公式Q&Aに書かれています。ドコモ回線でSMS付きのデータSIMを持つつもりなら、5Gオプションとの組み合わせを確認してください。

各社の維持費そのものの比較は災害用サブ回線は月いくらで維持できる?をご覧ください。

災害時に「届かない」が起きる3つの場面#

仕組みと契約を踏まえると、災害時に困るのはだいたい次の3つです。

場面1:端末が壊れて、予備端末でログインし直す#

水没・落下でメイン端末が使えなくなり、予備端末にアプリを入れ直してサインインする。このとき多くのサービスが登録済みの電話番号にSMSを送って本人確認をします。

  • メインのSIMが物理SIMなら、予備端末に差し替えればその番号でSMSを受け取れます(予備のスマホに自分のSIMを挿して使える?)
  • メインがeSIMだと、壊れた端末の中にプロファイルがあるので差し替えられません。再発行の手続きが要ります(eSIMと物理SIM、どちらで持つ?)
  • 予備端末にデータ専用のサブ回線しか入っていなければ、そもそもSMSを受ける手段がありません

濡れた端末の扱いはスマホが水没したら、まず充電しないにまとめています。

場面2:メイン回線だけ圏外で、サブ回線でつなぐ#

メイン回線の基地局が止まり、別の回線網のサブ回線でネットにはつながった。ここでログインし直そうとすると、認証コードはメインの番号あてに送られます。メインは圏外なのでSMSセンターに保管され、圏内に戻るまで届きません。

サブ回線が生きていても、認証コードの宛先がメインの番号のままでは意味がない、というのがこの場面のポイントです。回線網を分ける考え方そのものは格安SIMの「回線元」一覧を参照してください。

場面3:端末を紛失して回線を止めた#

災害でスマホをなくし、第三者に使われないよう回線を止める。止めている間はその番号で認証コードを受け取ることは期待できません。回線を止める判断と各社の受付時間は災害でスマホをなくしたら、まず回線を止めるにまとめていますが、止めたあとに「ログインにSMSが要る」と気づくのがいちばん困るパターンです。

SMSに頼らない認証手段を、今日のうちに用意する#

ここからが備えです。主要なサービスは、いずれもSMS以外の方法を公式に用意しています。

Apple Account:信頼できる電話番号を「もう1本」追加する#

Appleは2ファクタ認証について、確認コードが「信頼済みのデバイスに自動的に表示される、または信頼済みの電話番号に送信される」と説明しています。そして信頼できる電話番号については、次のように案内しています。

お使いのiPhoneが唯一の信頼できるデバイスであり、かつ信頼できる電話番号にアクセスできる唯一のデバイスである場合に、そのiPhoneを紛失したり破損したりすると、アカウントへのアクセスに必要な確認コードを受け取れなくなります。

複数の電話番号をお持ちの場合は、iPhoneに関連付けられていない電話番号を、追加の信頼できる電話番号として使用することを検討してください。

災害用のサブ回線をSMS付き(または音声付き)で持っているなら、その番号を信頼できる電話番号に追加しておくのが、この案内どおりの備えになります。家族の番号を追加するのもAppleの案内の範囲内です。コードは「テキストメッセージまたは電話」で届くとされているので、音声通話ができる番号なら電話で受け取る選択肢もあります。

Googleアカウント:バックアップコードを印刷しておく#

Googleは、2段階認証のバックアップコードについて次のように案内しています。

スマートフォンを紛失した場合や電話番号を変更した場合など、テキスト メッセージ、通話、Google 認証システムでコードを取得できない場合に便利です

10個のコードが発行され、各コードは1回しか使えません。Googleは「バックアップ コードのコピーを印刷して、安全な場所(パスポートやその他の重要な書類を保管している場所など)に保管できます」としています。災害時に持ち出す書類と一緒に紙で入れておく、というのが実際的です。

あわせて、Google認証システム(Authenticator)アプリは「インターネット接続やモバイル サービスを利用できない場合でも、コードを生成できます」と案内されています。通信が全滅していてもコードは出せる、という点でSMSより災害に強い手段です。ただし認証アプリは端末に入っているので、端末が壊れれば一緒に使えなくなります。バックアップコードと組み合わせてください。パスキーやセキュリティキーも公式に案内されている手段です。

LINE:SMSが使えないときの引き継ぎ方法は2つ#

LINEは「SMSが使えない場合」の引き継ぎ手順を公式ヘルプで案内しており、方法は2つです。

  1. かんたん引き継ぎQRコード — 「引き継ぎ前の端末と新しい端末が手元にあり、現在もLINEアカウントにログインできている状態」で使えます。両方の端末がインターネットに接続されている必要があり、直近14日間のトーク履歴を引き継げます
  2. Apple ID/Googleアカウント連携 — 事前に連携し、「2段階認証をスキップ」をオンにしておく方法。旧端末がなくても引き継げます。トーク履歴は別途バックアップが必要です

災害で端末が壊れた場合、1の「旧端末が手元にある」という条件を満たせません。2の連携を平常時に済ませておくことが、災害向けの備えになります。

銀行・決済・キャリアのマイページ#

これらはサービスごとに方式が違い、公式の一覧を示せないため本記事では個別の手順を書きません。確認しておく観点だけ挙げます。

  • SMS以外の認証手段があるか(認証アプリ、メール、音声通話、トークン)
  • 登録している電話番号はどの回線か(メイン回線なら、場面2・3で詰まる)
  • 端末を変えたときの手順を平常時に一度読んでおく

「SMSしかない」サービスは、電話番号の回線を生かすこと自体が備えになります。

サブ回線の選び方に戻ると#

ここまでを踏まえると、災害用のサブ回線をどの種類で持つかは、次の整理になります。

持ち方SMS認証110・119向いている人
データ専用(povoデータ専用、IIJmioデータeSIM等)××ネット接続の確保だけが目的。認証は別手段で用意済み
SMS付きデータ(IIJmio SMS SIM、mineo SMSあり等)○×認証コードの受け口が欲しい。通話はメインに任せる
音声付き(povo通話+データ、音声SIM等)○○1本で通話・SMS・データすべての受け皿にしたい

安さだけで決めると、SMSと緊急通報の2つが同時に抜けます。ドコモ回線の格安SIMでは、SMS機能のないデータ通信専用SIMだと「+メッセージ」も使えません(+メッセージは格安SIMで使える?)。サブ回線を「認証コードの受け口」としても使いたいなら、SMS付き以上を選び、その番号をAppleの信頼できる電話番号などに登録しておく、という組み立てです。iPhone・Pixelでのサブ回線の追加手順はiPhoneでデュアルSIMを設定する手順とPixelでデュアルSIMを設定する手順を参照してください。

今日やっておくチェックリスト#

  • 自分のサブ回線がデータ専用/SMS付き/音声付きのどれか確認した
  • Apple Accountの信頼できる電話番号に、メインのiPhone以外の番号を追加した
  • Googleアカウントのバックアップコードを発行し、紙に印刷して持ち出し書類と一緒に入れた
  • Google認証システムなどの認証アプリを設定し、通信なしでコードが出ることを確認した
  • LINEでApple ID/Googleアカウント連携を済ませ、トーク履歴のバックアップを取った
  • よく使う銀行・決済アプリのSMS以外の認証手段を確認した
  • メインがeSIMなら、再発行の手順と受付時間を控えた

上から2つ目と3つ目は、合わせて10分もかかりません。災害時にいちばん効く割に、平常時にやる理由が見つかりにくいものなので、この記事を読んだ流れで済ませてしまうのがおすすめです。

まとめ#

  • SMSは携帯電話回線に届く。Wi-Fiでは届かず、圏外中はセンターに保管される(ドコモ公式)
  • データ専用の契約はSMS自体が使えない。povo2.0データ専用は「通話およびSMSの送受信はご利用いただけません」、IIJmioデータSIM/データeSIMもSMS×
  • IIJmioはSMS SIMが2GB 820円(データeSIM440円との差は月380円)。mineoシングルタイプのSMSはAプラン無料・Dプラン132円・Sプラン198円
  • 困るのは端末故障・メイン圏外・回線停止の3場面。いずれも「認証コードの宛先がメインの番号」だと詰まる
  • Appleは信頼できる電話番号の追加、Googleはバックアップコード(10個・各1回)と認証アプリ、LINEはApple ID/Googleアカウント連携を公式に案内
  • サブ回線を認証の受け口にするならSMS付き以上で持ち、その番号を登録しておく

通信を確保する備えと、確保した通信でログインできる備えは別物です。後者は契約と設定だけで済むぶん、先に片づけておく価値があります。

なお、災害のあとは通信会社や宅配業者をかたるSMSや、被災地支援をうたうDMにも注意が必要です。手口と見分け方は災害時のデマ・便乗詐欺にスマホで引っかからないためににまとめました。